15/24
3-5彼について。
「今日は長いね、いつ頃なおりそう?機嫌」
「…そういうところ、ほんっとに嫌い」
「こっちだって、黙られるとどうしたらいいかわからん」
「黙らせてるのはそっち、怒らせるのもいつもそっち」
「全部こっちのせいか?」
「…そう言いきれないのは、私のせい」
いつでも自分が正しいの?
私の意思は?気持ちは?考えたことあるの?
言いたいことはいっぱいある、でも。
「何を言えば、君の好きな私なのか、わからなくなるんだ」
この人のことが、大嫌いになりそうで。
でも、そう言い聞かせるほどに、どんどんこの人に固執して。
好きだと言うことすらはばかれるほどに気持ちは膨らむ。膨らむ。
「また泣きそうな顔をする。
君は、馬鹿みたいだね」
何も言わない私の手を彼はつかんで握る。
驚いて顔を上げる。彼から手を繋ぐことなんて
今まで数えられるほどしかない。
「月命日だ」
「…そう、なんだ」
「不謹慎かな?手なんか繋いで」
舞い上がる私と、
この繋がれた手に意味なんてないんだと
言い聞かせる私とがせめぎあい、つい、だ。
彼の変化を見逃した。