私としましては、断片にすぎません。
明日も投稿します。
というか、終わる終わる詐欺になってますが着々とLOST BLUE編は終わりに近づいています。
「私は、時たま記憶が飛ぶのです。まるで、その時間だけ抜き取られたかのように。瞬きをしただけで、見たこともない場所に立っていたりと」
ええ、あの現象です。私自身あれが何なのか分かりません。むしろ、この物語で初めて体験したことですので。ですが、言い訳には好都合。使わない手はありません。
「そうだったのか。じゃあ、やはり寿委員長の推理が正しかった、というわけだね。それを聞けて安心したよ。僕はさ」
「ふむ。推理とは?」
「聞いてないの? 最近、未確認の能力を使う人間がいるらしいのよ」
「正確に言うなら、同じ能力を持った人間が複数人いるという噂が流れているのさ」
「……それなら今日、まさに遭遇しましたよ」
今日の朝型に会った、人の見た目や声を真似する能力。ルティアさんとそっくりあ能力を使う別人。顔は見えませんでしたが、明らかに背格好が彼女ではなかった。
しかし、そういうことではなく。
「――私とそれ、何の関係があるのですか」
「いや、関係性はないんだけれどね。とある教師が、君の能力の不透明さに異議、もとい恐怖を抱いていしまってね。無理やり、犯人候補に結び付けられてしまったのさ」
「けど、詩織がたまに魂が抜けたような目で廊下を歩いている姿を征一が見かけたらしいのよ。それで、『彼女は時間という概念に欠如を持っている』って征一は推測してたんだけど。ただ、それだけの理由で憶測を立てても教師は認めようとしてなくってね」
「なるほど」
やはり、どこの世界にも上に立つにふさわしくない器の人間が上に立っていることはあるようですね。
いいえ。人が作る物語だからこそ、そういう人間が本の世界にも反映されてしまうのでしょう。現代社会というのはどこまで逃げても、浸み込んでしまっているようです。
「あー、君の魅力も俺の中で薄れてしまったことだし。俺はこの辺で失礼するよ。あとは仲良し二人で女子会でもしていてくれて構わないからさ。じゃあまた会おう」
彼は、一つの嘘を置き去りにしてこの場を後にする。溝呂木敦。彼は相当の遊戯好きのようですね。魅力が薄れたといいつつ、瞳は一層好奇心で染めあがり、手は『君に焦がれるほど興味があります』という暗号を含むOKサインが作られていた。
「…………………………」
またです。この物語に入ってからたまに襲われる正体不明の違和感。それは、彼ら彼女らが私へ何らかの特別なサインを示したときに感じることが多い。たとえば、紗江さんと初めて会ったときの別れ際。あの時も、妙な違和感を感じました。
――お前の、記憶に関わることを伝えにきてやったのによォ。
ムードメイカーはあの時そう言って、ルティアさんと東郷姉妹の資料を渡してきました。私の過去や、私が記憶をなくしたきっかけは話すことなく。
もしかすると、私は『湯賀レイ』の作品と何か深い関係があるのでしょうか。それも、私が多少無茶な行動をしても物語のセキュリティが許容してくれるほどに。
いえ、私は人です。そんなことはあり得ないでしょう。
「――はぁ。ごめんね。あいつ気分屋でさー。ただ、根はいい奴だから許してやってよ」
「いえ、気にしていませんよ。私もこんなことじゃ怒りませんから。聖人詩織を目指してますので」
「はいはい。優しいわねー」
「ふふふっ。さぁ、私たちも帰りましょう。帰ってペットに餌を与えなければいけません」「あのウサギね。まほがめちゃくちゃ気に入ってたわよ。ぞっこんって感じ」
「おや、それは嬉しいかぎりですね」
友好関係を一気に深めるためにペットのウサギを適当に撮影し、それを見せたところまほさんが凄い食いついて来て少し面白かったです。待ち受けもその日からウサギに変えているそうです。やはり、まほさんはどこか子供っぽいです。
「じゃあ、気を付けてね」
「ふむ。今日は一緒に帰れないのですか?」
「ちょっとね。放課後に政治委員で会議があんのよ。今日は長くなりそうだから先に帰ってて」
そういえば、一週間に一度のペースでそんなものがありましたね。何をそんなにも会議をするのか、重要性がいまいちわかりませんが皆が信頼する寿さんが執り行うのならば当然理由があるのでしょう。
まぁ、私はどれだけ寿さんが賢かろうとも、これには意味がないと思っていますが。
「そうですか。それは大変ですね。では、先に帰りますね。また明日会いましょう紗江さん」
「はーい。まぁ、その。気を付けて帰りなさいよ」
「お気遣いいただきありがとうございます」
そうして私は、家路を辿り帰宅した。
「――…………………………」
私は、一枚の写真を見つめる。それは、私が犯人だと確信している人間が写っていた。その写真からは、このようなことをする様な人間には到底思えない。いえ、実際に話してもそんな雰囲気は微塵も感じなかった。
――この方が、人の幸せを奪うような人には見えません……。
「何か、理由があるのでしょうか」
私は、彼女には借りがあります。ですので、弁明の機会は与えてあげようと思っています。まぁ、それを聞いたからと言って同情はしませんし、犯人を庇うことなど致しません。
「とりあえず、今日は寝ましょう」
明日は、学校を休んでまほさん宅の近辺状況と、可能なら家にお邪魔して会話をしておきましょう。きっと、ゆっくりと話せる時間は明日しかありません。事件当日は犯人のところへ私は行かなければなりませんから。
依頼主とは、たとえ“無”となる関係だと分かっていても良好なケアと関係を持っていたいというのが、私なりの仕事への拘りです。
「そういえば、この家に帰ってくるのも、明日で終わりですか。……兎のいる生活も悪いものではありませんでしたね」
最初は不必要な設定を悪戯に残してくれたと、蒼井さんを少し邪険に思いましたが、なんだかんだで役に立つところもありましたし、見ていると可愛いものです。
「私の憑代にされた女性は、台詞どころか自らの名前もない。この物語が世界なら、世界から見放されたとはまさに彼女のことでしょう」
でも、やはり彼女は喋っている。冷蔵庫のドアに貼られたメモ書き。固定電話。言葉という概念を知っていて、声を発するということができなければ使えないものが、彼女の生活の一部にある。
「物語は、世界の断片に過ぎない」
-----------------------ウタ ココロヲサカレタ アナタヘ--------------------
此れは魔法、決して消えない魔法だ。喩え、私の全てが呪われても微笑み続けましょう。
ほら、天使も悪魔も微笑んで。そして、私の肩を抱き寄せて。嗤いましょう、踊りましょう。そして、心を空に預けてしまいましょう。魔女にはそれで充分よ。
ポルカ、ポルカ、魔女のポルカで踊り、そして最後は、天使の真似して嗤いましょう。
LOST BLUEは、僕が高校生の時に見た夢の世界を参考にしています。豆知識だおw