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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

僕は魔女に飼われて『いた』

作者: 走不 歩
掲載日:2020/08/17

 R15と残酷な描写は念の為です。

 よろしくお願いします。

 

 ぼくはま女にかわれている。あの、ま女のいえからぼくは出ることがゆるされない。

 金色の目をもつそのま女はとてもわるいやつで、ぼくのおとうさんとおかあさんもあいつに殺された。

 きらいだだきらいだ。あんなわるいま女なんてきえてしまえばいいんだ。

 おまけにあのま女、ぼくのかぞくのなかのだれかがすきだった青い花を真っ黒なかみにつけてるんだ。あのま女みたいなやつに青い花は駄目だ。

 だからぼくは、ま女を殺そうとしたんだ。だけどナイフで刺しても刺しても死ななくて、ぼくはま女にずるいって言ったんだ。

 そうしたら、ま女はごめんねって言ったんだ。

 なんで、自分が死ねないことにあやまるんだ。おまえはもっとわるいことをしているだろう。

 ぼくにあやまるならおとうさんとおかあさんを返してよ! そんなかなしいかお、しないでよ!


  ***


 ぼくは魔女に飼われている。ぼくは魔女の家に監禁されている。

 金色の目に黒い髪を持つ美しい魔女は、ぼくの両親を殺した悪い魔女だ。

 ぼくは魔女を憎んでいる。殺したいと思っている。けれどあの魔女はどういうわけか死なない。

 撲殺、絞殺、刺殺、溺殺、焼殺、他にも色々試してみたけど死にそうにない。

 ぼくが何度も殺そうとしているのに、魔女はぼくを側に置いたままだ。

 どうして? 自分を殺そうとしているの奴なんて、どこかに放り出すか消すかしてしまえばいいのに。あの魔女はどこかおかしいのだろうか?

 加えて、魔女の髪についている青い花はずっと散らずに咲いたままだ。まるで時が止まっているように。そうそう、止まっていると言えば魔女の見た目も変わってない。昔から変わらず十五才くらいの少女の姿だ。


  ***


 僕は魔女に飼われている。いや、可愛がられている。

 僕は魔女の家から出しては貰えないものの、鎖に繋がれている訳でも、食事を減らされたりもしない。欲しいものは高価なものでない限り貰えた。

 金眼黒髪の僕と同い年くらいの魔女は、どこかおかしい。

 僕は両親の仇を取る為に、何回も人間だったら死ぬような真似をしているのに、実際彼女は苦しんでいるのに、数秒後にはけろって笑っている。僕は、その笑顔が到底偽物には見えないのだ。彼女は僕に憎まれようと、僕といることに幸せを感じているように幸せに笑うんだ。

 本当にあれが、両親を殺した残忍な魔女なのだろうか? 僕は何か忘れていないだろうか?


 僕が十六歳になった時、魔女を殺す方法を見つけた。いや、正確には教えられた。誰にって魔女本人に。

「私といるのがそんなに辛い?」ときかれたから僕は「そうだな」って答えたんだ。


 その後も「もう一人でも大丈夫?」「自殺とかしないよね?」とか散々きかれた。その度に僕は「大丈夫だし、てめぇには関係ない」って言ってやった。


 そうしたら、魔女は頭につけている青い花を散らせと言った。今までなにかと腹がたつものの手を出すことのなかった青い花だが、僕はそれに手を出すことに理由もなく躊躇した。


 けれど、魔女を殺すことは僕の昔からの悲願だ。僕は覚悟を決めて青い花を毟り取った。


 魔女は、今までの苦労が嘘かのようにあっけなく死んだ。


 裏庭に埋める為に僕は、魔女の遺体を持ち上げた。すると、何かが落ちた。僕は魔女を放り出しその落ちたものを拾った。

 それは花のモチーフで囲まれた小さな手鏡だった。


 そういえば、ここしばらく鏡というものを見ていなかった。魔女の家には鏡が一つもないから、自分の姿もここ十年近く見ていない。

 魔女が言うに「鏡はあなたに良くないものをもたらすから」だそうだが、魔女に囚われている時点で僕は不幸だ。まして、あんな魔女の言うことなんて聞いても意味がないし、奴はもう死んだ。僕が殺した。

 僕は、そう思うと気になって仕方がなく、手鏡の中を覗いた。


 写っていたのは、魔女にそっくりな金色の目だった。


「あ、ぁぁ……っああっ、うああああああああああああああああああっっ‼︎」


  ***


「? どういうこと? 男の子に何があったの?」

 小さな少女が、話をしていた四十代くらいの男に訳が分からず訊く。他の子供達もその少女の声に同調する。


 男は子供達を宥めると、

「男の子は思い出してしまったんだよ」


「思い出したって何を?」

 当然ながら疑問の声を上げるものが続出する。


「過去にあったことと、魔女の正体にだよ」

「魔女の正体って? 魔女は悪い魔女じゃないの?」


 無邪気な子供の声に、男は静かに首を横に振った。


「違うんだよ。魔女は悪い魔女じゃ無かった。魔女は……男の子のお姉さんだったんだ」

「え?」


  ***


 ある所に仲の良い四人家族がいました。ただの家族ではありません。由緒正しい魔法使いの血を継ぐ一家でした。


 けれど、魔法使いの一家と言えども、その家の娘の原因不明の病気を治すことは出来ませんでした。娘は日に日に寿命がすり減っていったのです。


 娘の弟である男の子は、姉である娘が大好きでした。そして、魔法の才も秀でていました。

 そのためまだ幼かった彼は、ある禁術を使ってしまうのでした。


 それは姉の体の時間を止める魔法でした。

 一部の時間と言えども、時と言うものは神様の領分です。姉の時間は止められたものの、その分大きな代償を払わされました。


 その代償とは、男の子の両親の命そのものでした。


 両親を殺してしまったことに男の子は酷く心に傷を負ってしまいます。それこそ、今こそ死んでしまいそうな様子で、姉は男の子を助ける為に魔法を使ったのでした。

 それは記憶封じの魔法。姉は男の子の過去の記憶を封じることで彼の心を守ろうとしたのです。


 けれど、病弱だった彼女はそれを不完全な形でしか出来ませんでした。

 男の子が自分自身の姿を見てしまえば、と封じ込めた記憶を呼び覚ましてしまう上に、抜けた分の記憶の補完があまり良いものではなかったのです。


 その為、優しい姉は、家にあった鏡を自分の身だしなみをチェックする手鏡を除いて全て処分し、男の子を外に出さないようにしました。男の子が鏡を見ることのないように。

 加えて自身にとってかなり辛い記憶の補完のされ方だったのにも関わらず、彼女は少年が自分の弟ではなくなる歳まで、側に居続けたのです。


 彼女は、悪い魔女ではなく、優しい優しいお姉さんだったのです。


  ***


 男が話終えると、子供達はみんな帰って行きました。けれど、とある姉弟だけは残って何か聞きたそうにしていました。

 男が「なんだい?」ときくと、姉の方が口を開きました。


「じゃあ、今、男の子はどうしているの?」


 その問いに男は金色の目を細めると、

「さあ、生きているとは思うよ。お姉さんが望んでいたように」

 と言った。


 男は酷く悲しげだった。



 ありがとうございました。

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