うまらない穴。
隣国との対戦で犠牲となった英雄。彼は私の親友だった。
この国の王たる私に友人は彼しかおらず、悩み事を相談できる相手はこの世からいなくなってしまった。
国を守る為、彼の犠牲は仕方のないものだった。
彼の尊い犠牲により我が国は救われ、彼は英雄と呼ばれ崇められる存在となった。
それで良かったはずなのに、私はこの犠牲を未だに受け入れる事ができないのだ。
王として国を守る事を優先すべきなのはわかっている。そう教えられてきた。
だが、そんな事がどうでもいいと思えてしまうほどに、私は彼の存在に支えられていたのかもしれない。
ぽっかりと空いてしまった彼のいた場所を埋める術を私は知らない。