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男は何を差し置いても優先しなきゃいけないことがある。

ここは、実力がものを言う世界。剣と魔法が実在する、ファンタジーな世界の物語。勇者や英雄が切磋琢磨しているそんな世界の片隅の、ちょっとした、日常の話である。


「え、お父さん、本当!?」


「ああ、本当だ。今日から門の外に出てもいいぞ!」


「うわああい、ついに僕も冒険者に・・・!」


7歳の誕生日。僕、サッチはついに、お父さんに冒険者になる許可をもらった!昨日、『最高のプレゼントを用意してやる』とか言っていたけれども、それって、これのことなのか!これでついに、いろんなところに冒険に行ったりとか、強い魔物を倒したりとか、できるわけだ!楽しみ!!お父さんの冒険譚を聞いて、ずっとうずうずしてたんだよね!


「お父さん、ありがとう!大好き!」


「お父さんもサッチのこと、大好きだぞ!さ、サッチに合う武器を見つけて、それからギルドに行こう!冒険者登録をするぞ!」


僕は思わずお父さんに抱きつく。今まで、練習用の、剣先を潰してある武器しか使わせてもらえなかったから、とてもうれしいのだ。それに、何より、お父さんが僕に武器を選んでくれる!とてもうれしかった!サッチの武器はなんだろうか。クレセントアックス、っていう武器がとってもかっこよかったなあ!お父さんが使う、刀も美しいんだけれど、でも、やっぱり、大柄でかっこいい武器を・・・!


「ぼ、ぼく、クレセントアックスが・・・!」


「まあ、サッチは身の丈も小さいし、細身だし、それに今までで一番上達したのが短剣だからな。短剣がいいだろうな。斧は・・・うん。もうちょっと筋肉を、つけないとな。それに、サッチが斧を使うのは・・・ちょっと・・・」


「うっ・・・」


そうなのだ。一応、斧の練習をした。しかし、斧は全然上達しなかった。なぜかって?僕は一般的な7歳と比べて、細身で、身の丈も小さい・・・って、これは、お父さんの遺伝子だよ!

まあ、そのせいで、斧に振り回されていたのだ。でも、あこがれるじゃん!?ムキムキで、片手で斧を、片手で好きな女性をこう、持ち上げるって!勇者ユリウスもそうしたらしいし!・・・でも、僕じゃあ、無理かなあ・・・。


「あはは、そんな面するなって!もしかしたらミラクルが起こって身長が伸びたり、筋肉むきむきになったりするかもしれないだろう?」

「・・・でも、お父さんも、お父さんのお父さんも、みんな細身なんでしょ?」


しかも、ミラクルが起って、ってまるでミラクル起きないと身長が伸びないみたいな・・・。


「まあ、そうだな。でも、あれだぞ?細身だから良いところもあるぞ?スピードなんてお父さんについてけるやつは誰もいないしな!」

「この町の一番の実力者だしね!」

「んん・・・一番、とは言いづらいが、五本の指には入るだろうな!」

「さすがお父さん!」


そうなのだ。お父さんはこの町で五本の指に入る実力者なのだ!お父さんの友達の勇者ユリウス、賢者のサトル、拳闘士のナックル、麗しの癒し手のヒールさん、そして、僕のお父さんである!

 そんな話をしていると、いつの間にか武器屋についたようだ。顔なじみのカジさんがよっ、といいながら出てくる。


「どうした?シノビ。この前武器を新調したばっかじゃねえか。・・・ん?お、サッチじゃねえか!何だ、シノビ、せがれを一緒にここに連れてきたってことは?」

「ああ、そうだ。今日、サッチが10歳になってな。前々から冒険者になりたいって言ってたし、基礎もできてきたし、そろそろ冒険者をさせようかと思ってな。」

「そりゃあよかった!サッチの細身で身長だったら、短剣がいいな。・・・どうした、坊主?具合悪いのか?」

「・・・いえ、大丈夫です・・・」


別に、暗に身長低いって言われて落ち込んでるわけじゃないんだから!それに、まだ成長中なんだから、これから伸びるかもしれないし!


「そうか、興奮しすぎて疲れたのか?あんまりはしゃぎすぎんなよっと。ほれ、坊主にはこれが良いんじゃねえか、シノビ。」


そう言いながらカジさんは武器屋のところからきれいな短剣を取り出して見せた。純白に輝いてて、柄はどっしりとしている。ちょっと重そうだが、持ってみるとあまりの軽さに驚いてしまった。刃はちょっと触ってみるだけでもすぱっといきそうな雰囲気。さすが、カジさん。


「ん。そうだな…。変な癖もないみたいだし、それに性能もいい。さすがだな、カジ。おまえの作る武器はほんとすげえよ。」


どうやら、お父さんのお眼鏡にもかなったようだ。すると、カジさんは誇らしげに胸を張って、言った。


「たりめえだ!こちとら、命かけて作ってるからな!」

「そうだな、おかげでいつも助かっている。んで、いくらだ?」

「そうだな、坊主の旅立ちってことで、短剣入れもつけて銀貨1枚ってのはどうだ?」

「お、助かる。じゃ、これはもらってくぞ、カジ。またな」


お父さんは銀貨をカジさんの手のひらにぽん、とおいて、さっさと出て行ってしまう。慌ててカジさんにお辞儀をして、追いかけると、後ろからカジさんに声をかけられた。


「まいど!じゃあな坊主、気張れよ-!」

「カジさん、ありがとう!がんばります!」


手を振る。鳥たちがピーチク言って、とても気持ちのよい朝だった。




「ほれ、おまえの相棒だ。大切に使ってやれよ?武器の手入れは前、教えただろう?」

「うん!」

「それでは、ここからお父さんとおまえは別行動だ。」

「…えっ?」


お父さんが耳を疑うようなことを言う。いま、なんて…?


「近頃、また魔王が復活しそうになっているらしい。今まではおまえを育てるためと断ってきた。しかし、最近、魔物の活性化がひどくなっているらしくてな。ギルド長から直々の命令が下ってしまった。おまえを連れて冒険に出たいが、正直、おまえをかばって、更に魔王を倒すなんてことは俺の実力不足でできそうも無い。ということで、7歳の誕生日の朝まで、待ってもらってたんだ。…すまんな。本当は、お父さんも一緒におまえと冒険をしたかったんだが。」


つまり、僕は足手まといということだ。いや、そりゃそうだ。まだ冒険もしたこともないピヨピヨのひよっこが、超上級者の人たちと混じって戦闘できるかと言ったら、それは無理な相談だろう。


「お父さんの実力不足じゃないよ!それに、大丈夫!僕もそろそろ、自立したいと思ってたんだ!」


お父さんを無事送り出すために、頑張って言葉を紡ぐ。思ってもないことを言う。本当は、一緒に冒険したかった。したかったけれど、しょうがないのだ。ならば。


「ぼく、だから、腕を磨いて、五本の指に入る人たちと一緒に冒険できるぐらい強くなる!頑張るよ、だから!そのときは、一緒に冒険して、お父さん!男の、約束だよ!」

「ああ、そうだな。約束だ!それでは行ってくる。なにせ、長い旅になりそうだ。その道中、仲間をくわえることもよくある。だから、待ってるぞ。」

「…うん、頑張る!」


そう言ってお父さんは魔王討伐の旅に、出てしまった。…ぼくは、泣かないぞ!お父さんの子供なんだ、泣くわけがない!僕は頑張って我慢をして、そして、ぎゅっと拳を握って、ギルドへと向かった。




















「ん?坊や、見ない顔だね。冒険者登録かい?」

「はい!」


とても大きな、石造りのギルドの中に入ると、耳がとんがっている、エルフ族のきれいな女の人が迎えてくれた。


「わたしゃ、このギルドでギルド嬢をしている、ジルだよ。なんかわかんないことがあったら、わたしと、そこで掃除をしているジミコに聞きな。」

「は、はい?」


そこ、とジルさんが指を指した先には、メイド服を着て、赤髪でもっさもっさしている、瞳すら見えない、大きなめがねをしている女の人がいた。


「あ、はい。ジミコです。このギルドでお掃除をする仕事をしています。以後、お見知りおきを。」

「あ、その…。」


その容姿、雰囲気。そして可憐な声に僕は一目で恋に落ちた、と言っても過言ではない。お父さんごめん。男の約束、果たせそうにないや。やっぱり僕、この町にとどまる。魔王討伐とか、お父さんと冒険とか、そういうのよりも、彼女と一緒にいたい!

僕はあっさりとお父さんを捨てることを決めた。やっぱり男の子はここぞと言うときに決断すべきだもんね。お父さんもそう言ってたし。


「っ、サッチ、です!きょ、今日は冒険者登録をするために、このギルドに来ました!えっと、と、得意武器は、た、短剣です!でも、将来的にはクレセントアックスを扱えるようになりたいな、とか・・・」

「クレセントアックス、ですか?」

「はい、あの、刃渡りが三十センチ以上もある、その、めっちゃ大きな斧で、その。」

「ああ、いや、大丈夫ですよ。わかってます。ただ、その、なんというか。私も、クレセントアックス、好きで。」

「ほ、本当ですか!?」


なんと、ジミコさんは僕の同士だった!ジミコさんもクレセントアックス、好きなのか!あの、厳つい見た目をわかってくれる人がいるだなんて!


「あー、ゴホン。いいかいね?」


そんなとき、ジルさんが咳払いをした。


「そのう…。玄関前だと邪魔になるし、登録するならとっと、してほしいんだけどねえ。」

「はっ、す、すいません!」


そうだ、みんなの邪魔になってる!なぜか、みんなこっちを凝視しているし、僕は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にする。


「まあ、いいさ。さてと、冒険者登録をするよ。」

「は、はい!」

「んと、おまえさん、文字は書けるかいね?」

「あ、はい!」


もちろんだ、お父さんにこれでもかと言うぐらい厳しく教えてもらったんだからな。文字の読み書きをできる、できないでは差が大きいぞって。


「こんなに小さいのに、偉いねえ。さて、これが用紙だ。書いてもらおうかね」

「は、はい!」

「これは、フェアリーコントラクトによって縛られている特殊な紙だよ。このギルドの制約を破ろうとしたり、悪事を働こうとすると、一回目はとてつもない不運に見舞われ、二回目は常時不運になり、三回目は死ぬ。まあ、そのことをよく理解した上で、この契約書にサインしな。まあ、坊ちゃんは悪事を働きそうにはないけれどねえ。」

「ふぇ、フェアリーコントラクト…?」


て、なんだそれ。


「ああ、坊やは全然知らないのかいね。私の力じゃ。たいていのギルドでは、フェアリーコントラクト能力持ちをギルド嬢にするんだよ。そんでね、フェアリーコントラクト、っていうのは、この紙に書かれている制約を絶対に守らせる能力さ。」

「の、能力…」


って、何だ…?


「坊や、能力もしらないのかい!?お父さんとか、お母さんとか、後は、教会とかで普通、教えてもらえるもんだよ!?」


え、おとうさん!?


「し、知らないです…」

「どこの馬鹿だろうねえ…。全く。まあ、親が戦闘狂だったら教えないで、自分で感じろ、って感じなんだろうがねえ。たとえば、シノビとかねえ」


それ、うちの父親です。


「まあ、能力はギルドカード作ったら判明するからいいだろうよ。まあ、とりあえず、規約をよく読んで、ギルド登録をしな。」

「はい!」


ええっと、何々。簡単にまとめると、無意味な人殺しはだめ、所属ギルドの方針には従うこと、まあ、このギルドの方針は自由らしいので特にないらしい、あと女性には優しく、だった。


「えっと、盗みはおっけいなんですか…?」

「何言ってんだい、坊や。基本的に冒険者は魔物から秘密の薬とか、体の一部とか、盗んでるじゃないか。盗みだめ、と制約に書いたら、そこまで反応してしまうよ。」

「あ、はい、そうですね・・・。」


身もふたもないことを言われてしまった。


「それより。後がつかえてるんだから、全部読んで納得したんなら、さっさとサインしな。」

「あ、はい」


さてと。サッチ、と書いて…。

すると、突然紙が光り輝いて、僕の右手首に絡みついて、ブレスレットになった。


「えっと、これは?」

「それが、ギルドカード兼、誓約書だね。これがついている限り、おまえさんはギルドの庇護下にあるが、それと同時に制約を破ったら、罰が下る代物だよ。」

「す、すごい」

「とりあえず、冒険者登録、無事すんでよかったね。まあ、簡単にギルドの説明でもするかね。」

「あ、おねがいします。」

「と言いたかったが、ジミコに頼んだ方がいいかねえ?」


ジルさんはいたずらっ子みたいな目でこっちを見る。あ、はい。その方向でお願いします。無言で何度もうなずくと、ジルさんはおもむろに立ち上がって、ジミコさんを呼んだ。


「ジミコ!わたしゃ、ちょっと忙しいから、このひよっこ坊やにギルドの仕組みを教えてやってくれ!」

「あ、はい」


そう言うと、ジミコさんは、


「こっちのテーブルで話しましょう。」


と、ギルドの休憩スペースに僕を連れて行ってくれた。その間、穴が開くぐらいにギルドの先輩方に見られる。なんだ、何だ!?ジミコさんって、このギルドでやっぱりモテモテ!?こんなひよっこの駆け出し冒険者がうかつに話しかけてはいけない存在だったとか…!?


「えっと。サッチ、くん。大丈夫ですか?」


ちょっと考え込んでいた僕をのぞき込む、ジミコさん。そ、そんなあ。顔、近すぎて、僕、のぼせちゃいますよ・・・!!


「あっ・・・。」

「えっ?」

「サッチくん、鼻血が。」

「えっ!?」


な、なんで!?マジでのぼせたか、僕!?


「えっと、ハンカチをどうぞ、サッチくん。」


そう言って、差し出したのは、真っ白なハンカチ。いやいや、そんな真っ白なハンカチを僕の血で汚すなんてこと、できないよ、ジミコさん…!!


「そ、そんな綺麗なハンカチ、受け取れな・・・うぐっ」

「し、しんじーん。う、受け取れって、ほら!ジミコ様のご好意を無駄にするんじゃねえ!」


無駄に暑苦しいおっちゃん先輩がしゃしゃり出てきて、ムキムキの筋肉を僕の肩に乗せながら、ハンカチを僕の鼻に押し当てた。やめろ、ムキムキはあこがれだが、そういう意味じゃなくて、自分がなりたいだけだ。むさ苦しくて、暑苦しいおっちゃんに触れたいわけじゃない。それに・・・


「ああ、す、すいません、ジミコさん!は、ハンカチを汚してしまって・・・!」


どうしよう!ジミコさんのハンカチを、あの純白のハンカチを汚してしまった!


「大丈夫ですよ、サッチくん。私、クリーン使えますし。ね?」


クリーン。確か、めちゃくちゃ綺麗になる魔法だった気がする。でも・・・。


「後で、お詫び・・・むぐ」


むさっくるしいおっさんが僕の口元を押さえる。なんでやねん!?てか、おっさんに押さえられたくないぞ!こんな節くれ立ったごつごつの、いかにも戦い慣れしてます、みたいな手で押さえられたくない!


「ぼ、坊主。そんなことよりも、聞くべきことがあるんじゃないのか?ギルドのこととか、ギルドのこととかな!」


やけにギルドのことを聞かせたがっているが、ギルドのこと以外を聞いたらなんか、また口をふさがれそうなので、渋々、


「あ、はい。その、ジミコさん。ギルドのことについて、伺っても良いでしょうか?」


と聞いた。ほんとう、なんなんだこのおっさんは!!!


「はい。そうですね、ギルドにはランクがあります。最底辺はGランク、最高がSSランクですね。今、サッチくんはGランクですね。そして、シノビさんとか、勇者とかはSSランクにいますね」


そんなに離れているのか。天と地の差だなあ、まさに。


「GランクからFランクに上がるためには、Gランクのクエストを十回連続成功、もしくは、Fランクのクエストを五回連続成功ですね。」

「そうなんですか…。連続成功かあ…。」

「ええ。まあ、最初のGランク、Fランクだけ、連続成功となってます。まだ、信頼できないので。」


まあ、当たり前か・・・。そして、隣にいるおっさん。そろそろお仲間のパーティーに戻ってください。隣で、ふんふんとか鼻息荒く頷かれると、ちょっといらってきます。


「そして、どのランクも共通ですが、依頼を指定の一定数こなした後、昇格試験があります。」

「昇格試験、ですか・・・?」

「そうだぞぼうず、懐かしいなあ、俺も最初は昇格試験って聞いてびくびくしながら受けたもんさ!」


誰もあなたが最初に受けた昇格試験の話を聞いてもいないし聞きたいと思ってないっす。

ジミコさんはおっさんの話をスルーし、自分の話を続けた。か、かっこいい・・・!


「ちなみに、自分の今のランクは、ギルドカードで確認できます。ちょっと、オープン、っていってみてください。」

「あ、はい。《オープン》っ!?な、なんか、ま、魔法使った感じがするんですが…。」

「はい。オープンは魔法ですからね。MP消費は全くありませんので安心してください。えっと。さて、開きましたか?」


あれ?ジミコさんからは見れないのだろうか?


「坊主。ギルドカードは本人しか見れないんだぞ、基本的に。まあ、パーティーメンバーだったら了承があれば見れるがな。」

「はあ。」


おっちゃんが隣にいることはあきらめて、さっさとギルドカードを見ることにした。


―――――――――――

種族:人間(?)

名前:サッチ(10)

称号:見習いさん

ランク:G


Lv. 1

ステータス:

HP 1200

MP 440


能力:ポジティブ

   ラッキー

―――――――――――

これが、能力かあ。ポジティブって、なんぞ?


「あの、能力よくわかんないのがあるんですが?」

「ああ。そうしたら、その表示されている文字をタップしてみてください。」

「あ、はい」


タップしてみると、詳細、と書かれた物が表示された。



――――――――――――

ポジティブ

詳細:

なんだか、いつも前向き。

悪いことを考えなくなる。

――――――――――――



んん。おう、なんとも言いがたい能力だね。まあ、悪いことを考えなくてすむのは良いかもしれないけれど…。どれどれ。もう一個の方は…。



――――――――――――

ラッキー

詳細:

周りのおかげで、危険を

完全に避けることができる。

あとは、おまけがある。

――――――――――――



おまけってなんだよ!?


「どうですか、なんかわかりましたか?」

「あ、はい!」


勢いよく返事してしまった!まだわかんないところあるのに!!


「よかったな坊主!それじゃあ、おっちゃんたちと、薬草狩りをしよう!」

「え」

「それはいいですね。ドドンさんとでしたら安心して薬草狩りできそうですし。」

「じ、ジミコ様にそう言われるのは大変恐縮です・・・」


ビク、とドドンさんと呼ばれた人は肩をはねる。なんだ、この人もライバルなのか?!!


「それでは、私は掃除に戻るので。お二人のご武運を、お祈りします。」

「は、はい、ありがとうございます!」


そう言って、ジミコさんは去って行った・・・。ああ、ジミコさん・・・。

「それじゃあ、坊主。一緒に薬草狩りをしような!」

「あ、はい」


まあ、悪い人ではなさそうだし。邪険にする必要も無いか。父さんも最初のうちは、だれか上級者と一緒にクエストをやったほうがいいって言ってたしね。そんな思いで、僕は、ドドンさんと一緒に薬草狩りをすることになってしまった。ドドンさんはいつの間にか薬草狩りのクエストを持ってきていた。ほんとう、いつの間にだよ!!というか。


「あの、ドドンさん。」

「なんだ、坊主?」

「パーティーメンバーの方々はよろしいんですか?」

「ああ。あいつらは別にパーティーメンバーじゃないぞ?」

「あ、そうなんですか」

「ただ、ジミコさんのお掃除がギルド内で発生しないようにだな、頑張る隊ではあるかな・・・。」

「はあ」


えっと。どういうことだ。ジミコさんのお掃除はお仕事のはず。なのに、仕事をさせないということは、彼女をそれだけ溺愛しているということか。・・・僕も、負けるわけにはいかなそうだ・・・!


「ぼ、僕も頑張ります!」

「え。お、お前さんもか!?」

「は、はい。」


なんか、不可思議なことを言ったか?要はジミコさんのファンクラブなんだろう?


「・・・そうか。お前。わかって、俺たちを試していたんだな。」

「え、はい」


何のことかよくわからないが、とりあえず、うなづいておく。


「坊主。今日、クエスト終わったら、おごってやる。何食べたい?」


結論。ドドンさんはいい人だった。


「カレーライス食べたいです!!」


クエストが終わった後、めちゃめちゃカレーをおごってもらった。



読んでくださり、ありがとうございました。

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