第1話 俺たちの紹介
コツコツ書いてきた小説投稿してみたいと思い立って投稿してみました。
ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
2020年 4月
春先の陽気に眠気を誘われるこの4月、俺、紫之宮虹大は高校2年生になる。
くせのある髪が多方向にはねているのは日常茶事。紫がかかった双瞳で、ずっと窓の外を見ている。
「皆は今日から2年生だ。そろそろ、将来に事について考え始める時期だ。ここに進路調査票がある…」
東京にある仁科学園の生徒であり、教壇で話してる先生に気づかれないように欠伸を噛み殺しながら、風でなびく草木を眺める。早く終われ、さっさと帰って寝てえな。そんなことを思っているうちに、遠くから聞こえるはずの先生の声が近くで聞こえた。
「げ」
目の前には額に今にもハチ切れそうな血管を浮かべながら顔を赤くしている先生がいた。
「聞いてたか?紫之宮?」
「いや~その~」
「いつも先生の話を聞かないよな。はあ…、これが進路調査票だ。締め切りは一週間後。保護者と相談して、忘れずに出せよ」
右手に持っていた進路調査票を机の上に強く置き、他の席に配りに行った。
「ふう…」
「まーた、初日から派手にやらかしたな!ニジ!」
「アオ…てめえ…」
席の後ろから、悪気ゼロの笑顔をむけているコイツは岡田蒼司。目までかかりそうな前髪に、女子のようなサラサラとした髪質。そしてコイツの特徴ともいえる、左目の泣きほくろ。
始業式に長いホームルームも終わり、多くの生徒は浮足立って帰る。俺も急いで帰らないとアイツに捕まる…。あらかじめカバンに必要なものは詰め込んである。
日直の挨拶が終わったのと同時に教室を駆け出て、下駄箱に向かう。下駄箱の扉を開いて、靴に手を駆けたその時、後ろからどつかれた。あまりの衝撃にむせた。
「先に帰ろうとしないのニジ!」
「おめ…ぇな…、いい加減力加減覚えろよ!バカノン!!」
コイツは藤宮花音。ポニーテールをして見た目は本当に華奢だと思う。本当に女子かと思うぐらい力が強いし、最悪なのは加減ができていないってこと…。
「なっ、馬鹿っていった方がバカなんだからね!バカニジ!!」
お互い怒りで小学生児みたいな不毛な言い争いが始まった。ニジを追いかけてやってきたアオが自分の頭に肩を組ませながら、ニコニコして言う。
「まーまー、二人ともそこまでにしよーよ?」
「「うるさい!アオは黙って・れ!!」」
「いやあ…ここ学校の下駄箱なんだけどな…」
アオの心配をよそに格闘技並みの喧嘩を始めた二人。案の定、先生に職員室に呼び出された。
先生にこってりと絞られた帰り道、カノンに引っ張られ、アオに背中を押されながら歩く。
「俺は帰りてーの」
「ダメよ。最近この辺りでよくないうわさ聞くからついてきて」
「嫌だ」
「しっかし、この辺り随分禍々しいな。カノンお前が見つけてきたんか?」
「いや、情報盗んだ」
悪びれる様子もなくさらりと言う。おい、それ、他の隊員の管轄だろうが。勝手に盗むのは謹慎に値するだろうが。
「いわれなくても分かってる。だけど、アタシは実績が欲しいの」
「落ち着けってカノン。そんなに急ぐことないだろ。大体、なんで今日なんだ?」
「だって、今日非番なんでしょ。ニジ。」
悪い笑顔を浮かべて、ニジを見るカノン。後ろできっとアオがしてやったりという嬉しそうな顔をしてるだろう。
後で殴る。
学校から歩いて30分のところ、人気のない路地裏に出た。
「ここか?」
「ええ、そうよ。何人ものの人が行方不明になる魔の道。化ケ物がらみとしてみてるらしいんだけどどう?」
「臭いな」
「吐き気がしそう…というかニジは大丈夫なん…?」
「慣れた」
「さっすがぁ…うぷ」
道端にしゃがみこんでは、吐いているアオ。
「へえやっぱりそうなんだ。全然わかんないや。だめだなあ、お札忘れちゃった」
「じゃ来んなよ、お前…」
あっけらかんとした態度で言うカノンに呆れながら辺りを見る。確かに気配は濃いが、化ケ物の気配は感じられない。はずれを引いたかと頭を掻きながら、カノンの方を見ると、奥に濃い影があった。
濃い影から出てきたのは低級にしてはでかすぎる化ケ物-蟻-。カノンは全く気付いていない。アオは吐き気を催してて役に立たない。
くそ、何しに来たんだよ!コイツら!
すぐさまカノンを引き寄せ、左ポッケに入っていたイヤモニをすぐさまつけて応答する。
「こちら、紫之宮。化ケ物を視認。戦闘開始します」
『了解しました』
「起きろ、緋煉龍」
両手を構え、刀を顕現させる。透明な形をした刀が浮かび上がる。鞘をにぎり、刀を抜く。抜いた刃物には緋色の炎が纏われている。闇から出てきた化ケ物はニジに向かって真っすぐ突進してくる。
通常の低級よりは数倍のスピードで近づいてくる。けれどもニジは動じない。化ケ物は間合いに入ったニジに、大きく手を振りかざした。
直撃の様に見えた。四肢が無惨に飛び散ったと誰もが思うだろう。
「遅い」
声のする方を見ると、空中でバク宙をしているニジがいる。ゆっくりと回りながら、背後に降り立ち、静かに刀をしまう。後ろでうめき声をあげながら消える化ケ物。ゆっくりと縦に綺麗に切られた部分から消滅している。
「さすがニジね」
自慢げに笑うカノン。
「うっぷ…さすが…うぇっ…」
未だに吐いているアオ。
こいつら…いい加減学習してくれねえかな。あと何回おんなじこと繰り返すつもりなんだよ。そしてそれに付き合ってしまう俺も俺だなと両手を見る。掌が真っ赤に焼けただれていたがほんの1,2分でもとに戻った。
「こちら、紫之宮。状況終了。」
『消滅確認しました。本部に帰投してください』
「分かりました」
消滅を見届けた頃には、辺りはすでに真っ暗で、空には一番星が綺麗に輝いていた。