一粒の残酷
臓物ダンスを踊りながら意味もない殺戮をし続けよう。
逆さまの砂時計が再び悪魔の時間を蒸し返し、
守ることのできない剥き出しの脳味噌を掻き混ぜられるのだ。
壊れかけた記憶。致命的な毒の夢。感情の切断面。
壜詰めされた奈落地獄。神経叢のちぎれた音。
屍蝋化した腐敗埋葬。操りの城からの落下。
魂の遮断線に巻き込まれた臆病のかけらは星屑に似ていて、
唾を吐いた拷問の天使はレクイエムをゲラゲラと歌い始める。
脆弱のヴェールに包まれた顋門を破壊する複雑渦流こそが、
無数の徒し夢となりうる金属製の三つ叉の矛であると同時に、
即死を暗示する毒団子のかたまりであると定義づける。
排泄した自我の揺らぎと脳震盪の残像を感じながら、
七竃の枯れる薬を飲んでみたい、とふと思う。
私の中のガスマスクを被った無言の自我だけは傷つかない。
被害を受けたのはモノクロの花壇に植えられた徹底防禦の無意識だ。
蛇の射殺。豹の銃殺。街角の小さな惨劇。一粒の残酷のお話。
絶対零度の夢を見よう。私にとって淡い初恋は残酷そのものだった。
どろどろに溶けた精神の表面は、淡い恋心をひどく捩じり殺す。
届かない愛の言葉は私には殺傷能力の高い拷問だった。
それは何も残っていない恋、流した涙が中に浮いて、
隣に誰もいない。「ごめんなさい。好きな人がいるんです」
たった一つのセリフが脳を犯し純粋な静脈にこびりついた。
ロマンと夢が剥げ落ちる。こころの中が蜘蛛の糸で埋まっていく……。
「どうしてなの?」とひとりごちても、もう誰もいない。
瞼が麻痺し、涙が流れた。それは神の銃弾に似ていた。
絶叫。号泣。嗚咽混じりの呪文は誰にも届かない。
平和な都会でメフィストフェレスが白い闇を生みだし、
愛の鎖に絡まった輪郭を、絶望に解き放つ。
黒檀の闇。壊れた蓄音器。嗤う残忍主義者。聖なる揺曳。
スプラッタ映画のわざとらしい内臓。性病のアポトーシス。
がらんどうの心に塵芥を埋め立てて、ひたすら加工され、原型は失われた。
一方的な空中分解。もう復元することも模造することもできない。
三文小説にも似た下らない殺風景を遠くに見て慟哭する。
殺人衝動と濡れた手袋をドブに捨て、ネオン煌く街路を歩き続ける。
罅割れたコンクリートにはゴミが落ちていなかった。
走り去る自動車の濛々たる排ガスを吸いこんだ私は思った。
嗚呼!もうすぐ春の花の咲く季節が終わる。だから――。