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「じゃあまた休み明けに教室でね」
「うん、二人とも今日はありがとう」
「いいのよ私も凄く楽しかったわ。また遊びに行きましょう」
それじゃあ、とこの後帰宅する二人と寮の前で別れて部屋に戻るとばたん、と布団に倒れ込みクッションを引き寄せむぎゅーーーっと抱きついた。
あれから桃歌と結唯に勧められるままにあれよあれよと買い物をしてしまい人生で一番高い支払いをしてしまった。
百貨店のお買い物ってあんなに高いの…?
新しい世界を見たような気分だ。
カヌレがベッドの端に飛び乗ったようでスプリングが少し揺れ、暫くしてから体の上を歩く肉球の感触が来た。
「ふにぁあぁ〜〜〜ん」
登頂完了!とでも言わんばかりに私の背中でカヌレが鳴き声を上げる。
今日は一人にしてしまったのでこの子なりに寂しかったのかもしれない、ごろりと寝返りを打ちカヌレを捕まえて首の付け根をもんでやると私の胸の上でぐるぐると甘えた声を出し始めた。
しかし暫くすると耳がピクッと動きどこかへと走っていってしまった。
「何よぉ」
と不満を漏らすと肩にかけたままのバッグから携帯の着信を告げる音が聞こえているの気が付く。
どうやらこの音に反応したようだ。
「あっ、はい、もしもし…?」
『深雪か。私だ、あー…お父さんだ』
「おと…、お父さん…っ、はい!」
ディスプレイも見ずに出てしまったが、電話の相手はお父さんだった。
メッセージは頻繁に来ていたが声を聞くのはこの間の本家訪問の時以来になる、声の様子からすると元気そうだ。
『無事帰って来たようだな。今日は楽しめたか?』
「はい、桃歌ちゃんと結唯ちゃんと新宿と銀座に行きました」
『そうか。楽しかったなら良かった、ちゃんと何か買ってきたか?君の事だから気を使って何も買わないで帰ってきた。なんてことじゃないか?』
まるで見られていたような口振りに驚いてしまう。
「ちゃ、ちゃんと買いました!ノートと消しゴム、あと二人に勧められて色々…」
『ノートなんかは買い物とは違う気がするが…まぁ、なら良い』
「……お金使ったことは、怒らない、んですか?」
『怒る?…深雪はそんなに怒られる様な買い物をしたのか?』
怒られるかと思って色々買ったと話したのだが父は逆に楽しそうに返事をしている。
聞き返せば逆に聞かれてしまい躊躇いつつも返事をする。
「五万円、くらい使っちゃいました…」
電話先でガチャン!と大きな音がしてガサガサッ――とノイズが入ったかと思うとお父さんの咳払いの声が聞こえてきた。
『そ、そうか。いや、済まないうん、その位気にせず使いなさい。何だったらその百倍くらいは使ったって構わない』
「百倍って、五百万!?そんなに使い道思いつかないです!」
『そうか?まぁ前にも言ったようにお金は使わないといけないものだ、特に私達のような高額所得者はな。とりあえず、今日は楽しかったようで安心した』
「はい、とっても楽しかったです」
『次はまた折を見て私とも食事に行こう。それと、これは断ってもいいのだが、母の方が是非深雪と出掛けたいと言っていてな…』
「美沙子様が?ですか?」
『様なんか付けなくていい、私と同じようにおばあちゃんとでも呼んでやれ』
「それは何か、恐れ多いし申し訳ないです…」
『気にしなくて良いんだがな…まあ、追々慣れて行けばいいさ。それと深雪のカードが出来たから後で届けさせる、次からはそれを使いなさい』
「えっ!?」
『それじゃあ私は仕事の続きに戻ることにしよう。また、電話する』
ツー、ツー、と通話終了音がして電話は切られた。
カードが云々のメッセージが来ていたのは確認していたが――
「まさか、あの話、本気だったとは…」
カードに百貨店、有名料理店、なんだか今日もまた一段とお金持ちというものに触れた一日だったように感じる。
本日よりまた載せていきます。
また最新ではないお知らせ前書きを後書きへと移しました、それ以外はいつも通り誤字脱字・細かいニュアンスの変更や文章の厚みをほんの少し足した程度の修正です。
宜しくお願いします。




