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RANKING  作者: 宝 森助
序章
2/2

数字の階段

序章第二部です!

序章はこれで終わりとなります。

第一部、第二部と文字数がかなり少なめになっていますが、一章からは、一話あたり約5000文字を目安に書いていきます。

  まるで、大時化の海の上で行うチェスのように荒れ狂う世界情勢と、それに振り回される哀れな哺乳類たち。

  それが、今のこの世界だ。

  九つしかない国が、その牙と角を使って、或いはそれらを使わず頭を使って、今行われているバトルロイヤルを勝ち抜こうとしている。


  この世界には全世界共通の制度がある。それは、『RANKING』制度である。

  名前の通りランキングであることは間違いないが、実際はもっとえげつない。

  この世界の人々は、この世界に産み落とされたその瞬間から、右腕に数字が刻まれる。もちろんランキングだ。

  総人口80億人、その全てに順位が付けられる。

  筋力や体力、はたまた知識や知恵、或いは、財力でも権力でも、そして、魔法でもいい。

  個人に備わるそれら全てを総括した力、『総合力』が、そのランキングの評価対象だ。

  つまり、右腕を見れば、その人が自分より下か上か、否、下等か高等かが分かる。

  ランキングが高い人はいい。40億位よりも上ならば比較的高いと言えるだろう。

  但し、40億位以下は比較的低いと言われる。それで罵られることはないが、社会的なサービスの一部が有料になる。

  さらに酷いのが、75億位以下、通称『赤腕』である。

  医療や福祉などもってのほか、教育、さらには人権までもが有料となる。

  つまりは自分の存在を国から購入しているのだ。

  そしてその差別とも言える赤腕への酷い扱いを助長する要因が一つ。

  下位6.75%つまり、75億位以下は腕に刻まれる数字が赤くなる。

  これが赤腕と呼ばれる要因である。通常青色で刻まれるその呪いは下位6.75%に突入したその瞬間その色を変える。

  赤毛の人は差別されてきたし、赤信号は人々を立ち止まらせる。鬼は大体赤色で、何より鮮血を思わせるほどに不気味な色。赤点を取れば恥ずかしくて顔が赤くなり、赤字で名前を書けば不幸になるというジンクスまである。

  右腕の数字が赤いというだけで罵られる。

  考えてみれば当たり前である。

  普通に生きていれば、そこに赤色が浮き出てくることはない。

  人より何かを頑張ってこなかったという烙印を押されているようなもの、であれば差別を受けるのは因果応報、個人の自由ですらある。

  しかし、自体はそう簡単ではない。

  赤腕となるべくして生まれてきたような赤子もいる。

  家庭が貧しかったり、魔法を発現出来ない家系に生まれたり、理由は様々だが、そこから這い上がるには奇跡でも起きない限り不可能に近い。


  例えば赤腕から這い上がった人の中には、運良く強力な魔法が発現した人、宝くじに当選した人、上位ランカーに救われた人などただ幸運に見舞われただけの人もいる。そういう意味では運も実力の内なのだろう。

  ただやはり、その中でも特に多いのは強力な魔法の発現であろう。

  『魔法』というものは、その発現に長い年月や強い意志が必要とされる。

  ただ馬鹿みたいに生きてるだけで魔法を発現するものも居れば、ある特定の状況下において、その状況を打破せんがために突然発現するものもいる。

  前者の場合はしょーもない魔法が発現することが多いが、後者の場合はその限りではない。

  まさに、神から与えられた進むべき道。

  地獄に差す一筋の光。

  ならば縋るしかない。抗いながらも必死に掴んで、耐え忍びながらひたすら上へと登っていく。


  ここに少年が一人、のしかかる闇に抗う術もなく、ひたすら内面を補強するだけの生活を繰り広げていた。

  しかし、そんな人生も終わりを迎える。

  襲いかかる数字の重圧の中、芽生える異常な意志と冗談のような魔法を身にまとった白の少年は、自身を突き動かす見窄らしい動機の風に吹かれながら、険しい山を登っていく。


  到達した頂上はどんな景色だろうか。果てしなく広がる雲海にどんな思いを馳せるだろうか。


  今はまだ分からない。


 


次回は漸く本編に物語が進行します!

今回は、この物語で描かれる世界についてのお話でした。

自分という存在が世界において何番目かなんて考えたくもない話です。


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