肝試し
三題噺もどき―ろくじゅうなな。
お題:懐中電灯・家・真夜中
真夜中。
―泣く子も黙る丑三つ時。
私は、友達3人と共に、街から少し離れた、家に来ていた。
今にも壊れそうなほど、ボロボロな。
夏休みに入り、暇を持て余したみんなで肝試しに行こうということになったのが、数日前の事。(宿題とかはあるので、完全に暇というわけではないのだが)
そして、現在、街で噂のこの家に来ていたのだ。
「……」
懐中電灯の小さな明かりを頼りに、少しずつ進んでいく。
歩みを進めるたびに、ギシギシと床が悲鳴を上げている。
「うわーなんかいそ〜」
「そんなこと言わないで……!」
後ろの2人が話していた。
元々、おしゃべりな二人である。
できればこのまま話続けていてもらいたい。
「ねぇ、大丈夫なの?」
「だいじょうぶだって〜」
前を歩く友人に声をかけるも、能天気な答えしか返ってこない。
前に1人、後ろに1人と1人、その間に私1人。
狭い廊下を、一列になって進んでいた。
「でも、ここに来た人って、みんな居なくなってるんでしょ?」
そう。この家に来た人は、誰ひとりとして帰ってきていない。
そういう噂が、あとを絶たない。
けれど、私たちのようなもの好きが、ここを訪れては、消えていくのだろう。
「どうせ、噂なんだから〜」
どこまで行っても、能天気な彼女。
危機感というものが、欠如している。
―と、彼女を責めるようなことを考えるも、そもそもここにきている時点で、私も彼女を責められる立場にはいない。
「……」
床のきしむ音だけが、響く。
(あれ?)
一つの違和感。
「2人とも大丈夫?」
いつの間にか、2人の声が聞こえなくなっていることに気づき、声をかけ、後ろを振り向く。
だって、あの二人だ。
先生が来ようと、お構いなしに話し続けるような、餌を求め続ける小鳥のような二人だ。
床の軋む音だけ、が聞こえるということは、おかしいのだ。
「……え?」
2人の姿が無かった。
後ろに、確かに居たはずの二人が。
(帰った?でも、そんなはず……)
嫌な予感が残るままに、前を歩く彼女に声を掛けようと―
「ねえ、2人がいな……」
友人も消えていた。
足元には、奥を照らす懐中電灯。
先頭を歩く、彼女が持っていた、小さな懐中電灯。
「ひっ―」
その光の中に、何かを引きずった跡。
紅いような、黒いような、その跡。
「……え?」
そこで意識は途切れた。