«13»
今居る面子の中でも一番冷静な様子の桃歌の先導で、私達5人は女子寮3階の学習室を貸切りそこで話をすることになった。
昌輝は一人関係ないと逃げ出そうとしていたが女子二人の口車に乗せられ渋々着いてくることにしたようだった。芳樹は先程から気遣うように私をちらちらと見ている、秘密を公にする事になったのを気にしているのかもしれない。
「それでは何かあれば内線にてお呼び下さい」
コンシェルジュのお姉さんが頭を下げて下がると部屋に重い沈黙が降りる。
桃歌は目を閉じて何かをじっと考え込んでいるし結唯は久世兄弟を睨んでいる、兄弟二人は気不味げに俯いてしまっていて顔色は伺えない。
そして私は一人、お誕生日席で板挟み状態だ。
「…それで、どういう事なの」
痺れを切らしたように桃歌が口を開いた。
「どういう事って何が」
「私は深雪に聞いたのであってあんたに聞いてるんじゃないのよ久世弟、さっき言ってた深雪が五辻の関係者だって事についてよ!」
「どうしたもこうしたもねぇ、そのままだ。そいつに聞いたって何も変わんねぇよ!!」
「昌輝、少しは静かに会話を進められないのかい?」
芳樹の声にびくりとなって昌輝は黙り込んだ。
桃歌は私に続きを促し結唯は真剣な眼差しでこちらを見ている。芳樹の方を覗けば頷きで返された、話しても良いと言うことだろうか。
「穂波深雪、これは母の実家の旧姓で本当は五辻深雪。去年の終わりに母が五辻秀政さんと結婚した時、私も連れ子として引き取られて五辻の名前を貰いました」
はぁ……という溜息とやっぱり、という二人の声が耳に届く。
「間違ってたら悪いんだけど、深雪が今も五辻の名前を使っていないのは連れ子だってこと気にしてるから、よね?」
「うん…」
「馬鹿馬鹿しい、だったらなんで引き取ったのって話よ」
「でもそうしないとちゃんとした教育を受けてない私じゃ五辻に泥を塗りかねないって言われちゃったから…」
「ごめんちょっと待って、それ深雪ちゃんに言ったのってもしかして――」
先輩が何かに気付いたように話に入ってきた。
先程まで拗ねこんでいた昌輝もこちらの話に耳を傾けて居る様子だ。
「久世先輩は何かに心当たりがおありのようですね」
「ふーん、五辻って由緒正しすぎてこういうゴタゴタとは無縁のイメージだったけど結構ドロドロしてるんだね」
「いや…五辻というかむしろこれは、」
「うるせぇよ!んな御託はいいんだよ。んで、結局誰が言ってたんだよそんなめんどくせぇ嫌味!!!どうせお前の被害者気取りのでっち上げ、ッてぇ何すんだ暴力女!」
昌輝の言葉を聞いてソファにふんぞり返って聞いていた結唯がノーモーションからの轟速でクッションを顔面にヒットさせた。
いきり立つ彼をものともせず結唯は笑顔で中指を立てて煽り返し桃歌はそれを見てケダモノ相手に下品よ結唯。と窘めている。
「それで、誰だったのそんな馬鹿馬鹿しいこと言ってきたのは」
「久世先輩と久世く…昌輝くんのお父さん……」
やはり、と頭を抱える先輩。
無言で目を見開く昌輝くん。
結唯は久世って五辻の分家だったっけ?と桃歌に確認を入れているし、聞かれた桃歌も呆れたように肯定している。
どこかで先輩達のお父さんが言うことは少し変だなとは思っていたから言えなかった、やっぱり私の思った感情は間違ってなかったのだとみんなの様子をみて気付く。
11話までの文章の手直しをしました。
今回も大きな改変はありません、また時間のある時にでもご覧下さい。