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詩織さんの微笑みは天使のように冷たい。  作者: 綾峰 はる人
LOST BLUE
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私としましては、最後のご挨拶です。

読んでくれている方々は、犯人が誰だか予想がついているころだと思います。

しかし、綾峰はもったいぶるの大好きなので、あえて名前は伏せてます。えへ。

「それは、別に構わないけど、なに?」

「この会話、何人の人が聞いているのですか? まさか、嘘なんてつきませんよね?」

 まさか、そこを突かれると思っていなかったのか、驚いたような顔を一瞬だけ見せる。しかし、その次には少しだけ申し訳なさそうな顔をしつつ、小さく息を吐き出した。

「ごめん。気づいてたのね。実は、隣の部屋に溝呂木と征一がいるわ」

「ふむ。そうですか」

 ならば、私が答える質問は明確に一つしかありません。

「まほさんは、ルティアさんによって断罪されます。そして能力を剥奪。政治委員からは除名され、クラスEへと転入されます」

「やっぱり、ルティアが断罪者なのね。まほ以外とあまり関わろうとしない、あえて孤独を選んでいた感じだったし。でも、それってサイアクな結末じゃない。二人にとって、かなりキツイじゃん」

「ええ。ですが、あなた達はこれを知っても私の采配に従わなければなりません」

「分かってるわよ。何をすればいいの?」

「明日、歌煉さんは入院します。まほさんはそれの見送りに出るのですが、それを阻止していただきたいのです」

 ネックレスを無くす場所は、その病院での帰り。しかし、真の犯人は現場には訪れないでしょう。私は、そちらの方に出向き、ネックレスを回収しなければなりませんので。

 それとは別に、なぜ紗江さんは今キョトンとした顔で私を見つめているのでしょう。

「……それって、ネックレスを無くす日じゃないの?」

「……………………………………あ」

 ずるいですね。溝呂木さんがいる以上、その質問に嘘は吐けない。なるほど、科学因子(サイエンスファクタ)誘惑因子(テンプテファクタ)よりも知識因子(ノウレッジファクタ)のほうが脅威とされているのは、こういうことでしょう。能力を知らなかったとすれば、ただの墓穴。能力を知っていたとしても、対処ができません。

「実は、私たちに手伝ってほしかったんじゃないの~?」

「いえ、そんなつもりはございません」

 嬉しそうにニヤニヤしている紗江さんの顔が、非常に目障りです。『あっ、こういう一面もあるんだ~』という、悪戯な笑み。いいえ、違います。嘘を見抜かれないのであれば、それなりにはぐらかす事ができました。

「では、私はこれから用事があるので失礼してもよろしいでしょうか?」

「……ふぅん。最後に嘘ついちゃうのね」

「うるさいです」

 これ以上、心を見られるのは耐えられません。私は少しだけ急ぐように部屋を後にした。ふとして目に入ったのは、隣の部屋のドア。妙な静けさです。

 とても、部屋に二人の人間がいるとは思えない。

「…………………………」

 私はおもむろに隣の部屋の扉を開ける。

「うまく踊らされましたね」

 部屋には誰も居ない。それに、盗聴するための機材もない。つまり最初から誰もいなかったということです。最後に私の嘘を見抜いたのは、単なる紗江さんの推測。まさか、ここまで自然に誘導尋問されるとは思っていませんでした。

「紗江さん。次お会いすることがあれば、絶対に許しません」


――いえ、私は何を言っているのでしょう。


「“次”などというものは、無いというのに」

 知らず知らずのうちに、私はこの世界に居心地の良さを感じているのかもしれません。いいえ、それはありませんね。この世界への違和感と薄気味悪さは当初から拭いきれていませんから。

「そういえば、今は何時なのでしょう」

 私はカバンからタブレットを取り出し時間を確認する。そこには十七時と表示されていた。もうとっくに下校時間だ。早く帰らければ、まほさんと会う時間が無くなってしまう。

「……そういえば、何故私は登校しているのでしょうか」

 昨日から、学校を休んでまほさんの家に行くと決めていました。それが今日私は学校へと登校し、放課後には政治委員と話をする約束までしている。

 いままでも、突如として時間遡行が起きていたが、きちんと目的の場所に連れて行ってくれていました。それが今回、私は全くの別の行動をしている。

「はて、なぜなのでしょう」

 少し疑問に思いましたが、今はそれを解明する手立てはないですし、明日でこの物語ともお別れです。ならば、もう疑問に持つことは必要ないでしょう。

「ともかく、まほさんの家に急がなくては」

 私は、急いで学校を後にした。


 「――……あの、まほさん。私です。詩織です。いますか?」

 私は黒いパーカーのフードを深くまでかぶり、小声で窓に話しかける。少しばかりの時差で、カーテンが小さく揺れる。そこから除いた目は、ぱちくりと私のほうを見つめて瞬きをすると、ゆっくりと窓が開く。

「ありがとうございます。お邪魔します」

「見られたら、詩織さんまで危ないからって今朝言ったじゃないですか。なんで来たんですか。もう……!」


 ――ふむ。そういうことですか。


 どうやら私は、一度ここには来たようです。しかし、まほさんに危険だから来ちゃだめだと一点張りされ、諦めて学校へ向かったというようなところでしょう。

「すみません。やっぱりどうしてもお話しておきたくて」

「……しょうがないですねー。今日だけですよ」

「ふふ、ありがとうございます」

 安心してください。今日で最後ですから、私が、貴女の目の前にいられるのは。

「――ところで、まほさん。率直な質問をしてもいいですか?」

「はい? なんですか?」

「貴女を襲った男の知識だけで、貴女を追い詰めるまでの研究って、可能だと思いますか?」

「あー、それ私も思ったんですよねー。まぁぶっちゃけ、無理だと思いますねー」

 もしかすると、トラウマに思っているかもしれないと、少し名前を出すことに気が引けましたが、そんな私の懸念を無駄にしてしまうほどにケロッとしている。目の動き、表情筋の柔らかさ、手の震えの有無。それらを見ても、彼女はもう既に彼に対して何も思っていないようです。

「……ふむ」

 見る人によっては、心が広いと思うでしょう。しかし、そうではありません。まほさんは単純に、彼に対して何も思わない。『無』なのでしす。恐らく、彼の人生を潰せるチャンスが目の前にあれば、まほさんはいつもと変わらな雰囲気でそれを実行するでしょう。その時も『無』のままで。

「――私は、宇田川兵吾があなたをアブノーマル状態にできる方法を見つけ出したきっかけに、第三者の協力があったと推測します」

「でも、あいつE組だし根暗だし、人脈ないですよ?」

いよいよです。いよいよクライマックスです。だから私も投稿頻度を上げております。

頑張るでする。あは。

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