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やはり久々の授業は疲れた。

そう考えながら自室へ帰った私は素早く後ろ手に扉を閉め鍵を掛けた。

もう誰の目も気にする必要はない開放感に、全身からドッと疲れが湧いて出てくるようだった。



「はぁ〜〜〜〜!金持ちって何であんなにお上品なの、疲れた肩凝った面倒くさい…」


防音性が高いのをいいことに1人ぶつくさと文句を言いながらカバンを1人掛けソファに放り投げ、制服を脱ぎ散らかし寝室の扉を勢いよく開けると愛猫の眠るベッドへとダイブした。


みゃおぅ!と睡眠を妨害された事に対する抗議の声が聞こえた気がしたが私の知ったことではない。


そもそもベッドは私一人しか使わないというのにクイーンサイズ近くもあるのだ、多少の揺れなど気にならない筈だ。

それでもカヌレは不満だったようでさっさとベッドを降り一足早い夕食をとりにリビングへと姿を消してしまった。流石猫、こういう時の飼い主の扱いはよく心得ている。




渋々私も起き上がると自分が脱ぎ捨てたものを片付けに向かった。

ふと制服から取り出したスマートフォンが新着メッセージを告げるLED点滅を示しているのを見掛け画面の電源を入れる。


「あ、秀政さんだ」


母と再婚して義父となったその人からのメッセージ、内容はいつも通り。


「『学園では不自由していないか?必要なものがあれば連絡しなさい、体に気をつけるように』ね…また同じだ、絶対コピペだよねこれ…」


再婚相手の連れ子など気にも止めないのが一般的なのだろうが、こう大きな家にもなるとやはり外聞を気にして連絡をしないといけないのだろうか。

気にしないで下さいって毎回返事してるしそもそもメッセージ送ってるかどうかなんか他の人には分からないよね?

部下にでも任せてるのかな、忙しそうな人だし。

私も相手に合わせていつも通りの返信を送ると即既読のチェックが付き『分かった、小遣いをまた振り込んでおくから使いなさい』と、いつも通りの返事がまた返ってきていた。


この小遣いこそ今1番困ってるんだけどな……





母との結婚が決まって秀政さんの所有のマンションに移ることになった時、私はきっと穂波に残されると思っていた。


だからあの家族会議の時に私が引き取りますよ、と、さも当たり前のように顔色も変えずに発言された事には本当に驚いたし、正直体調不良か何かではないかとまじまじと眺めてしまった。その後も発言を撤回される事もなく、私は母と共に義父の所有のマンションに居を移し入学式までの数ヶ月をそこで過ごした。

義父も毎日帰りは12時を過ぎて居たようだったし、間に入るべき母は悪阻が酷いと部屋に閉じこもってしまったせいで殆どコミュニケーションを取る事はなかったけども―――



それはさておき、入学してからというもの何故か二、三日に一度の頻度でこのメッセージが届くようになった。

最初はこのやり取りが終わればもう話す事も無いだろう。なんて思っていたのだが、驚いた事に毎度同じ文書だと言うのに今の今まで連絡は続いて居る。

そして締めくくるように送られてくるお小遣い、最初に確認した時は精々二万位の物だろうなどと考えありがとうございます。等と返してしまったのが運の尽きだ。


翌日確認した額は10万円。


多すぎるけれど1年分をまとめてかもしれない、と甘く見て連絡をしないでいたら毎回同じ額が振り込まれ、あれよあれよという内に積もり積もって100万円を超えてしまった。


絶対に一介の高校生が貰う小遣いの額じゃない…


勿論返金しようと連絡もしたが持っていて困る物ではないと取り合って貰えず、こんな高額では手を付ける訳にもいかず必要最低限の買い物に有難く使わせて貰って残りはそのままに、という大変勿体ない状況になってしまっている。




五辻家に引き取られたとはいえ元々一般人育ちな私は、突然はいどうぞとお金を渡されてもこの額では恐怖の方が勝る。

多分学園内じゃこの気持ちは分かって貰えなさそうだけど。

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