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ゴブリン戦記  作者: 木下寅丸
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1話:『生贄』


アン:「嫌な場面見ちまったな、、、」

ドゥー:「ああ」

トロワ:「・・・」



3人のゴブリン達は、森の中から湖を見つめていた。



トロワ:「また、あの叫び声が始まるのかな?」

ドゥー:「ああ」

アン:「全く、人間は惨いことを平気でしやがる」



そこには、村人達と司祭がいた。

もうすぐ儀式が始まる。

村人の中から体格の良い2人組が表れた。少年が1人引き連れらている。



アン:「あれが今回の生贄か、、、」

ドゥー:「ああ」

トロワ:「まだあんなに小さいのに」



湖の前には簡素な儀式場がある。石で出来たベッドのようなもの。両端には2本の柱がある。

柱の上には、かがり火がたいてあった。

今は、現在でいう所の21時くらいであろうか。森は静まり返っている。

パチパチとかがり火の音が聞こえるだけだ。



トロワ:「始まっちゃう」

ドゥー:「ああ」

アン:「あんな儀式、何の意味があるんだ?バカだろ」



これは水神の儀。年に一度、水神様に供養を行う。豊作を願ってのことだ。

石のベッドに子供を寝かせ、司祭が、何かおまじないのような言葉を唱える。

唱え終わった後、子供はナイフで刺される。

一撃目は司祭が行うことになっており、村人達はその後に続くのが慣習だ。

子供が叫べば叫ぶほどより良いものとされ、息絶えるまで順番に刺し続ける。

最後に遺体を湖に捨てて儀式は終わる。村人達は水神様に感謝の言葉を口々にする。

そこには、生贄になった子供を嘆くものは誰もいない。



トロワ:「そろそろ、あの子死んじゃうよ!」

ドゥー:「ああ」

アン:「あぁ、くそっ。見ちゃいられねぇ。援護頼む」



アンは、森の中から飛び出していった。



トロワ:「仕方がないね」

ドゥー:「ああ」



トロワは、手に持っていた弓矢で、村人達のあたりに弓を射った。ドゥーは持ち前の怪力で岩を投げつける。



村人A:「なんだ一体?」

村人B:「これは弓だ」

村人C:「敵襲だ!みんな気を付けろ!!」



村人達はパニックになる。そして誰かがこう言った。「みんな、各々で違う方向を警戒するんだ!」

皆、視線は森にいっている。すると、儀式場からカサカサっと音がした。



村人達が視線を戻すと、子供はいなくなっていた。





トロワとドゥーは家に戻った。アンならそのうち帰って来るだろうと思った。追撃もなさそうだったし。



トロワ:「あの子、どうしたのかな?」

ドゥー:「ああ」



トロワはドゥーの返事にやれやれのポーズを決めた。相変わらずだが、君らしいかとも思った。


家のドアの方から物音が聞こえてきた。



トロワ:「帰ってきたね」

ドゥー:「ああ」



アンが帰ってきた。脇に子供を抱えて、、、。



トロワ:「まずいよアン!連れてきちゃ!!」

ドゥー:「ああ」

アン:「やっぱ、そうだよな、、、」



アンは悩んでいた。助けたは良いものの扱いに困った。森に置いてくるにしても、この子だけで朝を迎えられるのだろうか疑問が浮かぶ。かといって、村人の元には戻すこともできない。別の人間の村へ渡すのが良いのかとも思ったが、知らない。



アン:「捨ててくるか?」

トロワ:「この子には悪いけど、明日森のどこかに置いてこようよ」

ドゥー:「ああ」

アン:「・・・。捨てるのも良いけどさ。その行為ってさっきの人間達とどう違うのかな?」



トロワ:「それは、、、。やっぱり違うよ。僕らはあんなに野蛮じゃない。それに、森に置くだけで、子供を殺したりするわけじゃないじゃないか!きっと親切な人間に拾われると思うよ」


アン:「本当にそう思うか?そんな偶然起きると思うか?きっとこの子1人では、一夜も生きることは出来ないよ」

ドゥー:「ああ」

トロワ:「言いたいことは分かるけど、、、」



アン:「決めた。俺はこの子を飼う!」



トロワ:「ええ!まずいよ!!僕らはゴブリンだ。遥か昔から人間達と敵対しているじゃないか!!僕らの村の人達に人間を助けたって事実だけでも、ばれたら何を言われるか分かんないんだよ。ましてや飼うだなんて!」



アン:「じゃあ見殺しにするか?」



トロワ:「したくないけどさ。仕方がない事ってあると思うんだ、、、。ドゥーも何か言ってくれよ。ドゥーもこの子を飼うことは反対だろ?」

ドゥー:「アンの意見に賛成」

トロワ:「そこは『ああ』って言おうよ、、、」



暫く沈黙の空気が辺りを漂った。



トロワ:「、、、。分かったよ飼おう。どうなるか分からないけど。3人で協力すれば出来ないことなんてないよ!」



こうして、トロワはアンの提案を受け入れ、3人のゴブリンと少年の生活が始まった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが楽しみです
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