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暁にあかれば  作者: 燎サイチ
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第10話 激突

早速今夜から、そいつの帰宅路を監視することになった…が。そいつは駅から10分ほどのマンションに住んでて、かつ、道路は商店街が並んでいる明るい道。



「こんだけ明るいと来ないな…」

「そうだね…辛抱強く待つしかなさそうだね」

 化ケ物は明るい場所には滅多に来ない。更に、十弁天と天照の財力でこの辺りの証明は擬似太陽ランプに変わっていてちょっとやそっとの化ケ物は出てこない。あの人らほんとにヤベー奴だな…。


「いやあ僕らの発想じゃ出来ないよね。ランプ全部変えるって」

「ほんっとですよ……」

対象が会社から出てきたのを確認し、追跡する。最寄り駅に向かい、自宅の最寄り駅で降りて、家に向かうかと思いきゃ家とは全く違う方向に進んでる。遠くから見てるだけだかはよく分からないが、やけに焦ってるように見える。

「閻斗さん…」

 少しずつ周りが白くなってきた。これはあの動画と同じ霧だと思う。


「戦闘準備。目標が出るまで待機せよ」

閻斗のイヤモニから周辺にいる隊員に指示した。少しずつ不透明になる白。だけれども化ケ物の姿は目視できない。

「なぜ出てこない…?」

出てくるまで待機の命令ゆえ、出てくるまで待たなければならないのに

「まだるっこしーの、さっさと狩ればいいっしょ」

快二が霧に突っ込んだ。

「は?」

「えっ?」

状況掴めないまま、中から男の悲鳴と戦闘音が聞こえる。異常だ。化ケ物の気配はなかったのになぜ音が聞こえてくる?

「閻斗さん!突入許可ください!」

カノンでさえ違和感を抱くほどの異常さ。

「…くっ、東西班は待機!南北班突入しろ!」

「「はい!」」

閻斗さんについて霧の中に入る。もやもやした空間をくぐり抜けた先には、超級並のでかさの化ケ物がいた。怯えてる男と戦闘してる快二。

「おっせーよ!!」

「勝手な行動したお前に言われたくねえ!」

「るせえ!早く保護しろ!こいつを!」

「落ち着け2人とも!天照は保護頼む!他は目標を討伐せよ!」

「「はい!」」

どんな状況でも冷静沈着。状況をわずか1〜2秒で把握し的確な指示を出す閻斗。

「紫ノ宮、色を見てくれ」

「分かった」

静かに目に霊力を込める。込めて、見た。色はなし。

「…?」

自分の目がおかしいのかと思いもう一度見て見たが、色はない。

「色なし…?だと?」

「色がないのか?」

「っ…はい…ありえない。幻影…なのか。」

「やはり、藍蘭さんの読み通り。幻影か。」

「幻影だとしたらおかしいです!なぜこうもハッキリ戦闘できるんですか!?」

カノンがみんなの疑問を代表して尋ねる

「分からない…幻影に実体は無いはずなのに…?」

「今までの常識じゃ測れないことが起こってるんだろう…、天照は保護し終えたら直ぐに脱出を試みてくれ!」

「出ようにも霧がついてくるので無理です!」

「厄介だな…、夜が開けるまで夜戦はきついぞ」

 未だ化ケ物と戦う快二だが、化ケ物に傷はなく、快二だの体力だけが消耗されていく。

「クソ…がぁ!!」

だんだん攻撃が単調になってきた。それでも怯む様子がない化ケ物。疲れが出てきたのか、膝を着いた瞬間を狙われた。大きく振りかぶった腕は快二を目掛けて直撃したかにみえた。ジャリッと音がする。閻斗の能力、白砂の遊魚が攻撃を防いでる。

「やらせはしない、僕がいる限りは誰も死なせない」

腰に巻いてあるベルトから試験管を取り出す。試験管から、赤砂の鹿が表れる。

「天照はこれで脱出を試みてくれ。そのほか隊員はこの化ケ物の討伐を頼む。」

「分かりました!」

 閻斗の指示に従って、行動開始する。幻影とわかった以上倒し方は限られてくる。1つ目は幻影が姿を保てなくなるほどの衝撃を与えればいい。がこれ、既に快二がやってるだろうし、おそらく効果はない。なら2つ目は幻影を操作するやつを叩く。霧の外側で待機していた、東西班が既に行動に移っている。ならば俺たちはここでコイツを食い止めるだけ。ゆらゆらと斬られた傷を治しながらそこにただあるだけど化ケ物。見た目は大型の狼。図体だけがでかくて、一振する度に強力な風が吹く。

その風でも動くことの無いこの霧は一体なんだろう。時折叫んでは、鹿を目掛けて攻撃しようとするので、俺の最大力の力で足を切り落とそうと試みる。

「唸れ、嵐龍刃」

 両手に力を込め、最大の火力で、乱切りしながら、足を全部斬る。両手首まで灼けたがこれぐらいなら我慢できる。

「ぐぉぉぉぉっ!!」

 うるさい唸り声と共に倒れ込む狼。その隙をめがけ、結界を施そうとする。

「捕縛の弐式・十柱!」

 天照によって捕縛の術式が発動し、十の柱に固定された化ケ物は身動きが取れないまま唸る。

「あとはこれで情報局を待てばいいだけ」

「そうですね」

 閻斗がイヤモニを通じて情報局と連絡取ろうとした時、狼が咆哮した。あまりのうるささに隊員たちは耳を塞いだ。そのあと、何人かの隊員が倒れ込んだ。

「おい!?大丈夫か!?」

 倒れた隊員を確認すると皆、目から血を流して倒れている。いや、正確には死んでいる。

「…!?なぜ?」

 咆哮をし終えた狼は、やがて目を閉じ、消えた。1匹の蝶となって羽ばたいていった。蝶とともに霧も死んだ隊員も皆消えた。そして、静けさだけが広がる住宅街に戻った。


「…厄介だな」

天眼を通して見ていた十弁天藍蘭。天を通して物事の成り行きを見ることの出来るこの力は、昔より重宝されてきた。

「我が君。如何なさいますか」

2人立つ男。静かに目を閉じたまま次の言葉を待つ2人。

「……そうだな。様子を探ってくれるか」

星空がよく見える藍蘭の政務室。机の上に浮かぶのはいつもの赤い瞳はなく、2つの透き通る水晶のような目の中に宙が閉じ込められている。微動せずただそこに浮かぶ。

「御心のままに」

 ゾワッと背筋が凍える。片方はニヤつきを抑えきれず、口角が吊り上がる。もう片方は何かを愛おしく見るような微笑みをする。そして、跪き、両手を頭上に上げ敬意を示す。

そしてそのままどこかへと消えた。

「…いつの時代でも面倒だな…人間は…」

 ため息混じりに言う。その苦悩は誰にも理解されない。

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