3話 勇者、真実を知る。
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「顔を上げろ。」
頭上から声がする。えー、マジでか。
顔を上げると、玉座とそれに座る無駄に美形な国王陛下、そしてその隣に、ーーーありえないものを見た気がした。
「久しぶりだなアーノルド。元気そうで何よりだ。」
「知り合いなのか?」
人の悪そうな笑みを浮かべて、こちらを見る女。嫌になるほど見慣れた、その顔。国王陛下と親しげに話しているのは、あろうことかーーー。
「姉、貴ーー?」
「ふ、あいかわらずの馬鹿面だな、我が愚弟よ。まさかこんなところで会うとは思わなかったぞ?」
リリアーナ・エルシヴァ。俺の、姉貴だ。なんで、なんでーーーー
うちは平民で、ちょっと裕福なだけの商人のはずなのに!
「弟?ああ、確かに似ているな。お前の父に。」
「私に、ではないのか……?そんなに似てないか?あれと私は。」
何で、こんな、国王陛下と親しげに話してるんだ!?
「勇者よ、名は?……ああ、発言を許す。」
え!?きゅ、急に話しかけられても!困る、超困る!え、な、名前だよな……?
「……アーノルド・エルシヴァと申します。」
うん、噛まずに言えた。え、なんでそんな驚いた顔してるの、それも2人で。
「あー……そっか、アーノルドは知らないんだった。……クソ親父が。」
おい姉貴。ボソッと今、クソ親父が、つったよな!?国王陛下の御前で、なんて事言いやがる!俺が親父に怒られるじゃねえか!
「アーノルド、うちは貴族だ。「はあ?なに言ってんだリリー。頭大丈夫k」黙れ。死にたいかこの阿呆が。」
しまった、つい昔の呼び名が……違う今はそれじゃなくて、えっと、うちが貴族って……?
あれ、なんで姉貴地味に頬染めてんの?
「いいか、お前の名はアーノルド・エル・パーシヴァル。」
エル、って公爵位じゃねーか!しかもパーシヴァルは今の国王陛下の妹姫が降嫁された名門中の名門だ!
「親父は三男で、平民に求婚したから家追い出されたらしい。」
なにやってんのクソ親父ィィ!!たしかに親父とお袋はうざいくらい仲いいけど!いや違うな、親父がお袋に軽くあしらわれてるんだ。前に親父がプレゼント送ってたときも、鼻で笑われてたし。お袋は子供には甘いけど、親父にはめちゃくちゃ厳しいし。なんで結婚したんだろ……。
「あと私は宰相だ。」
いつの間にそんな出世したんだ……。
えぇ、マジか……。俺、貴族だったんだ……。