表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

Epilogue

 薄暗い宿屋の一室。

 仄かな灯りの一つはベッドの脇に置かれたカンテラのそれだけ。

 そして一つのベッドの上で起き上がる影が一つ。

 彼女の名前はローグル・レイ。かつて三武将と呼ばれ恐れられていた女だ。彼女は薄手のチュニックを身に纏い、寝るのに楽な格好だった。

「寝たか?」

 声をかけたのは、もう一つベッドを挟んだ位置に横たわるゼノ・レーク。彼もまた三武将と恐れられた者であったが、先の決戦でとある少年に敗北して心に空虚な穴を空けていた。彼もローグルと同様に楽な格好で、薄手なシャツにゆるいズボンだ。

 そして彼女はコクリと頷いて意思を示す。


 基本的に彼女は口を開く事が少ない。それは暗殺者という役職からなのだろう。

 それが今日の彼女は何かが違った。

「えぇ。疲れていたようね」

 ゼノは僅かながら驚いた。彼女が女性らしい言葉遣いをするのは初めて聞いた。

「どうしたの?私が喋れないと思ってたのかしら?」

「いや、そういうワケじゃねぇけどよ…………」

 長く艶やかな黒髪は寝る為に後ろで縛っており、それが更に妖艶さを醸しだしていた。

 ローグルはベッドから降り、少女の布団を掛け直すとゼノのベッドに歩み寄る。そのままゼノに覆いかぶさる形でゼノのベッドに入る。

「なんだ今日のお前はえらく饒舌だし積極的だな」

「今日助けに来てくれた時うれしかった。なんだろうね、この気持ち」

 ローグルは頬を染めて更に体を寄せる。

「俺も妙な気持ちがある。あの子供ガキに関わった時からだ」

「私はあなたと関わった時から……」

 ローグルは更に身を寄せ、ほぼ抱きつく形になり、ゼノの耳元で静かに囁きかける。

「(私の名前は本当の名前ではないの)」

「(分かってた。お前ぇみたいな奴は本名を明かす感じじゃねぇもんな)」

 ローグルは薄い笑みを浮かべた。

「(今から教えるね。私の名前)は」


「(リーナ・アリスン)」


「(そうか……)」

 対するゼノの返事は淡白なものだった。

「(それも嘘なんか?)」

「(うぅん。これは私の本当の名前。あなたにだけ知って欲しかったの)」

 ローグル改めリーナは少し体を離し、ゼノの眼を見つめた。リーナはゼノの真紅の眼を見つめていたかった。自分の心が熱くなれるその眼を。

 しかしゼノはそうさせなかった。両腕をリーナの背に回し、強く引き寄せた。

「(どっちがお前の本名でも、俺たちの関係は変わらねぇ)」

「(それって期待していいのかしら?)」

「(さぁな)」




 とある宿屋の薄暗い一室。

 そこに居たのは決戦に負けて心にぽっかりと空いた者が二人と、奴隷として扱われた一人の少女が一人。

 彼らは心に空いた空虚な穴を互いに求め合う事で癒やす。

 彼らは眠りに就く。明日あすも生き延びる為に。

 皆様のおかげで今作も無事完結する事が出来ました。


 今回の主人公はゼノ・レーク。あのリアンさんと敵対していた方です。

 彼の性格は殺す事を楽しむような残虐な感じでしたが、先の決戦の結果でどう変わったのかを見ていただきたく、このような話の構成になりました。


 次はリアンさんが活躍してくれるはずです!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ