銀色の探求者
書き溜めが全然できない・・・
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《PM》→《擬食者》
《BC》→《黒刃》
《SB》→《銀血》
《PH》→《偽抗人》
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大幅に改稿
無駄をカットしました。
限られた土地を有効活用しようという考えから、ほとんどの建物が超高層ビルとして建てられたオフィス街。
晴天の空に昇った太陽が、連立するビルを真上から照らしている。
初夏のこの日は、絶好の昼寝日和となっている日本《第二都市》。
だが、昼寝など安心してできないのが《第二都市》の現状だ。
捕食者が跋扈しており、立ち入るだけでも危険だというのに、呑気に昼寝などしていては命がいくつあっても足りない。
少年、一条 拓海はそんな危険地帯に居た。
肩まで届く銀髪を襟足で束ねた彼の年齢は高校生くらいだが、年齢にそぐわない鋭い目つきが、黒い瞳と相まって研ぎ澄まされたナイフのような印象を与える。
黒で統一した戦闘服の上に軍用ベストを身につけ、これまた黒い刀剣をこれでもかと抜き身のまま携えていた。
左腰に直刀、右腰と後腰に直剣、両脚のふくらはぎと太もも、軍用ベストに小刀。
無駄に多い。
剣やナイフは全体が黒く、特に刃は全てを飲み込むような漆黒で、見比べると他の部位が薄く見えてしまう程『黒』が深い。
見た目通り《黒刃》と呼ばれる武器だ。
街中で浮くだけでは済まない完全武装もとい、職務質問希望者のような格好をした一条は、陽の光が入らない涼しいオフィスビルの中をたった一人で進んでいた。
人気はない。それどころか人だったものが骨となって落ちている。
そして荒れていた。
窓の大半が割れ、デスクやイスは倒れているものもあれば壊れているものもあり、変色した血痕や積もった埃でそこらじゅう汚れている。
二年程前に廃都と化したこの街、《第二都市》ーーーーー何十年も前は大阪府と呼ばれていた場所ーーーーーでは珍しくもない、一条にとっては見飽きた光景だ。
一条は、床に転がった白骨化した遺体をまたぎ、先へ進む。
彼がまたぐ側でいられるのは、彼自身が『異常』な存在だからだろう。
歳が十二になったクリスマスで一度死に、生き返ったこと。
滅んだ危険地帯でたった一人生きていること。
『普通』の連中との違いを上げたらキリがない。
(化け物は俺も同じか・・・)
自虐的な思考をしながら唐突に足を止める。
オフィスに入ってすぐのことだ。
数年前までは使われていたであろう室内は他と変わらず、列が乱れたデスクは所々倒れ、人骨も落ちている。
この二年の間で見慣れてしまった一条が、それらを見て歩みを止めるはずがない。
ではなぜ。
首だけで振り返る。
鋭い視線の先に居たのは、《第二都市》を滅ぼした原因。
墨色の肉体が銀濁色の甲皮に覆われ、爬虫類のように瞳孔が縦に裂けた銀色の双眸を持つ人型の捕食生物ーーーーー《擬食者》。
一条が持っている直剣型の《黒刃》と全く同じものを片手に持ち、残る手足の鋭い指先を壁に突き刺し張りついていた。
互いの視線が交差した直後、《擬食者》は驚いたように目を見開き、跳躍をもって一条に襲いかかる。
「気づかないとでも思ったか?」
一条は二年以上たった一人で戦い続けてきただけではない。
二年以上たった一人で、戦場で暮らしてきた。
食事の時も、寝る時すらも、敵の接近に気を配り続けたことで身についたその索敵能力と隠密能力は並外れている。殺気を隠そうともしない相手に気づかないはずがない。
一条と《擬食者》の間には遮蔽物などなく、すぐに互を間合いに捉えた。
先手は《擬食者》だった。
血液中に存在する《銀血》を掌から流し込むことで、《黒刃》の機能を発動させる。
漆黒の刃が、《擬食者》の眼と同じように銀色に輝いた。
それを上段から振り下ろす。
対する一条も、右手で左腰の直刀型の《黒刃》を留め具から外した。
《黒刃》を鞘の代わりに左腰に留めていた留め具は、彼の技量か、それとも仕組み的にそうなっているのか、いとも簡単に外れる。
外しつつ、《銀血》を流し込んで発動させながら反転。
相手の《黒刃》を反転した際の遠心力と勢いに任せて弾く。
ガギィィィンッ!!!!
銀色の軌跡を残して振るわれた《黒刃》同士がぶつかり合い、硬質な音と共に散った独特の銀色の火花が薄暗い部屋で輝いた。
競り勝ったのは一条。
空中にあった《擬食者》の体が押し返され、距離が開く。《銀血》で身体能力を強化すれば、一瞬で潰せる距離だ。
オフィスの入り口付近に着地した《擬食者》は、嬉しそうに笑った。
「生キ残リダ」
イントネーションが乱れた言葉。
一条はそれに、言葉ではなく行動で応えた。
左手で右腰の直剣型の《黒刃》を外し、発動させる。
それを見た《擬食者》は、笑みを深めると肉薄した。
一条は僅かに腰を落とし、相手が自分を間合いに捉える一歩手前で、いきなり跳躍する。
体を捻って天井に足から着地、頭上から斬りかかった。
《擬食者》は彼の跳弾のような一連の動作にも反応し、《黒刃》を頭上で水平に構え、咄嗟に防御姿勢をとった。
一条は構わず左手の直剣を振るう。
だが、《黒刃》同士が接触する直前、一条の《黒刃》が名前の通りの姿に戻る。
接触。
一条の《黒刃》は拮抗などせず、接触した部分が紙のように切断された。
一条は、減速することなく床に着地した。
上の次は下。
意図的に《黒刃》の機能を停止させることによって、完全に相手の虚を突いたフェイント。
片方の武器を失くしたが問題ない。もう一本ある。
放たれるのは、いつの間にか逆手に持たれた右手の直刀によるアッパーカットのような逆袈裟斬り。
一条が放った一撃は、《擬食者》の両脚と剣を持っていた右腕をほぼ抵抗なく斬り落とした。
両脚を失った《擬食者》は、肉体と同じ墨色の血を撒き散らしながら倒れた。
だが、この程度では《擬食者》は死なない。
完全に不死というわけではないが、血液中の《銀血》が枯渇しない限り、どんな傷を負っても再生されてしまう。
例え首がもげても生え変わり、記憶すら受け継がれる再生能力は反則とすら言えるだろう。
高位の《擬食者》だと過剰攻撃ですら死なないことはざらだ。
《擬食者》を殺すには《銀血》が枯渇するまで傷を負わせ続け、最後に致命傷となる一撃を与えるしかない。
現に、一条の足元に倒れる《擬食者》の傷は既に塞がり、完治に向かっている。
(さっさと終わらせるか・・・)
一条は思考しながら顔にかかった墨色の返り血を拭った。
《擬食者》の血は《銀血》を体中に運ぶ為だけにある。
脳の活動に酸素を必要としない為、血液中に鉄分が存在せず、色はグロテスクだが無臭だ。
一条は残っていた《擬食者》の左腕と、《銀血》によって再び生え始めていた右腕と両脚を根元から斬り落とした。
痛覚がないのか、腕を斬り飛ばされても《擬食者》は悲鳴の一つも上げず、人間だったら即死であろう状態になっても生きている。
《擬食者》の体は、異常なまでに燃費が良い。
栄養や酸素を必要としない体に、脳の活動維持は、枯渇状態でも使われない極微量の《銀血》で事足りる。
流石に血液を全損して生きることは叶わないとはいえ、本当に化け物だ。
《銀血》はまだ枯渇しないようで、斬り落とされた四肢が再生を始める。
初めて《擬食者》と交戦した過去の人々は、この再生能力を見てさぞかし絶望したことだろう。
《擬食者》を効率的に倒す方法を確立した現代ならまだしも、有効な武器が存在しなかった頃は何人犠牲を払ったことか。
身を捩ることしかできない今のうちに済ませようと、一条は《擬食者》の胸を踏みつけて固定すると、直刀の銀色の切っ先を眼前に突きつけ質問した。
「『神』について、何か知ってるか?」
そんな唐突な質問に対し、
「・・・知ラナイ」
イントネーションが乱れた否定の言葉。
それを聴いた一条は、直刀で躊躇なく相手の首を刎ねた。
血が溢れ出すが、切断した首同士が癒着を始める。
一条は面倒くさそうに頭部を蹴り飛ばした。
ブチッグチッ、と癒着しかかっていた肉がちぎれ、首がボールのように転がっていく。
それでやっと《銀血》が枯渇し、《擬食者》は絶命した。
一条は勢いよく噴き出していた墨色の血が止まるまで、それを感慨なく見ていた。
「・・・また外れか」
(まあ、あいつの手先がこんなに弱いはずもないか)
一条は、切断した《擬食者》の右手から強引に《黒刃》を回収すると、使い捨てにした《黒刃》の代わりに右腰の留め具に固定し、次の獲物を探して歩き出した。
・《第二都市》は約2年前に滅ぼされ、今や廃都と化している。《擬食者》が跋扈しており、生存者は一条以外居ないと思われる。
・一条は索敵能力と隠密能力といった第六感の扱い方に長けている。
・《黒刃》の発動には《銀血》が必要で、発動している状態の斬れ味は凄まじい。
・《擬食者》の生命維持に食事や呼吸は不要で、痛覚は無く《銀血》による高い不死性を有している。
・一条は『神』を捜し出す為、《擬食者》から聞き回っている。
読んでくださってありがとうございますm(_ _)m
主人公
性格がちょっとアレ/ぼっち/殺伐とした暮らし
とてもギャグやネタを入れにくい...
少し天然(?)のヒロインと出会うまで少々お待ちください。
@Hohka_noroshibi
Twitterで予定変更などお知らせしています。