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1週間ほど遅いお盆休みを頂いており大変遅くなりました、また更新頑張って行こうとおもいます。

どうぞ宜しくお願いします。

「あっ」

「えっ、あ…」



中にいたのは私と幾つも変わらなそうな歳若い男性だった。

思わず声を漏らすと向こうもこちらに気付いたようで慌てて振り返った。

髪はカフェオレのような明るい色で瞳は青色、和と洋を感じさせる顔立ちから察するに西洋系のハーフなのだろう。その彼が片付けていたものは正に先程食べていた金平糖で私は何となく察した。


「あの、部屋の前のおぼん、もしかして貴方が用意して下さったんですか…?」



彼は私が声を掛けると顔を真っ赤にしてコクコクと首振り人形のように首を縦に振った。

どうやら私の推測は正しく、彼が持ってきてくれたようだった。


「あの、ありがとう御座いました。うるさかったですか?ごめんなさい」


今度はフルフルと首を横に振り、否定の意を示すとそのまま俯いてしまった。

極度の恥ずかしがり屋、もしくはあがり症なんだろうか?私が声を掛けてから全く声を発してくれなくなってしまった。


早々に部屋に引き上げた方がいいだろうかと思案していると、彼は何やらごそごそと、厨房に備えられている大きな冷蔵庫をまさぐり私に小さな包みを差し出してきた。

受け取り、小花柄の可愛い小箱を開くと、中からは分厚く美味しそうなキッシュが顔を出す。


「これ、私に?」

「お…お夕飯を、召し上がってないと…聞いた…の、で………」


蚊の鳴くような小さな声ではあったが、彼は私とコミュニケーションを取ってくれた。

そう言われてみれば、昨日車に乗ってからの記憶がない。つまりそれは夕食を摂った記憶もないということであり、小箱から漂う美味しそうな匂いに忘れていた空腹を思い出させてしまった。


「あの、ここで食べても良いですか?」

「えっ!?あ、いや、えっと、…大丈夫、です」


私の提案に真っ赤になって俯いていた彼ががばり!と顔を上げ、右を見たり、左を見たり、悩んだりした後少し黙ってから許可をくれた。


それでは遠慮なく、と私は部屋の中心を大きく占める銀色の作業台の、彼の立っている場所のちょうど反対側に部屋の隅に置かれていた三足のスツールを引っ張っていき腰掛けた。

キッシュに両手を合わせ頂きます。と小さく声を掛けてから手に取り、お行儀のことは頭から追い出しそのままぱくりと口へと運んだ。



持った時に気付いたが、このキッシュはパイ生地で出来ている。

パイ生地のサクサクとした食感とバターで炒められたほうれん草、ごろっとしたじゃがいもや厚切りのベーコンに程よくしゃきりと食感の残されたきのこ。

噛めば口の中に広がる旨み、旨み、旨み。


「おいしい…!」


それらの具材を優しいコンソメ風味に味付けされた卵液がしっかりとまとめあげた、最高に美味しいキッシュだった。


ふ、と視線に気付いてそちらを見ると、向こう側で作業を再開していた筈の彼が私の食べるのをまじまじとみつめている。

えっと、食べますか?と食べ掛けのキッシュを差し出せば今度は両手も合わせて首をブンブンと音が聞こえそうなほどの勢いで横に振られた。

それなら遠慮なく残りも頂きご馳走様でした。と、もう一度手を合わせる。



「良かったら、これもどうぞ…」


また小さな声を掛けられたかと思うと、今度はプリンと紅茶が差し出される。

プリンにはカラメルソースと、光を受けて輝くグラニュー糖のまぶされたお花が供されている。

きっとこれも絶対に美味しいに決まっている。


差し出されるまま受け取り、一口掬って口に運べば固めの口当たりに卵の濃厚な風味、それらが体温でとろりと蕩けて口いっぱいに広がっていく。


「美味しい、プリン、凄く美味しい…」



どうにか色々口にしようとするものの、結局はただただ美味しいだけを小さく、繰り返し繰り返し発しながら、私はペロリとそのプリンまでも完食してしまった。

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