3-3彼について。
「降りるぞ!」
寝かけていた私は慌てて立ち上がる。
ホームに降り立ち、回りを見渡す。
じんわりと、気持ちに不安が広がる。
「ねえ」
「どうした」
「どこ。何の用があるの、ここに」
「まあまあ」
「いい加減にして、帰るよ」
彼は、少し慌てた様子で私のコートのフードを引っ張った。
ようやく話す気になったか。彼に向き直る。
「会いに来たんだ」
「…は?」
「会わせようと思って。君を」
「誰…に?」
呆れたように私を見る。この目だ。
私を不安にさせる。入ってくるなって、言われてるみたいだ。
でも、怯まない。だから、
「わかるでしょ、ここまできたら」
非常に、勘に障った。
「わかんないんだってば!いつも言葉足らずで…
言わなきゃわからないの?じゃないんだよ、言わなきゃわからないのが当然だよ」
はっとする。
また、だ。いつでも楽しく笑っていたいだけなのに。
強い口調になる。
私が、彼の言う「ここまできたらわかる」女でないことに
イライラするんだ。
そっと顔を上げる。私はほっとする。
もう、いつもの彼だ。
そして、彼は少し照れくさそうに言った。
「僕の
父親です」
ああ、そうか。やっとわかった。
今日は、
お墓参りに行くんだ。