第七話
ここしばらく更新が遅れてすみません。
地獄のような説教を乗り越え、退屈な授業を根性で乗りきり学生が求めてやまぬ休み時間を手に入れた。
「祐介ぇ、お前今朝はよくもやってくれやがったな」
「気にするな、おかげで朝練をサボりじゃなくて遅刻ですんだだろ?」
一時間目の授業が終わった直後に一番後ろで窓際の俺の席にやってきた大輔は朝の出来事について文句を言い続けている。
「そういえばオタクはどうしたんだ、まだ来てないみたいだけど」
「あいつなら今日はエロゲ買いに行ったから遅刻だろ?」
「そうだったか?」
オタクこと多田国雄は自他共に認めるオタクで、性癖は幼女大好きのロリコンで俺の部屋に度々幼女趣味の本やゲームを置いていく困り者だ。
「聞いてくれよ、あの馬鹿また俺の家に本を置いていきやがったんだぜ」
「ああ、3日前にお前の家に遊びに行ったときに冷蔵庫の裏に入れてたな」
「わかってたんなら止めやがれ」
(友人をロリコンにさせようとするとはどんな馬鹿だよ本当に、待てよ今日は何故かわけのわからない場所で寝てたし、やけに体が痛い、もしかして誰かにバレたか?)
全身から嫌な汗が湧き出る、そういえばホームルーム前に新井が変なオーラを纏って俺を見ていた、もしや見られたのだろうか。
「おい祐介、いきなりどうしたんだ?」
「なんでもないさ、ちょっと始末しなきゃいけない奴が出来ただけだから」
「いやいやいやいや、なんでもなくないだろうが、いったいなにがどうしたってんだよ?」
もし、俺が新井に変な性癖を誤解されているのならその幻想をぶち壊さなければならない、そのためには抹殺も考えなければいけないことを考えていたら口から漏れていたようで全力で止められた。
「落ち着けって、白昼堂々なに恐ろしいことを口にしてんだよ」
「別におかしくはないだろ、知られてはいけない秘密を知ってしまったら隠蔽が面倒だからという理由で消すという行為をやっているだろう?」
「お、お前ってやつは」
大輔の顔がだんだんと怒りの形相を纏っていき、今にも殴りかかりそうになっていく。
「―――、テレビで」
「ってテレビかよっ!」
即座にチョップでツッコミを入れてくる大輔は長年悪友として遊んでいるが、流石だと思うが、本気でやるのは頭が陥没しそうになるので勘弁してください。
「だいたい俺がそんなくだらない事をするんだったら弱味を握って脅すだけだ」
「いつもながらに最低な奴だな」
そんな感じにくだらない事を話していたらチャイムがなり次の授業の始まりを告げた。
授業も終わり待ちに待った昼休み、授業が終わる前から外に出ていた大輔、遅刻して来たオタクと共に昼御飯の確保に向かう。
『こちら祐介、ただいま西階段側から目標付近まで接近したが大量の人が居て近づけない』
『こちら国雄、玄関側もひ、人が多すぎてなにがなんだかわからないんだなぁ』
『こちら大輔、そっちもそうか……なら俺に良い考えがある、売り場正面に集合だ』
『『了解!』』
購買がある学生ならば一度は通るであろう購買戦争、学生達による昼飯を賭けた戦争だ。
購買は玄関の目の前にあり、売り場に行くためには玄関から行くか西階段から行くか東階段から行く3ルート有るが、今日は新商品が出るらしく普段以上に気合いが入っているのだが。
「くそ、なんで授業時間終了間際からスタートダッシュを決めたのにこんなに早いんだよ」
「ぼ、僕も何回も押されてもう疲れちゃったんだな」
「疲れてるところ悪いが、作戦を発表する」
「作戦は良いけど、風紀委員の配置は確認したのか? 奴ら結構な数が配置されてるぞ」
普段から風紀委員は公平かつ安全な学校生活を過ごさせるを目的にしているため危険な行動や恐喝等があるかもしれない購買付近には何人か張り込みがいる。
「勿論それはわかってる、しかしこの危険を乗り越えなければ俺達は新商品のDXサンドが買えない、リスクも有るがリターンもしっかりあるはずだぜ」
「仕方ないか、どんな作戦を行うんだ?」
大輔は俺の問いに対して不敵に笑うが、俺にとっては嫌な予感しかしなかった。
大輔からの作戦説明も終わり、俺はあいつらと距離をとり作戦決行の時を待っていた。
大輔の考えた作戦は単純だ、大輔とオタクが風紀委員の陽動係、俺があいつらの背中を足場にして購買の目の前まで飛んでいく作戦だが、問題点は人が沢山居るので怪我をさせないか、風紀委員に気取られないかの2つだ。
(怪我人が出るかも、成功するかも俺に賭っているって事だ)
準備を念入りに靴を直し、呼吸を整える、その時大輔達の方で動きが有った。
「この野郎、DXサンドは俺の物だ!」
「ぼ、僕だって欲しいんだな」
口論を始めた大輔とオタクの騒ぎを聞き付けて大量の風紀委員が押し寄せる、普段から問題を起こしまくっている俺達に当然の行動だろう。
風紀委員が集まるのを良いことに列に並んでいた生徒は列を崩し、購買に押し寄せて我先にと詰め寄る。
(作戦の決行は今しかない)
突然の生徒の暴動は風紀委員によって止められたが、そのお陰でこちらの注意力が散漫になる。
「今だ祐介行っけぇぇぇー!」
「あ、あとは任せたんだなぁ」
大輔とオタクがちょうど踏み台になるように屈む。
(この絶好のチャンスを逃すわけには行かない)
「この瞬間を待っていたんだぁ!!」
助走距離は充分ある、タイミングは完璧、ならば楽に成功以外に道はない。
そう思っていた時期が私にもありました。
普段から俺はとある風紀委員に監視されている、彼女は気配を絶つのはお手のもので注意していないと背後に回り込まれることも多々ある、もし彼女が大輔達の陽動を気にせず、生徒の暴動も気にせず、俺1人にターゲットを絞っていたら? 答えは単純、あいつは俺に並走して走っていた。
「なんで佐上がここに居るんだよ!?」
「………監視」
予想通り監視をされていたようで、このままでは踏み台にする時に邪魔されるかもしれない。
「だけど、止まるわけには行かないんだぁ!」
「止まれ」
その一言と同時に遊は隠し持っていたクロジアを一閃させ、進行の妨害を狙う。
「させるかよぉ!」
「っ!?」
「ナイスだ大輔!」
大輔が紙で作ったボールを絶妙なコントロールで投げつけクロジアを弾き飛ばした。
(これだけお膳立てされれば失敗するわけがない!)
勢いと共に二人の体を踏み台にして飛び、購買のおばちゃんにお金を投げる。
「DXサンド3つで」
「しっかりとりなよ?」
お金を受けとると同時に商品とお釣りを投げ返してくるおばちゃんに感心しながらも踏んでも怪我をしない足場に踏み込みキャッチする。
「ふげっ!?」
「悪いな筋肉、サラバだぁ!」
事前に確認していた木戸を踏み台に人の列から抜けていく、途中佐上の居場所を確認したが、人が多くて上手くこちらに近づけないようだ。
「よし、さっさと逃げないとヤバイな」
人の多い廊下を上手く通り抜けて風紀委員の追跡を確認してから急いで先に逃げた大輔達との合流地点の屋上まで向かった。