少年に潜む闇
初めまして宝と申します!
序章のみ先行公開となります!
どうぞ、この世界に浸っていって下さい!
泥を啜ったことはないが、涙を呑んだことは幾度もあった。
俺は何時も誰かに笑われ、使われ、弄ばれていた。
その度俺の中の俺が何処か少し離れたところから、客観的に俺を眺めるんだ。
(俺って情けねぇなぁ···)
さて、この気持ちはどっちの気持ちだろう。表面で燻ってる俺なのか、深淵で冷静に覗いてる俺なのか。恐らく後者だろう。だってそうじゃないと、俺が俺でなくなってしまう。
慣れとは恐ろしいもので、痛みなんか感じなくなるようだ。
殴られて蹴られて、時には罵られて貶されて、身も心も痛い痛いって悲鳴を上げてる筈なのに、悲鳴を上げてる自分を窓から覗いてる俺がいるんだ。
ほら、いまもこうして覗いてる。
(俺って情けねぇなぁ)
窓の外の俺が考えてることはいつも単調で、実際に苦しんでる自分を俯瞰から見て、こうやって自責の念に苛まれるだけ。
俺って情けねぇなぁ。
名前は志水しろ、歳は18、もちろん男。
『しろ』という名前は、母さんに付けてもらった。
清廉潔白に生きるんだよ。
母さんの口癖だった。
あと母さんの言葉で覚えてるものがもう一つある。
人を笑わず、でも常に笑顔で、思いやりをもって人と接すれば、幸せになれるんだよ。
素晴らしい言葉だよ。でも俺には響かない。
だって俺を笑うヤツらはあんなに楽しそうだ。ある意味笑顔を絶やさないが、思いやりなんて欠片もない。
母さんの生き方を真っ向から否定するような存在がこうして存在してるんだ。だから響かない。
ストレスかな?母さんが居なくなったこの三年間で俺の髪は全部白くなった。
母さんといっしょだよ。
だって仕方ないよね。今のこんな世界じゃ、否が応でも自分の弱さを認識させられる。
自分より下のやつもたまにいるけど、そいつらをみて少し安心する自分にも飽き飽きしてる。
だって、すぐ周りを見渡せば別世界。
みんな俺らなんかよりずっと上だ。
力が欲しくてたまらないよ、母さん。
ううん、幸せになれる力が欲しいんじゃないんだ。
俺が欲しいのは···。
人を不幸にできる力なんだ。
皆様にはこの少年の闇が垣間見れたと思います。
第一章では、この少年の内面にスポットを当て、描いていきます。
お楽しみに!