第二話 俺たちの保護者1
俺らは元皇族・仁科家と天照家がつくりだした組織に所属する。かの天照大神が遣わしたといわれる神獣。三本の足を持ち、天と地と人を等しく見届けるものとして存在し、化ケ物を消すことで世界に対する憂いを払うという意味で、<八咫烏>というらしい。
指令室の指示により、俺らは本部に向かった。受付にカードを見せる。
「確認いたしました。45階に向かってください。」
エレベーターで45階を押し、移動する。 後ろでカノンとアオが震えているのが窓ガラス越しに伝わる。
ドアが開くとホテルのような一本通路。その突き当りが、目的の部屋である。三回ノックをする。
「失礼致します。紫之宮、岡田、藤宮3名入ります。」
ドアを開くとその向こうには一人の女が書類作業しながら座っていた。この組織には八将と呼ばれる最高位の隊員がいる。その中の一人の、十弁天藍蘭。
日が沈んだばかりの夜空のような青みがかかった髪色で、耳のあたりに二つのみつあみをぶら下げている。瞳は藍色だ。
「来たか、席についてくれ」
「はい」
促されたとおりに、席に座る。俺らが座ったことで、十弁天も作業をやめ、俺らの方を見る。
「勝手な行動…はいつものことだから咎めることはない。ひとまず、ご苦労だった。で、二人は何をしていた。」
口は笑いながらも目は笑っていない。急に声が低くなったことで、二人は顔を上げることができずただうつむく。
「黙り込まない。はあ、お札は肌身離さず持ち歩くようにと言ったはずだ。そしてお前な、吐き気を催すのならもう少し真面目に訓練に参加しろ。いいな。今度の昇級試験受けさせないからな」
それぞれ注意をもらうと、また落ち込んだ。多分だけどアオは落ち込んでない気がするな…。うつむいてて見えないけど多分寝てるわ、コイツ。
こんな状況で寝るなんて図太いな。たぶん藍蘭も気づいてるだろうけど。
「うーん、ぐらいか。」
手元にある資料を確認しながら、手を振る。彼女が手を振ればそれは終わりの合図。俺らは下がる。
椅子から立ち、ドアに向かおうとした時、後ろから声が聞こえた。
「あ、そうだ。二人は科学班に寄ってから帰れ。」
今一番聞きたくないワードが聞こえた。
「科…学班…ですか…」
冷汗が止まらない。鳥肌がぞわっと立つ。いやな記憶が思い出される。
「行ってないだろ、定期健診。」
硬直した笑顔で、無言で、目だけを逸らそうとする。
「返事は?」
藍蘭の口角だけが上に上がっていく。俺はすぐさま翻し、ドアに向かう。ドアの取っ手にたどり着いた瞬間、目の前が暗くなった。わずかな風を感じ、目の前を見ると、十弁天がそこにいた。
右手でドアが開かないよう抑えている。くそ、力強いな!?無理やり開けようとしたが、ドアはびくともせず、開かずしまいだった。
左手でほほを掴まれ、ものすごく怖い笑顔で言われた。
「私の手を煩わせるんじゃない。さっさと行け」
「すみません…」