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この話をもって一旦推敲期間に入ります。

いつもありがとうございます。

そこからはあまり覚えてない。


養子に出すのを拒絶して暴れた私は慌てて駆けつけた看護師数名に止められ、外面を気にする父母は逃げるように帰って行きそれ以来面倒事に関わるのを嫌がるように私と娘を離れへと押し込めた。




美しい雪のような娘、その名前すら愛せ亡くなった私は、深い雪という私のこの心の悲しみのような名前に変えて出生届を出した。

毎日夢現のような心地で繰り返される日々、泣き出す娘の声に反応して世話をし寝て起きる。そうやってぼうっとしている間に娘はすくすくと大きくなった、満面の笑みがまるで太陽みたいにキラキラしていて私の心はそれを見ているだけで少し落ち着くような気持ちになれた。


ある日妹が訪ねてきた。

テーブルを挟んでお茶を飲み、親になったもの同士積もる話でもするのかと甘い考えで部屋に上げた、私の心はまたも粉々に砕かれるとも知らず。



「姉さんは女の子だったのね」

「ええそうよ、貴方は女の子二人と男の子だったかしら?」

「…ええ」

「三人も居ると大変ね。私は一人でも大変だったから尊敬するわ」


思い返してみれば、マグカップを片手にお持たせのお菓子を摘む私とは裏腹に妹は口数少なくお菓子にもお茶にも手をつけていなかった。

悩み事でもあるのだろうか。と、声を掛けかけた私を遮るように妹は口を開く。



「姉さんと違って私は男の子が産めたのよ。父さんも母さんも褒めてくれたわ、娘として後継を産むなんて立派になったってね!」

「貴方なに、を」

「昔から父さんも母さんも二人とも姉さんに甘かった!何をやってもどれを取っても姉さんはいずれ長女として穂波の後継を産む娘だからってね!!それなのに姉さん、あんたは本当に馬鹿だわッ、何処の馬の骨とも分からない男に捨てられ挙句産んだのは約立たずの女とはね!滑稽だわ!!!」

「そんな、…こと、を、二人が……」

「二人はこれからは跡取り息子の母として私を大切にしてくれると言ったわ。姉さんは精々この離れで大人しくしていることね、私か私の息子が跡を継い継いだ暁には貴方もその汚い娘も無一文で放り出してやるから!」




吐き捨てるようにそう言った妹は、心底汚い物を見るようにやっと歩き出したばかりの娘を睨み付け蹴倒して家を出ていった。

私だって妹が羨ましかった。

妹には優しくしなさい、お姉ちゃんなんだから我慢しなさい、貴方は長女なんだから勉強ももっと点を取らなきゃ、習い事ももっと上達しなきゃ。そう言われる私とは裏腹にお友達と自由に遊び歩き、会う度に父にお小遣いを強請る妹が。



娘は蹴倒された時に何処かぶつけたのか激しく泣いている。

いつもなら駆け寄って抱き締めてキスのひとつもしてあげる筈なのに私の体は動かなかった。そう、この子さえ居なければ、と、私の頭は妹の言葉で毒されてしまっていたから。

泣きわめく娘を平手で叩き煩いと怒鳴りつける、豹変した私の姿に更に増した泣き声も数度繰り返す頃には静かに啜り泣く程度に落ち着いた。



男を探さなくては。

この家を放り出されても、生きていけるだけの金を持った極上の男を――







探しに行くといって出ていった秀政はまだ戻らない、生まれたばかりの小さな息子は何かを感じ取ったのかふにゃふにゃと泣いている。

私の状態を見ていた誰かが看護師を呼んで息子をどこかへ運んで行ってしまった。



「…花絵さん、体に障るわ。病室の方に戻りましょ」


美沙子様は私をベッドへと促して周囲に指示を送っている。

言われたとおり体は重く痛く、今更抵抗する気も起きないまま私は病室へと送られた。


深雪は戻って来てくれるだろうか。

まさかあの子が来ているとは思わず心底嬉しそうに息子を抱く私を見てしまった、なんでお前は女なのかと罵った事もあった。

嗚呼、今更後悔したところであの子にとって何の償いにもならないのだろう。




薄らと日の陰り始めた窓の外を見つめて、ただあの子の無事だけを願う。

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