黒火の偽物
20時に投稿したかった...。でも書き終わるか(結局書き終わらなかった)不安で時間を予告しませんでした、申し訳ないです。
前回のあらすじ
《変位種》を追っていた一条と雛魅は分断されてしまう。
一条の元には《変位種》が現れ、結局一対一の戦いが始まった。そして、何とか《変位種》の首をちぎり飛ばすことに成功する。
一方、彼を裏切るか悩んでいた雛魅は、一条と約束を果たすことを決意する。だが、そんな彼女の元に黒田が現れた。
マイクロウェーブグレネード。
発動すると、狭域ではあるが周囲の物体に強い誘電加熱を作用させる。名前通り電子レンジを応用した兵器だ。
これを肉体の近くで使えば、肉体が水を入れ過ぎた水風船のように弾け飛ぶ。
一条は、軍用ベストに左手を突っ込んだ際、これを握っていた。
両腕と大半の触手を切断、残った触手も使い切った状態で、顔面に近づいた捕食対象に、《変位種》がどう対処するか。
獲物の肉を食いちぎる為の鋭利な歯牙が残っているのだから、それを使うに決まっている。理性がなく、本能的に動く《変位種》なら尚更だ。
グレネードの影響で一条の左腕は急激に膨張し、通過中だった喉に引っかかった。その後は《変位種》の首もグレネードの影響に巻き込まれ、首の肉が膨張。甲皮は内側からも破れない為、血肉の唯一の逃げ場となった首と胴体の甲皮の分かれ目が裂け、首がちぎれ飛んだ。
「これで動けないだろ・・・」
頭から墨汁を被った一条は立ち上がると、口の中に溜まった血を吐き捨てながら《黒刃》を発動させる。
彼自身の傷は完治はしておらず、片脚は生え変わったものの左手は無い状態だが、《変位種》の首は既に生え始めている。もう一度断首しなくては、すぐに脳まで再生し復活するだろう。
そんな面倒な状況はごめんだ。
一条は《変位種》に近づこうとして、
「ッ!?」
咄嗟に横に跳ぶ。
直後、彼が立っていた場所に触手が穴を穿った。それだけでは終わらない。
ズガッガッズドッズガッズガッ!!!!
触手が次々に穴を増やしていく。
一条はホーム内の柱や天井も使い、不規則に逃げ回った。
「脳が無いのに動けるのか・・・!」
《変位種》の頭はまだ生え変わっていない。それなのに、触手は的確に一条を狙ってくる。
反則だ。これでは断頭の意味が無い。
一条は襲って来た触手を回避して斬り飛ばしていると、《変位種》が起き上がる気配がした。
「グルゥゥゥッ・・・」
「化け物め」
前と変わらぬ新しい頭部を携えた《変位種》は、低く唸るだけで立ち上がることなく、獣のように四つん這いになった。
体中の関節ーーーーー甲皮と甲皮の隙間から剣のような触手が生えた。膝に刺さっていたナイフ型の《黒刃》が、押し出される形で抜け落ちる。
役に立っていたかはとても微妙だから別にどうでもいいか。
「これ以上は手が付けられないな・・・」
今は逃げの一手だ。既に面倒くさいどうのという域ではなくなっている。
雛魅と合流し、搦め手で消耗させてから二人で叩く。
そうでもしないと倒せないだろう。
一条が逃げる算段を立てていると、《変位種》の呼吸音が聞こえた。
スウゥゥゥーーーーー、と。
深く、
深く、
深く、
吸って、
叫ぶ。
「グルアアアァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!」
「ッ!?!?」
咆哮によって、ホーム内の空気が震えた。
衝撃波が起き、これまでの戦いで破壊されていた床や天井や柱の破片を吹き飛ばす。
空気を掻き乱す程の大音響が同時に起き、一条の耳の鼓膜をいとも簡単に破壊した。三半規管が乱され、平衡感覚が損なわれる。
生まれた決定的な隙を狙うかのように、触手が殺到した。
一条は全力で跳んだ。遠くに跳ぼうとしたが、それはできず、触手によって片脚を切断された。
(なめやがって・・・!!)
遊ばれている。二桁に及ぶ触手のうち、一条の攻撃に向けられたのはたったの三、四本だった。
当たったのはそのうちの一本。
今度は殺気の本体が迫る。
「来いよ・・・!」
一条も張り合うかのように殺気をばら撒き、無様に転がるようにして、残り少ない柱に身を隠した。柱を盾に《変位種》の攻撃を凌ごうとする。
「ガアァァァッ!!」
だが、《変位種》の一撃は柱を易々と粉砕し、後ろに隠れていた一条をーーーーー吹っ飛ばせなかった。
先程までの殺気が消えている。
《変位種》が、一条が居ると勘違いして砕いた柱の向こう側には、一本の缶。
殺傷を目的としたMWGとは違う、非殺傷を目的とした、スタングレネード。
「返すぞ」
轟音には爆音を。伝わることはないであろう意味のない意趣返し。
《変位種》が、どこからか発せられた声の主を見つける前に、閃光と爆音がその場を埋め尽くした。
*
黒田が無事だったことに、安堵と喜びが生まれるも、すぐに濁る。
黒田と一条、どちらを選ぶか。すぐに雛魅は、選択を迫られていることに気がつく。
「どうして中央ビルに来なかった」
「すみません、色々とあって・・・」
一条のことをどう話したものか。彼は《偽抗者》だろうが、百パーセントそうであるとは言い切れない。
最悪一条に迷惑がかかる。
「お前一人の勝手な行動で、仲間をどれだけ危険な目に合わせたと思っているッ!自分の重要性を理解していないかったのかッ!!」
雛魅は最高戦力だ。彼女が欠けるだけで、《第二都市》の調査のリスクは跳ね上がる。
黒田は息を吐くと続けた。
「・・・説教は後だ。《変位種》が現れた。作戦は中止し、帰還する為直ちに中央ビルに向かう」
「帰還、するんですか・・・?」
「当たり前だ。《変位種》が出没する地域で活動するなど危険過ぎる」
「・・・他のみんなはどこに・・・?」
「近くで待機している。行くぞ」
「・・・はい・・・」
一条を裏切ることは確定した。彼と《変位種》をそのままに、自分は《第一都市》に帰還する。
罪悪感がないわけではない。だが、他にどうしろというのだ。
助けてもらったとはいえ、数日間共に居ただけの少年の為に、人生を捨てて《第二都市》に残れというのか。
(私には、できない・・・)
裏切る少年への未練を握り潰すように、雛魅は歯を食いしばり拳を握り固めた。
黒田は既に雛魅に背を向け歩き出している。
雛魅もそれに追て行こうとして、思い出したことがあった。
本人確認。『本物』の黒田か確かめる必要がある。
黒田の姿は最後に会った時とそう変わっていない。激変していないのだから幸いだが。変化は装備品に傷がついたぐらいだろう。
「隊長、本人確認を・・・」
擬態対策となる本人確認は必須だ。《擬食者》が居る場所で仲間と逸れた場合、どんな状況でもそれは鉄則となる。
黒田達が《擬食者》に遅れをとるとは思えないが、雛魅は決まりごとであるという理由から、確認をとろうとする。
だが、黒田は足を止めることなく進み続けた。
「今はそれどころではない、急ぐぞ」
「ですが・・・」
「早くしろッ」
有無を言わせぬといった感じの黒田に、雛魅はここで初めて不信感を覚えた。
本当に黒田なのだろうか。《擬食者》ではないのだろうか。
そんなはずはないと否定しつつも、訓練通り《黒刃》に手を伸ばした。
「隊長、どれでも構いません。パスを・・・」
《擬食者》に聞かれている可能性を考慮し、同じパスは使わないようにする。その為、予め複数のパスを決めてある。
「くどいぞ」
「・・・」
雛魅より進んでから足を止めた黒田は、どのパスも言おうとしない。
|知らないのでは、と脳裏をよぎった予測を雛魅は消した。
まさか。
そんなはずはない。
「ストラ、私を疑っているのか?命令だ。今すぐ大剣から手を離せ」
「・・・拒否します。パスの確認がとれない限り、命令には従えません」
徹底的に叩き込まれた擬態対策の思考と行動。
はぁ、と黒田は重々しくため息を吐いた。
どうしようもない。そんな諦念を吐き出したようなため息だ。
黒田は、たすき掛けされている留め具付きのベルトを長剣型の《黒刃》ごと外すと、軍用ベストを脱ぎ捨てた。
それによって、スーツの胸に空いた穴が露わになる。剣で刺されたように、穴の形は細長い。
「《擬食者》と交戦して、この傷を負った」
「え・・・?」
「それにーーーーー」
困惑する雛魅を無視して、黒田は低い声で続ける。
「ウェドが死んだ・・・。全て、お前のせいだ」
「っ!?」
嘘だ!
雛魅の思考は咄嗟に否定した。
だが、その事実が嘘であれば、嘘をついた黒田が偽物ということにならないだろうか。
そして、黒田は『お前のせいだ』など決して口にしない。
では、その『本物』はどうしたのか。
《擬食者》が擬態に必要な捕食量は少ない。『本物』が生きていて、擬態されている可能性だってある。
だが、この状況でそれはほぼありえない。
なぜなら、目の前の黒田が身に付けている装備品は、間違いなく黒田本人のだからだ。
《擬食者》の擬態能力は肉体だけであり、衣服などは奪って身につけるしかない。
つまり、本物の黒田は。
(死んだ・・・?それに、波山さんも・・・?)
ウェドーーーーー波山も《偽抗者》の強さを表すランクはAランク、精鋭だ。
目の前の黒田が偽物なら、その言葉も信じるに値しないが、どこか現実味を帯びている気がした。
大剣を握る力が弱まる。
「嘘、ですよね・・・?」
「本当だ」
「・・・信じられません。隊長、パスを・・・」
言うはずがない。偽物なのだから。
もし黒田がパスを言ったら、それはそれで波山が死んだことになる。そもそも、黒田が死んだのもーーーーー。
雛魅はそこまで思考して、叫びたくなった。
「ッ!?!?!?」
三日前には、みんなで生きて帰ろうと笑いながら誓い合っていた。
それなのに。
(それなのに、死ん、だ・・・)
なんて呆気ない。気がつけば、仲間が死んでいた。
その間自分は何をしていた?
共に任務を行うことや、共に戦うことなど、仲間の役に立つことなどしていないではないか。
(私のせいだ・・・)
自分が居れば事態が好転していたかはわからない。しかし、勝手に単独行動をとっていた雛魅にも一因はあるかもしれない。
(私のせいで仲間がッ・・・)
いや、全滅したとは考えにくい。全員がAランカーの猛者だったのだから、生き残りがいるはず。
雛魅は大剣を握り直すと、抜剣して正眼に構えた。
仲間が死んだショックから脱したわけではない。『仲間が死んだ』ではなく、『仲間に生き残りがいる』という前提の置き換え。それは現実逃避に近い行動だった。
「何の真似だ・・・」
「本人確認でパスや符号が一致しなかった場合は、相手を《擬食者》と判断しなくてはならない。そういう決まりです」
「私が《擬食者》だと?」
「・・・はい。他のみんなはここには居ない。だからあなたは一人で私の前に出て来た。違いますか?」
「本当にそう思うのか?」
くっくっくっ、と黒田はマスクの下で不気味に笑った。
黒田ならしないであろう不気味な笑い方に、雛魅の警戒心は強まる。
「全員出て来い。ストラが会いたいらしいぞ」
「!?」
指示に従うように、建物の中など雛魅の死角になっていた場所から黒ずくめ達が姿を現し、黒田の側に集まった。
計六人が集まると、全員が顔を隠していた緩衝素材でできたマスクを外した。見知った素顔が晒される。
「あぁぁ・・・。こんな・・・、こんなの・・・」
取り乱す雛魅を嘲笑うかのように、全員がこの状況で笑っている。
雛魅は、絶望的な現実を受け止めきれず脱力した。硬質な音と共に、正眼に構えていた大剣の切っ先が地面に着く。
「ストラ、みんな居るぞ」
「これで信じたか?」
「一緒に帰りましょう」
「仲間なんだから安心しろ」
「ほら、武器をしまえ」
「それとも私達を殺すか?」
「ッ!!」
(中島さんッ、伊藤さんッ、長谷川さんッ、池田さんッ、浜田さんッ、黒田さんッ・・・)
何だこれ、何だこれ、何だこれ、何だこれ!!
全員《擬食者》なのか?擬態した偽物なのか?
そうでないと思いたい。
だが、だったらなぜパスを言わない。
決定的すぎる証拠と、完全なまでの仲間の姿が、残酷な現実を物語っていた。
「・・・ウェドは、どうしたんですか?」
「死んでしまったんだよ」
何とか絞り出すように訊いた雛魅の質問に、一人が笑ったまま答えた。
仲間という概念がない《擬食者》が、仲間の死を重く感じることはない。死んだという事実を笑って答えたのも《擬食者》だからこそだ。
錯乱しそうになる思考を無理矢理繫ぎ止めた雛魅は、そんな現実の中に、わずかな望みを見つけた。
(波山さんは、生きてる・・・!?)
擬態できなかったから、もしできたとしても装備を奪えなかったからこの場に居ない。つまり、生きているのではないだろうか。
雛魅は歯を食いしばって大剣の切っ先を天へ向けた。ギチギチッ、と歯が軋む。
もし、彼女が生きているなら、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
それに、波山が仲間が擬態されていることを知らなければ、目の前の偽物に騙され、危害が及ぶ可能性すらある。
「最終確認です。これで本人確認ができなかった場合、全員《擬食者》と断定します」
殺さなくてはいけない。
仲間の姿をしたこいつらを。
これは最後の望みだ。これに応えなければ容赦はしないと、雛魅は心に決め、一呼吸置いてからパスの確認を自分から行った。
それに応える者は、この場には誰も居ない。
*
一条は暗い地下鉄の路線を歩いていた。
《変位種》にスタングレネードをぶちかまし、視力と聴力を奪った間に逃げたのだ。
《銀血》による回復の基準はとても曖昧だ。《偽抗者》の場合を言えば、髪や爪だけを切っても再生されないが、指や頭部を切り離し生え変わらせると共に再生される。瞬間的に起きる体の異常はすぐに治るが、時間をかけた結果起きた体の異常は治らない。例えば、風邪や病気、体の歪みなどは治らない。
とはいえ、瞬間的に起きるはずのスタングレネードによる視力と聴力の異常が治らないのだから本当に曖昧だ。
(くそっ、また装備を整え直す必要があるな)
毒づいた一条の姿はボロボロだった。
服やベストは大穴が空き、両脚を切り落とされた為ズボンは短パン状態、そして裸足だ。《黒刃》は直刀とナイフの二本。
前回《変位種》と戦った時もボロボロになった。《銀血》は枯渇していないものの、装備の状態だけを言えば今回はさらに酷い。何より裸足は良くない。
高層ビルの窓ガラスが割れ、マキビシが撒かれている状態に等しい道路を裸足で歩くなど、《銀血》がいくらあっても足りない。某RPGで例えるなら毒沼を永遠と歩き続けるようなものだ。
(まず靴をどうにかしたいところだが・・・)
簡単に靴を手に入れる方法がある。人の死体から奪うというものだ。
街じゅうに死体が落ちている《第二都市》ならではの方法ではあるが、他人が履いていただけならまだしも、肉体が腐敗する過程で元肉体と臭いが染み込み、ウジ虫が群がって、最終的にカビが生えていそうな靴など、流石の一条も遠慮したいところであった。
それに履いたとしても、壊れない保障などない。
(他の方法をーーーーー)
そこまで思考して、遠くに気配を感じた。《変位種》ではない。
奴は一条と戦った駅のホームで暴れ続けている。怒り狂っているらしく殺気が半端ない。時折咆哮が響いてくる。
(数は一。《擬食者》か?距離は数百メートルってとこか・・・)
少しずつ近づいて来るのがわかる。
《擬食者》なら《変位種》の存在を危惧して近づかないはずだ。もしかしたら、
(《擬食者》じゃなければ日向か?)
今朝出発した拠点を合流地点にしていたはずだが、分断されたのは狙われていると理解し、合流を優先したのかもしれない。
もう少し進んだら身を潜めて待ってみることにした。
五分もしないうちに気配の主は姿を現した。
「日向」
「え!?い、一条君!?もう、驚かせないでよっ」
気配の主は雛魅だった。
壁際で気配を消していただけなのだが、暗闇が隠密能力の向上に役立っているのだろう。一条が声をかけなければ、彼女はそのまま素通りしていたはずだ。
「かなりボロボロだけど大丈夫?」
「問題ない」
姿は雛魅なのだが、明らかにおかしい。持っている《黒刃》は一条が渡したと思われる両刃の直剣で、軍用ベストを身につけていない。
「大剣はどうした?」
「爆発が起きた時、飛んできた瓦礫で留め具が壊れちゃって、落ちた大剣は崩落に巻き込まれちゃった・・・」
「とことん今までの準備が無駄になるな・・・」
皮肉げにぼやくと、質問を続ける。
「ベストは?」
「爆音で寄って来た《擬食者》と交戦した時に壊されたの」
矛盾点が解消されていく。
あとは本人確認くらいだろうか。
そんな一条の思考を読んだかのように、雛魅は提案した。
「一条君、本人確認をーーーーー」
「『人間とは何か』」
一条は遮るように先に質問する。
雛魅は苦笑しながら答えた。
「『《擬食者》より真っ黒な生き物』でしょ?」
「・・・ああ、そうだ」
今度は私が質問していい?と彼女は肯首する一条に訊いた。
「何だ・・・?」
「何があったの?かなりボロボロだけど・・・」
「《変位種》が来た」
「ひ、一人で戦ったの?」
「強過ぎて倒せなかったから逃げて来た」
一条が言い終わると同時に、地下鉄内に咆哮が響いた。
雛魅が青い顔をした。
「どうするの?この状態じゃ勝てないと思うんだけど・・・?」
「態勢を立て直す。まずはお前の大剣を回収するぞ」
二人を分断した爆心地付近には《変位種》が居る。《擬食者》は寄って来ないはずだ。
「日向、どうやって地下鉄に入った?」
「非常口にもなってる換気口を使ったの」
「ならそこまで案内しろ。分断されてからの短時間でここまで来たんだ。充分な早さで戻れるだろ」
「うん、そうだね」
大剣を回収したら、一条も装備を整え直す。拠点まで戻らなくとも、街中で適当に見繕うつもりだ。
雛魅は一条に背を向けると歩き出した。
一条はその後ろ姿を見ながら後を追う。
(聞きたいことがあるんだが、もう少ししてからにするか・・・)
彼の歩幅は雛魅よりわずかに広い。歩いているうちに自然と距離が縮まる。
一定の距離が縮まると、予め決めておいた切り出し方で質問した。歩き出してから数分経った頃だ。
「日向、一つ聞いていいか?」
「どうしたの?」
雛魅が振り返る。
そこへ、いきなり殺気をぶつける。
「ッ!?」
彼女は咄嗟に体の向きを反転させながら跳び退き、《黒刃》を掴んだ。
だが、一条はもうその場には居ない。気配を消して移動した先は、雛魅の真後ろ。
雛魅が気づいた時には、尾を引く銀眼が見下ろし、銀色の刃が振るわれていた。
「お前は誰だ?」
読んでくださってありがとうございますm(_ _)m
次は剣王の執筆です。
Twitterにて友人描いてもらったイラストを公開中、予定変更などもお知らせしております。
@Hohka_noroshibi