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ゴブリン戦記  作者: 木下寅丸
9/47

9話:『勇者の葛藤』

ゴシゴシ、ゴシゴシ





ピーチ:「なんだー真夜中にうるせーなー」


物音がする方に進んでいく。

勇者が必死で手を洗っていた。



勇者:「消えない。消えない」

  :「なんでだ。消えない」

  :「取れない。取れない」





嫌なものを見てしまった。


勇者が独り言を呟きながら、手を洗っている。何度も何度も。

『血』という単語がところどころ聞こえるが、

血がついているようには見えなかった。




ピーチ:「見なかったことにしよっと♪」





・・・





勇者の家に寝泊まりするようになって2ヶ月が経った。

案外平凡な奴だということが、ここ最近分かってきたことだ。



子供と遊び、

訓練をし、

戦の命令が下ると戦場へ出かける。


家に敵を残して戦場に行く神経を聞いてみたいものだ。



帰ってきたら、

また鍛錬。飽きずによーやる。

なんとなくスーみたいだと思った。



今、勇者はまた戦場に行ったところだ。

王宮の隅の隅にある、小さな家でまた一人。

ひまだなー。





勇者について分かったことがいくつかある。

1つは、子供が好きということ。

1つは、週に1回程度、アナスタシアという王家の女がやってくること。

目的は、バレバレ。


うちはそういうのに鼻が聞くのさ。



勇者の方は、気づいているの気づいていないのか。

明らかな好意をスルーしていた。

まぁまぁ可愛いってのに。もったいない。



戦場にいた雰囲気とは、違うんだよなぁ。

こう、なんていうか、ボーっとしている。

イメージと違うなぁ。残念。



もっと自分が国の英雄だ。



みたいな傲慢な奴だと、葬りがいがあるんだけどなー。

調子狂っちゃうよ。







後日勇者は帰ってきた。





雰囲気はいつもと変わらない。

いつものように夕食を食べた。

夜は気のままに過ごしているように見えた。





あの光景は一体何だったんだ?





何日か後の真夜中




ガシャーン。



ピーチ:「なんだなんだ!」



慌てて起きる。また物音の方に近づく。



ガシャーン

ガシャーン

ガシャーン



泥棒かと思ってそーっと居間を見る。

勇者が部屋で暴れていた。

家具という家具を倒し、

壊せそうなものはぶん投げた。



呼吸は乱れており、ハァハァと音がした。

目が合った。



勇者:「なんだ君か。驚かせたね。すまない」



暗くてよくは見えないが、

顔が青白いようにみえた。



行動とは裏腹の冷静な勇者の声が、

より一層恐怖を駆り立てた。



ピーチ:(見てないふりはもう出来ないなぁ)



どうしようか迷っていたが、勇者はこちらの方を気にしていなかった。

突然泣き出した。

泣いている。

なぜ?



恐怖が消え去り、好奇心が宿る。



ピーチ:「なんで泣いているの?」

勇者:「寒い寒いんだ。寒いんだ」

ピーチ:「なんで?」

勇者:「寒い、、、助けて」



勇者はピーチの胸に頭をやる。

ピーチも空気を読んだ。



勇者:「寒いんだ」

ピーチ:「もう寒くないじゃないかなあ?」

勇者:「ああ。暖かい」




無言の時間が流れる。

勇者は我にかえり、ピーチから少し離れた。



勇者:「すまない」


一呼吸


勇者:「少し話を聞いてくれないか?何も返事をしなくて良いから」

ピーチ:「分かった」

勇者:「私は人殺しなんだ。しかも大量の」

  :「大国で1番人を殺している」

ピーチ:「それってゴブリンのことだろ?人じゃないじゃない」

勇者:「そうゴブリン」

  :「でもゴブリンと人との違いって一体何なんだ?」

  :「私が生まれた村はゴブリンに滅ぼされた」

  :「生き残りは私だけだった」

  :「大国に保護され施設に入った。父と母の仇とそこで剣を磨いた」

  :「ようやく軍に入り、ゴブリンを殺しまくった」

  :「最初は気付かなかったが、殺していくたびに気が付くことがあった」

  :「村や町が戦場だと、どういう生活をしているのが嫌でも分かった」

  :「ゴブリンの子供を庇う親を切り、子供を切って分かる」

  :「私は今、私の村を襲ったゴブリンと一緒だって」

  :「あいつらは見た目以外、ほとんど人間と変わらない」

  :「そう思うようになってから、人間を切っているように感じ始めた」

  :「いつも夜中表れる。殺したゴブリンの悲鳴が」

  :「子供が、なぜ殺したの?って聞いてくる」

  :「頭がおかしくなる」

ピーチ:「そうか、、、」




ピーチは勇者の頭を胸にやった。

そのうちに寝た。












ピーチ:(こいつもまた復讐者だったのか、、、)




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