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詩織さんの微笑みは天使のように冷たい。  作者: 綾峰 はる人
LOST BLUE
9/32

私とし.......まし【存在コード】ては...................【S】

こんばんは。最近もっぱらウイスキーにはまっている綾峰です。

飲んでも、飲まれるな。という言葉を胸に気を付けています。

では、本編をどうぞ。

私は一礼だけをして、立ち去る。その間に見たまほさんの顔は、なんとも不服そうでモヤモヤとした表情だった。私も、まほさんの立場だったら同じような表情を射ていたかもしれません。でも、同情もしていられませんから。

「……失礼します」

「ええ、どうぞ」

 扉の向こうから、単調に返ってくる返事。予想ですが、歌煉さんの髪は黒髪のロングヘアですね。

「――いらっしゃい。貴女が、私に会いたいと言った生徒かしら」

「はい、貴女が歌煉さんですか?」

「ええ、そうよ」

 やはり黒髪のロングヘア、予想通りです。まぁ、そんな簡単な当てっこゲームはどうでもいいです。なぜ彼女は、制服の上に真っ黒のパーカーを羽織っているのか、それも所々ほつれてボロボロな物を。

「……いつまで、そこでボーっとしているの?」

「あ、いえ、緊張のあまりに、すみません」

 少しだけ急ぐように、歌煉さんの向かい側の椅子に座る。毅然すぎる態度は、ここでは絶対にしない方がいい。不自然でしかありませんから。

「私に聞きたいことって、何かしら」

 鷹のような眼差しが、私を見つめる。不思議ですね。吸い込まれるような感覚といえばいいのでしょうか、彼女の眼から目線が外せない。

「あの、それとは別に、気になることがあるのですが、いいですか?」

「…………なに?」

 彼女は、煩わしそうに眉間に皺を寄せるが、ここの教室のドアを開いた時からずっと気になっていることがある。私はここへ来る前に、まほさんに『二人きり』だと伝えられています。

 もしそれが聞き間違えでないなら、奇妙ですね。

「――隣の女性は誰ですか?」

 銀髪の青い瞳、人形のように白い肌。まるで、その美しさは聖母の様だ。

「申し遅れました。私、東郷万里といいます」

 訳がわかりません。何故、彼女がここに。というよりも、一番会いたくなかったとも言える人物が、こんな時に同行者としてついているなんて。

「ごめんなさいね。私も、あなたにちょっと気になるところがあってね。それを私確かめる術を私が持ってないから、万里に同行してもらったの」

「そのせいで、まほにゃを追い出す形になってしまって……あとで謝っておかなくちゃいけませんね」

「ほっといても大丈夫よ。まほはあれでも賢いから、分かってくれているわ。貴女の役割も私の役割も、まほ自身の役割もね」

 まほさんは、万里さんの事を見たこともないと言っていた。それなのに、彼女が尊敬している歌煉さんは、万里さんと親しげに話している。そして何より、驚いていることが一つある。万里さんが、郁美さんと全く似ていないことだ。だいたいの場合、読み手に少しでも兄弟姉妹であることを理解してもらうためにも少しは似せる。なのに、似せるどころか、全く似ても似つかない理由は何故でしょう。

「――ああ、内輪話をしてごめんなさい。……それじゃ、本題に入ろうかしら」

「……では、単刀直入にお聞きしてもよろしいですか?」

「どうぞ」

「まほさんとは、どういう関係なんですか?」

「恋人よ」

 即答ですか。ええ、もう少しだけ躊躇うと思っていました。まぁ、今の世の中ジェンダーレスですから、公言するのに躊躇いは要らないとは私も思っていますが、まほさんなら言葉を濁していたとも思います。

 しかしながら、やはり二人は“そういう関係”だったのですね。歌煉さんへ近づこうとする相手に対してまほさんが向けた警戒心が、恋敵のそれによく似ていたものですから予想はしていたのですが、見事当たりましたね。

「聞きたいことって、それ?」

「いえ、まだ幾つかあります」

「そう」

 歌煉さんは口元にだけ笑みを浮かべると、後ろ髪を掻き揚げて私を見つめた。

「――もったいぶらずに、本当に聞きたいこと聞けばいいじゃない?」

「……………………………………」


 ――まさか、見透かされている?


 いえ、はっきり言いましょう。これは、ばれていますね。私が誰も知らない筈の事を知っていて、それを確認するためにここへ来ている事がばれています。何故、どのタイミングでばれたのか分かりませんが、仕方ありません。逆に気を遣わなくて楽だと思えばいいのですから。

「まほさんの事を嫌っている人間、知っていますか?」

 政府委員の方達にもこれを聞いて回りたかったのですが、歌煉さんには特に聞きたかったことです。なにせ、流石の私も本人にこんな事は聞けません。それに、こういうのは第三者の方が、割と知っていたりするものです。

「なるほど、たしかに“なにか理由がなければ聞けない”ことね。まほとそれほど関わりがない貴女から、出てくるような台詞じゃないわ」

 歌煉さんは、またも口だけに笑みを浮かべる。ですが、先程の笑みとは全く違うように感じる。表情こそ一緒ですが、今の笑みは楽しそうに感じましたので。

「――そうね。一人の男に執拗に迫られているって聞いたことはあるけど」

「なるほど、分かりました」

 ここまで分かれば、後は私の能力で人物特定まで導くことが出来るでしょう。

 私は、ゆっくりと眼鏡をかける。そして、一つの能力を選択する。



 ――カチリ。



 全ての時間が、止まる。動物も、風も、落葉さえも空で静止する。そして、それら全てに設定されているデータファイルが、幾何学てきな模様で表示されている。今の空間で自由に動けるのは私だけ。そしてそのファイルたちは見放題というわけです。

 このファイルには、彼女たち自身でさえ知らない。作者が決めたキャラクター設定というものが事細かに書き記されている。もちろん、彼女たちが口が裂けても言えない事実だって記載されている。

 まぁ、考えるに、執拗にまほさんに付きまとっている人間は、まほさんのプロフィールを覗き見すればすぐに分かると思うのですが……。

 篠崎歌煉。彼女、さっき私に少しだけ嘘をつきました。男の事は事実でしょう。でも、それ以外の何かを隠していた。それはいったい何なのか、確かめてみましょう。


 【篠崎 歌煉“しのざき かれん”】

 篠崎三姉妹の末っ子。長女次女ともに既に亡くなっており、深い心の傷を持っている。しかし、人付き合いの悪さは昔からで、子供の頃はネットゲームにハマりこんでいた。中学三年から、ゲームではなく科学に夢中になり今のような才色兼備となる。

 高校二年の冬に、五十嵐まほと交際関係に発展。長らくなかった心のよりどころを持つことが出来た。その一方で、不治の病が進行しており身体の衰弱も感じていた。

 そして、今年のまほの誕生日を境に、入院することを決める。その時に渡したのが、まほの誕生石でもあるサファイアのペアイヤリング。

 その後、奇跡的にも不治とされていた病気の抗生剤ができ一命を取り留めるが、下半身不随になり車いすでの生活になる。そのため、学校側から特別施設の方へと送られるが、今までと変わらず万里と共に教師と生徒の仲介役を全う。卒業まで、石神学園を支えた。


 能力について。

 彼女の能力は『記憶の永久機関』見たもの、聞いたものを半永久的に、鮮明に記憶する能力。現在でも四歳の時に聞いた話や、行った場所を覚えている。

 これによって、教師には弱みを握って牽制し、生徒の悩みを支える万里の補助をして早急な解決に導いていた。



「…………………………能力?」

 これは、予想にしていなかったことです。『彼女の能力は』ということは、皆さんそれぞれ能力を持っているということなのでしょう。ということは……“無能力”の私はおかしい、という事になります。

 しかし、物語が崩壊していないということは、私が『異例の無能力』であるということはばれていないということ。ぎりぎりセーフというものでしょう。

「おや? これはなんでしょう」

 彼女の設定ファイルの最後に、もう一つファイルがある。ですが、彼女の設定は既にこのファイルに書き記されているので、明らかに不要なファイルに見える。しかし、データ容量が少しだけ存在している。つまり、この中にも何か記されているということになる。

「――ふむ……」

 ここに重要な設定が隠されていたとしたら、見落とせません。ええ、決して興味本位などではございませんよ。

 さて、どのような内容が書かれているでしょうか。


 篠崎歌煉の存在としての要素。

 彼女は存在コード“S”に変わる立場で、個体能力値はほぼ同等。身体能力の高さも同じく引き継いでいる。なおオリジナルの存在コード“S”は、この世界線では既に他界している。その理由については記載不要として省略。


 ふむ。いったい何を伝えたいのかイマイチ分かりませんね。この物語にも直接は関係のなさそうなものということは分かりましたが。

「――どうやら、無駄な好奇心だったようです」


今回も誤字脱字の添削をできていないので、もしかしたら見苦しい文だったかもしれません。申し訳ないです。ざっと軽く読み直しは毎回しているんですけどね……(泣)

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