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「深雪さん、お久し振りね」

「お久し振りです美沙子さん。今日はお誘い頂きありがとう御座います」


黒塗りの車の扉が恭しく開けられ、中で迎えて下さった美沙子さんは前回と同じように美しく艶っぽい美しさであった。

あら、とこちらを上から下までまじまじと確認されてしまったがどうやら気付いて頂けたようだ。


「そのお洋服、私が贈ったものよね?」

「はい!折角美沙子さんとのお出掛けなので頂いたお洋服を着たくて香重さんに相談してコーディネートして貰ったんです」


うん…良く似合ってるわ。と頷いている美沙子さんはほんのり笑みを浮かべていてどうやら喜んで下さったようだ。これを着てきて良かった。





夏も盛りの七月の終わり、蝉の鳴き声響く中美沙子さんからのお出掛けのお誘いを受けた。

父からも話を聞いていたので今回はそこまで緊張することもなく有難く受けさせて頂き、夏休みに入りほぼ空になった寮棟の入口で美沙子さんに拾って頂く手筈になった。


「学園に来るのも久々だわ。秀政が通っていた頃にはたまに来ていたのよ?」

「そういえばお父さんもここの卒業生なんですよね、前に聞きました」

「ええ。あの子だけじゃなくて私も彼の父…ええと、貴方のお爺様も卒業生なのよ、私の通っていた頃は木造だったからあまり面影は残ってないのだけどね」


寮から門までの道をゆるりと進む車窓から懐かしむ様な眼差しを向ける美沙子さん、その横顔からは年齢の分からない美しさの中にほんの少し重ねた歳月が垣間見えたように思えた。


「前も聞いたけれど深雪さんは学園で不自由してない?」

「はい、本当にとても快適です。ご飯も三食食べられるし必要な物は全部用意して貰えていますし凄く助かっています、五辻の皆さんにはなんと感謝したらいいやら」

「あら?貴方も五辻、でしょ?」

「あっ…」

「ふふっ、でも良かったわ。私としては難しい年頃の娘さんをこんな狭いところに入れてしまうのは反対だったのよ。でもあの人も秀政も安全だからって聞かなくて…」

「そうだったんですね」


安全面を加味しての入学だったとは、初耳の情報だ。


「それが久世の者達につけ込まれる隙になるなんてあの子もまだまだね。本当に深雪さんを傷付けてしまってごめんなさい、今からでも別の学園に移れるように私から言いましょうか?」

「いえいえ!、そんな、私は大丈夫です!学園のことは好きですしお友達も出来ましたから!」

「お友達の事は香重からも聞いたわ、良いお友達が出来たのね」

「っはい!」

「それなら良いの。花絵さんと離れて暮らしているのは寂しくないかしら?たまには気兼ねなく帰省していいのよ?」

「母とは、あの、…あまり一緒に居ると不快にさせてしまうので。今はお手伝いさんが居ますから私が家事をしなきゃいけない訳でもないですし、」

「深雪さん…いえ、今する話題ではないわね、ごめんなさい。それより今日のお買い物の話をしましょう!深雪さんの好きな色は何色かしら?フリルとかレースはお好き?私娘が出来たらそういう可愛い服が着せたかったの!」



あまり母とは関わりたくないというのも答え辛く、言葉に詰まっていると車内の空気は微妙なものになってしまった。しかし美沙子さんはからりと明るい話題へと切り替えて下さり瞬く間に穏やかな空気が戻ってくる。


流石五辻という大きな家で女主人をなさっているだけはあるということなのだろうか。

それとも、お金持ちというのはやっぱり優しいものなのだろうか。

明日から推敲期間です。

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