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「それでは深雪様、幾つかお聞きしたいのですか宜しいですか?」


突然水を向けられた私は思わずえっ!と声を漏らす。


「あの、はい…私で答えられることなら」

「ありがとう御座います。それではお好きなお色と嫌いなお色、苦手なお色等教えて頂けますか?」



まさか、私自身の事とはいえ私の意見が介在する話だとは思っていなかった。

ドレスもお化粧品も、その道の詳しい人が適当に選んで、それで終わりだと思っていた。しかし緒方さんにはそのつもりは無いようで使い込まれたメモ帳を片手に、私の話をしっかり聞こうと目を見て熱心に話し掛けて下さっている。


こんなにちゃんと話してくれてるんだし、私もこの人にはちゃんとしなきゃ―――



「好きな色は青色です、特に真っ青な深い青が。あと真っ赤な赤色も結構好きです。嫌いとか苦手な色とかは特に無いです、強いて言うなら黄色とか、かな?」

「なるほど、深雪様は原色系の濃い色がお好きなんですね」

「パステルカラーも好きなんですけどピンク色とかあんまり似合わなくて…」

「…はい、ありがとうございます。それでは最後に、明るめと暗めのお色でしたらどちらがお好きですか?」

「うーーん…物にもよりますけど、強いて言うなら暗めが好きです」





緒方さんは今の話し合いの内容をサラサラとメモ帳に書き込むと、空いた席に置かれていた分厚いファイル類をパラパラと捲り何枚かのパンフレットや冊子をテーブルの上に並べる。


「それでは今お聞きしたお話を元におすすめのお品物を幾つかご紹介させて頂きます」

「はい、宜しくお願いします」


「まずはこちら、国内大手ブランドの秀麗堂のハイグレードラインからの商品になります。お色味が落ち着いたものが多く年齢層も上の方をターゲットにされておりますが深雪様の好みにも合うかと」

「あらそちらなら私も口紅を持っているわ。深雪さん、お揃いにする?」

「美沙子様のお持ちのお色味が確かダークレットでしたね。…こちらのお色味です、きっと深雪様にもお似合いになると思いますよ。あとはそうですね、品質が高く人気のエルブロングループから若い女性向け人気ブランドのコスメライン等もございますよ」



私にとって全くの無知な分野の為、分かりやすく説明して下さる緒方さんの話をうんうんと頷きながらただただ聞き入ることしか出来ない。

その間にも美沙子様が次々に購入を決め、私は並べられた色のどちらが好きかを聞かれるだけの簡単なお仕事をこなす。


緒方さんの手元のメモ帳には、もう既に結構な数の購入品の型番が書き込まれている。

あれ、一体全部でいくらになるんだろう―――



この間桃ちゃんと結唯と買い物した時、絶対靴は良い物を使うべき!と推されて購入を決めたローファーも5万円を超えた金額を提示されて、内心心臓はバクバクと早鐘を打っていた。

二人ともこの金額でこの品質ならとても良い買い物だと言っていたので本来ならもっと靴は高価なものなんだろう。

しかし小市民な私には、いざ購入したものの勿体なく感じてしまい、未だに履けずに部屋に飾ってある。学校指定のローファーも別で持っているし、それが履けなくなってからでも良いかなぁ、なんて思っているのが実際のところの本心だ。






「まぁとりあえずはこんな所かしら。深雪さん、他に気になるものはあったかしら?」

「いえいえ!もう充分です!!」

「あらそう?まあ、また不足があれば緒方さんに来て頂けば良い話だものね」

「はい!勿論です。お化粧品の使用方法などは後で説明させて頂きますね、一応冊子の方にも記入してお渡しさせて頂きますのでまたお時間ある時にでもご覧下さい」



ありがとうございます。と頭を下げれば、緒方さんは深雪様が綺麗になるお手伝いが出来て私もとても楽しいですから。と笑顔で答えて下さった。

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