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エレベーターを挟み、廊下を少し歩いた先でどうぞ。と言って開かれた扉の奥は小さな会議室になっていて、中には家に居る筈の両親と大きな荷物が用意されているのが目に入ってきた。





「二人ともなんでここに」

「昌輝、貴方って子は…っ!」


泣きながら抱き締めてくる母を受け止めながら困惑の眼差しを父に向けると父の目元もまた赤く涙を湛えていた。


「私が不甲斐ないばかりに…済まない、昌輝。しっかりと教育してやるべきだったんだ。次男だからと甘やかし過ぎたようだな」

「だから皆して一体何の話をしてんだよ!」

「久世の者には昔から、人に仕える者としての心構えを学ぶ為英国の使用人養成学校に通うという伝統があるのをご存じですか?」

「え…」


黙って控えて居た大山さんがそう言いながら1冊のパンフレットを差し出してきた。

それは英語で書かれた寄宿舎の学園入学案内のようで中には”一流の”や”プロフェッショナルとして”等という文章が所々に散りばめられた使用人養成科の説明が書かれている。



「そこは、私が通いまたお前達も通う筈だった場所だ。しかし秀政様が子供を親元から引き離すのは可哀想だと言って下さり自主性を尊重し二人の代からは花房に通って貰うということに落ち着いていた。しかし今回の事で秀政様はもとより大奥様と旦那様がやはり伝統に従うべきだ、とな…」

「てことは俺はなに?これからこのイギリスに行かされる訳?」

「ああそうだ」

「兄貴は?」







父は首を力無く横に振り残酷な事実を告げた。



自分だけが1番重い罰を与えられる、つまりはそういう事だ。


あの時兄に殴られた時点で自分が悪い事をしてしまったのかもしれないと何処かでは気付いていた、それでも俺は立ち止まれなかった。兄貴はいつでも正しくて真っ直ぐて優しくて、俺はそんな兄貴が大好きだった筈だった。

幼い頃は身体が弱かった兄と比べて久世の後継者はお前だと親戚中にちやほやされ、心のどこかで見下していた兄、それをきっと察していながらもしょうがないな。と笑っていつでも手を引いて来てくれた兄。



結果的に用済みになったのは俺だった訳だ。


見計らったように大山さんから手渡されたチケットをひったくると荷物を掴んで両親に背を向け部屋を後にした。

二人が何かを言いかけたような気もしたが俺にはもう聞く気力は残っていなかった。

別に後継者になりたかった訳では無いといえば嘘になる、きっとどこかで最終的には自分が選ばれると楽観視をしていたのだろう。




兄はきっと久世をちゃんと引っ張ってくれる筈だ。


帰ってきたら今まで見下していた事、散々迷惑を掛けた事、それなのに最後まで庇ってくれた事を謝ろう。

謝って許して貰ってそれで…それから先はその時になってから考える事にしよう―――

大変遅くなりましたが続きを投稿致します。

今回は纏まりきらず二話連続になりました、次にもう一話主人公以外の視点からの話を投稿したら推敲期間に入ります。

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