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剣戟の幻想物語 2 折れた剣  作者: やきたらこ
空いた穴を埋めるモノ
5/8

4.

「そぉいえばお前、だらしないカッコのままだったな」

 体を起こしたゼノは少女を見て、言った。

 それに対し少女はキョトンとした表情を浮かべるだけだった。

「おい、ロー。女どうしなんだから、こういうのはお前に向いてると思うから頼むわ」


 ゼノに視線を向けられたローグルは発言に対し目を細めた。そこに隠された真意は彼女にしか分からない。

 ローグルは立ち上がり、少女の手を握った。

 少女は未だ困惑する様子だったがローグルを信頼して付いて行く。最後に、自分に向けられた寂しそうな目をゼノは見た。その視線を受け、何故か胸の奥のどこかがチクリと傷んだような気がした。

「さぁて、そろそろ行くとしようか」

 ゼノは受け取った札束のちょうど真ん中辺りに指を入れ、そこから一枚の紙を取り出す。

 依頼は直接言い渡さない。誰かに盗聴されるとマズイからだ。そこで依頼人が工夫を凝らして偽装する形をとっていた。

(この程度か…………)



 内容は簡単なモノだった。

 とある屋敷で重鎮の密談があるらしい。そこに潜入し、両者を殺せという端的な依頼だった。

 こういう依頼はローグルの方が適任ではないかと毎回思う。貴重な収入源なので感謝してはいるが。

 ゼノは漆黒の得物と小盾を持ち、宿の窓から宙に身を躍らせる。わざわざ入り口から出なくとも、こちらの方が速いからだ。


 日が落ちかけ、くれないの街を黄昏に染める。

 そんな建物たちの屋根を跳び渡り、目的の屋敷を目指す。




 仕事自体は簡単に終わった。いつもどおりに首をはね、特製の巾着袋にしまって屋敷を脱出する。

 報告も、滞り無く終わった。

 尾行が居ない事を確認し、事務所に入る。


「ご苦労様、報酬はまた後日」


 完璧にいつもどおりだった。

 しかし。

 異変は宿に帰る途中に起こった。


『ゴメン、ゼノ。なんかピンチ』

 決して使われる筈の無い術式。闇属性の念話テレパシーが脳内に響く。

「どぉいう事だ?」

 周囲に人が居ない事を確かめると念話テレパシーに応じた。

『分からない。けど、掴まって……監禁されてる』

子供ガキも一緒か」

「……………………う、うん」

 最後の答えは僅かに言い淀んだが答えてくれた。

「場所は?」

テイ地区の四番通りから裏路地を行った所の奥の倉庫』

「しっかしなんで、お前が掴まるなんて事態に陥ったんだ?掴まるようなタマじゃ無ぇだろうが」

『………………………………………………………………………………』

 返答は無かった。ゼノは気になってしまい、幾度か尋ねた。すると、

『忘れてきたの。いつもの暗器を部屋に』

 思わず笑いを漏らしてしまった。勿論念話(テレパシー)がそこで途絶える。


 数瞬後、笑みは消え、見たものが凍りつくような冷徹な表情を浮かべ、走る速度を上げた。

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