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詩織さんの微笑みは天使のように冷たい。  作者: 綾峰 はる人
LOST BLUE
15/32

私としましては、本は窮屈です。

次回からいきなり情報量が少なくなるかもしれません。

だって結末みたいでしょう? みなさんも

「――あ、詩織。おっはよー」

「これは紗江さん、おはようございます。今日も気持ちのいい朝ですね」

「あんたは相変わらず、お嬢さま見たいな挨拶するわね」

「言葉使いは良くしなさい、とお母さんに言われていましたので」

 紗江さんと私の憑代となっている方の家は偶然にも近く、私の家が学園から十分程度、紗江さんが十五分程度の距離。最近は毎日一緒に登校しています。もちろん、情報収集のために。

「まほさん。今日は登校してきますかね」

「さぁねー。あのタフなまほが体調不良で四日も休むなんて意外だけど」

「たしかに、天真爛漫ですもんね」

 体調不良。いえ、違います。私は知っている。五日前から“宇田川兵吾”も、体調不良を理由に、昨日まで休んでいたことを。

 おそらく彼女は既にアブノーマル状態にされ、学校に行きたくとも行けない状態なのでしょう。そして、その呪縛が解けたのは昨日のこと。アブノーマル状態というのがどれほど過酷なものなのかは分かりませんが、今日登校してくることはないように感じます。

「ところでさー。アンタ、なんで授業を毎回受けてないわけ?」

「受けなくとも、テストで高得点を取る自信があるからです」

「それは随分な自信なことね」

「逆に紗江さんは、なんでモデルをしているのですか。ここは、学業に加えて異能も重視される。それだけでも大変でしょう。ですが、紗江さんはモデルもやっている。大変ではないのですか?」

「んー。まぁ、そりゃあ楽じゃないけどさ。でも、モデルは私はやりたいことだから、むしろ一番なりたい私になれてる気がするんだよね」

「……そうですか」

 私には、理解できません。仕事に対してポジティブにもネガティブにもなれませんし、ましてや、仕事に自分の居場所を感じたこともありません。彼女は、派手な見た目と表裏のない性格が裏目に出て、高飛車で我が儘と一部の人に思われていますが、私が深く関わってきた人物の中で、一番真面目で一直線な人だと思います。

「――あ、そうだ。今日、歌煉が旧校舎に来てほしいって言ってたわよ」

「そうですか。わかりました」

 珍しいですね。彼女が図書室以外の場所を選ぶというのは。

「んじゃ、私はこっちだから、またね」

「はい、政治委員のお仕事、頑張ってください」

 政治委員の方と、一般生徒は別の校舎で分けられています。そこで会議をしたり、自分たちで勉強をしているようです。クラスに席はあれど、彼女たちの席は常に空席。

 私たちがいる校舎に立ち寄ることがあるとすれば、生徒たちの悩みや問題を発見したり解決したりする為に訪れているのだとか。初日に居た紗江さんは、まさにそれをしていたのでしょう。

「――あ、詩織さん。おはよう」

「おはようございます。なんのご用でしょう]

 彼女は、東郷万里の『目』となっている集団の一人だ。

 身を潜め続けている彼女には、代わりに目となる存在が必要だったのでしょう。だから、小さな組織を作った。それは学年やクラスを問わず、彼女の一方的な選抜により決定される。とは言っても、断ることもできるそうですが、まぁ政治委員直々のお誘い。断る人はいないでしょう。ただ、この役割になったからと言って特別扱いされることはなく、他の一般生徒たちと変わらない。その人にふさわしい評価や扱いを、周囲からは受けるのです。

 確かに、詳らかに生徒たちに説明すれば理解してもらえる上にこの上ない優遇をしてもらえるようになるかもしれせん。しかし、この役目のことは他言無用。それに加えて、彼女らは東郷万里を見たことはない。つまり、公言することはできないのです。

 そんな利益のない“万里の目”となっている彼女たちを見分けるのは大変ですが、ある一つのパターンが彼女たちにはある。

 それは、喜怒哀楽の起伏が乏しいこと。何事にも動じず、嫌がらない、喜ばない。まるで、機械のような人たちです。

 しかし、この見分け方も万里さんと直接的に良好な関係を持ち、所謂『ネタバレ』を知っているからです。何も知らなければ彼女たちの性格は日常に溶け込み、違和感はありません。

「もう、そんな怖い顔しないでよー。私はただ、これを渡すように言われただけよ」

 そういって渡された一枚の手紙。送り主はもちろん東郷万里だ。

「なるべく人気の少ないところで読んでほしい、だってさ。じゃあ、あとはよろしく」

「はい、ありがとうございます」

 彼女たちは可哀想だと、会うたびに思います.彼女たちははっきりとしたキャラデザがない。声も機械音で、見た目はすべて一緒。『東郷万里の付属品』という扱いが目に見えてわかる。本の世界は、現実よりも自由で様々な可能性を持っていますが、こういった部分はどんな世界よりも残酷です。生きながらにして、すべてを決められているのですから。

「私たちのほうが、もしかすると鳥籠の外に居るのかもしれません」

 私は、カバンの中にずっと入れている分厚い本を見つめる。重く、ずっしりとした本。ページ数で言えば五百はあるでしょう。例えば私の人生をこの本をすべて使って書けば、それは壮大で感動的な物語を作ることができるでしょう。しかし、読むのは一瞬です。私の数十年の軌跡も、三日あれば読み切ることができてしまう。それに、本の中の私は選択することができない。今、生きている私が選択した道しか歩くことを許されていない。たとえ、本の中の私が他の夢を持っていたとしても。

 儚いですね。何もかも。

「……………………ふむ」

 感傷に浸る時間は、もう終わりです。校舎裏の狭い階段を二階ほど登り、屈みこむ。ここは人気がないことを知っています。ここの生徒たちはまじめな人ばかりですから、校舎裏や、屋上。立ち入り禁止にされている場所には基本誰も来ません。ここなら安心でしょう。さて、渡された手紙を読むことにしましょう。


『――詩織さんへ。

 詩織さん、貴女のことだからまほさんのことが気になっていることでしょう。今回は、勝手ながら私の独断でまほさんの家へ様子を見に行きました。……非常に、残念なお知らせです。彼女は、アブノーマルへと変化してしまったようです。私が様子を見に行った時にはノーマル状態へと戻っていましたが、私の経験上彼女は確実的にアブノーマル状態に、ここ最近の中で変化していると推測します。アブノーマルに一度でも変化すれば、危険因子となり能力を剥奪される『断罪』が待っています。もしそうなれば、二度とまほさんと会うことはできないでしょう。そしてそれは、真帆さんも、あなたや最愛の歌煉さんと会えなくなるということでもあります。それで、です。まほさんから、今日の何時でもいいので、屋上に来てほしいと、あなた向けに放った言葉を授かってます。絶対に行ってあげてください。      

                                 東郷万里』


「屋上に。ということは、まほさんは登校をしてきている?」


最近投稿頻度が低下してすみません。毎週だとおもいつつも最低限納得のいくところまで書き上げたく思い、三ページ分かけるまで投稿しないほうがいいなと勝手ながらに思った次第です。


お詫びに、来週の金曜日にpixivを開設します。その中で詩織さんやまほちゃんのイラストを載せていきます。

なろうで挿絵としてみたいという要望があれば、そちらでも掲載するかもしれません。


では、またの投稿でお会いしましょう。

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