仲直り出来て良かったですね
涼浦から解放され俺も、この二人に連れて店の中に入る。あいつに何度か殴られはしたが、幸い細い腕と体形と九頭竜が途中で助けてくれたおかげで口元から少し血が出た程度で良かった・・・・
それよりも涼浦とざーさんのやり取りが心配だ。涼浦が中を入ると真っ先にざーさんは反応し、少し震えているように見えたが、しばらくすると勇気を出したかのように涼浦に前進し、目を合わせていた。
「ギンカ・・・・・・」
「・・・・はぁ・・・・なんでこんなことで悩んでいたんだろ。うち・・・・」ボソッ
「え?」
「なんなん?咲那・・・・・客の前なのに随分と元気ないし・・・・いつもの元気はどうした訳?」
「ギンカちゃん・・・・どうしたの?なんか雰囲気が違うんだけど」
「いやいやいやいや、うちはいつ通りだって・・・・つーかアンタら、揃いも揃ってその恰好?明らかにオカシイッショ。ほーーーうこれが前言ってた、変なアニメのコラボ服って訳か・・・・・案外良くね?うちは絶対に着ないけど・・・・・つーか、今日っていつもより店の雰囲気がおかしいけど、なに?誰かの貸し切り?それじゃ好きに頼んでいい訳・・・・・」
「うん・・・・・一応ね・・・」
「ラッキー好きなの選んじゃおうっと・・・」
ん?どうした涼浦のやつ、なんかさっきと比べてなんか人格が変わったかのようにスッキリしてるんだけど・・・これ同一人物だよな・・・・・それか、混乱しすぎて、乱心したか・・・・
どの道このままだと大惨事が起きるのは間違いないな。
「おい、涼浦、その前に花沢から伝えたいことがあるようだけど聞いてくれよ・・・」
「は?なにアンタ命令してんの?友達じゃない癖に馴れ馴れしいんだけど」
「あ?てめぇ舐めてんのか・・・」
「まぁまぁ二人共抑えて・・・それよりざーさんの話聞きなよ・・・」
「ギンカ・・・・ゴメン嘘をついて・・・・・・本当はずっと前に言うべきだった・・・・・私・・・・私本当はエロゲが大好きなの・・・・特に触手プレイとか痴漢プレイとか汚いものに触れられて女の子が嫌らしく顔を歪めて興奮する表情に興奮してしまう・・・・・ド変態なんです・・・・もしこんな私で良かったらもう一度親友でいてください・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
なんだぁーーーーーーーーーー!!!!!その史上最低の事故紹介は・・・・俺は勿論、客、従業員は勿論店全体が凍り付いてるんだけど・・・・
運よく客が松村さんの関係者で良かったけど、これがなにも知らない一般客だったら確実にテロだぞ。
「・・・・・・・なに!!!!ギンカなぜ唐突に下ネタ発言してるわけ?意味わかんないんだけど」
「へ・・・・・・それだけ」
「は?それだけってどういうわけよ。全くアンタは相変わらず何考えてんだか、少しは親友であるうちの気持ちにもなれっての・・・・・」
「・・・・・・・ギンカ・・・・・今親友って言ったよね。間違いないよね。優子」
「うん・・・・間違いない。親友って言ってくれた・・・」
「・・・・・・・・いや・・・・・今のは聞き流して・・・・アンタらの聞き間違いだから」
「みんな聞いたよねーーーーーーー」
「聞いたーーーーー」
「バッチリと」
「ギンカーーーー正直になっちゃいなよ!!!」
「は?うっさいし!!!それよりアンタら全員従業員なんだから、サッサとお客様であるうちに積極しろよ・・・・」
「うーーーーーっす」
「なんだよ、涼浦、お前も意外なとこあんだな・・・・少し見直した・・・」
「何それ?うちはただ咲那がいないと周りがお通夜状態だから仕方なく呼んだだけだし・・・・」
「そういうことにしといてやるよ・・・・」
・・・・・・・・・まぁなにはともあれ、涼浦がなんとかざーさんと和解できて良かったな・・・
「はい、ご注文のパスタですね・・・・毎度ありがとうございます♡」
「お姉さん・・・・沖田総司ちゃん風のスマイルお願いします」
「ええ~~~~~~沖田総司?なんですかそれ・・・ん~~~~~~~わかんないやーーーーこれでどうですかーーーハイポーズ!!!」きゅん
「萌え~~~~~~~~~~」
・・・・・・・俺は現在このファミレス内をこっそりとざーさん達の様子を見ているが改めてこの店内を見ると、涼浦グループの女子以外の従業員の中には、協力の為に呼んだとはいえ、仲間そっちのけで真面目に接客してる子もいるな・・・・・てか、さっきの女の子、どう見てもうちのバイトの子じゃないけど・・・・なんか偉い可愛い子が入ってきたな・・・・
幕クロについての知識はにわかまるだしだけど、なんか護って欲しい雰囲気がこっちまで漂ってくるなよし、ここは・・・・先輩である俺が声をかけるか・・・・
コン!!!
その時、俺の後頭部からなにか叩かれる感覚が走った。俺はすぐその方向に目をむくと、コラボにも関わらず普通の制服で、接客している立野でしかも無表情でその右手にある伝票ホルダーで攻撃をしていたのだ。
「痛~~~~~~~~~ってお前か、立野」
「何やってんの大河君、流石にセクハラ的行動は止めて欲しいんだけど・・・」
「これがセクハラに見えるか・・・・俺はただあそこにいるバイトが本能的に可愛いと思ったから行動をしたまでだ・・・・」
「それ、九頭竜さんの目の前で言えんの・・・」
言えません・・・・・言ったら間違いなく、殺される・・・
っというかなんで俺は、九頭竜以外の女には、興味がないのになんでかその店員にちょっかい出したい気分だぞ・・・・なぜだ・・・・・それは俺にも分からない・・・
「ほら、お水・・・・・・随分と銀華に殴られたようね・・・・」
渡された水を一気に飲み干し、なんだかスッキリと感じた。
「おう・・・・・・ありがとうな見てたのか・・・・っというかお前こそ、せっかく涼浦とざーさんが和解したのに一緒に輪に入らないのか・・・」
「別に・・・アタシはこういうありきたりの友情ドラマは好きじゃないから・・・・」
随分お前も暗い趣味してんだな・・・・と内心思いながら俺は本題を出す。
「助かったよ・・・・あの時、日曜日、お前涼浦側についてたけど本当は陰で涼浦をつけて九頭竜にその情報を流したんだな」
「さぁ何の事だか」
立野は見え透いた嘘をつきごまかしていた。
まったくあの時は本当にざーさんの事を軽蔑して、俺までこいつの事幻滅したからな・・・・まさかこいつに一本取られるとは思わなかった・・・・
おまけに・・・
「それに・・・・あの二人が仲直りする為に、お前らのグループに・・・・・頭を下げてまで、ここであのコスプレ衣装を着ながら一日バイトを頼んだんだよな・・・・」
「なんでそこまで知ってる訳・・・・・もしかして九頭竜さん?」
ご名答だ・・・・・俺はカッコよくガッツポーズする。反応は当然無反応だ・・・
「・・・・・・・・・そう、まぁ別にいいけど」
「それにしても以外だな・・・・あのグループの中でもっとも冷静沈着なお前が一番友情に暑いなんてな・・・・思わなかったよ」
「アタシは、当たり前の事をしただけよ・・・・ほっといてもどの道アンタか九頭竜さんが動くでしょ・・・・・・・・その行動で結末がどうなろうと関係ないけどね・・・・」
「なにを言ってんだお前・・・・・」
「・・・・・・言葉通りよ・・・・アタシは九頭竜乃希亜にしか興味がないのよ・・・・」ボソッ
今なんて言った・・・・・後半小言で聞き取りにくかったけど、九頭竜にしか興味がないだと?さっきから訳が分からんぞ・・・・
「それより、こんな所でいて大丈夫?相方は随分お待ちだけど・・・」
ん?立野の指をさした場所に目を向けると、いつの間にか九頭竜が店の外に出ていて、その窓越しにいるんだけど、そして『今からこい』と言わんばりに指で俺を誘ってるようだが・・・・
もしかして俺?なんかやらかしたか?心当たりあり過ぎて逆に分からんぞ・・・・
「彼女が随分とお待ちだからサッサと行きなよ。後はなんとかするから・・・・」
「すまん・・・・」
立野に軽く頭を下げ、俺は九頭竜と会う為に店の外に出た。




