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第四話


(これは明らかな死亡フラグだったのかな?)


そんなことを思っていると声を掛けられる。


「先輩の部屋なんです、座ったらどうですか?」


「は、はいっ!」


亜紀は俺のベッドの上に座っていてニコニコと笑いながら明るい声で語り掛けてくる。

俺はO H A N A S I(処刑)がいつ始まるか戦々恐々としながらゆっくり正座で床に座る。


「先輩に聞きたいのは一つだけです、どうしてせっかくメールしてあげたのに返信もせずに二階から飛び降りて逃げたんですか?」


ニコニコと笑顔だが、目が笑ってない、嘘をつけば即処刑といった所だろう。


「えっと、メールに関しては返信を忘れてて、逃げたのは別の理由で死にそうになったからです! すみませんでしたぁー!」


日本人、いや人類の最終奥義、土下座を発動して誠心誠意謝ることにした。


(あれ? 後輩に全力で土下座してる俺って一体なんなんだ…?)


微妙に涙が出た気がするが、これは汗と断定しておいた、決して後輩の怖さに泣いたわけではないと信じたいものだ、本当に。


「先輩」


「はいっ! 何でしょうか亜紀さま!」


(もうプライドなんて知ったことか、そんなもの一昨日犬に食わせた)


頭を上げずに、床に額をくっつけながら亜紀の次の言葉が俺にとっての死の宣告ではないことを祈りながら待つ。



「先輩、もう良いんですよ顔を上げてください、私はもう怒っていませんから」


「へ?」


普段ならば『命を捨てる覚悟は出来てますか?』とか『懺悔は済みましたか?』とかの筈なのだが、今日に限っては優しかった。


「私も悪かったんですよね、本当にすみません」


「あ、いや別にそこまで謝らなくても」


珍しく頭を下げて謝る亜紀を見て驚くと同時に何かが引っ掛かる。


「代わりに一つだけお願いを聞いてくれますか?」


亜紀にしてはやけに真面目な顔をして言うものだから思わずコクリと頷いた


「明日の日曜日は空いてますか?」



(まさかの展開!! なにこれはフラグなのか? いやそんなことが有るわけない、こいつのフラグを立てた覚えは無いし、立つならお姉さんの雪さんに立って欲しかった。)


妄想の海に入ろうとしていたところ亜紀は俺をウジ虫を見るような目で見つめていた、相変わらずそういう趣味の人に大ウケしそうな視線だった。


「コホン、で何の用なんだ?」


「実は義孝が久しぶりに先輩に会いたいから連れてきてくれって言ったから、家の道場まで来てくれませんか?」


「断る、それだけは本当に却下だ」


「なっ!? 意地でも来てもらいますよ」


「行きたくないでござる、絶対に行きたくないでござるー!」


部屋を飛び出ようとした瞬間何か雑誌のようなものが後頭部に直撃しておもいっきり転けた。


「ってぇー、っ!? これはまさか」

投げられた雑誌はいつも俺が愛読しているエロ本の雑誌だった。


「なぜ、これを?」


「これですか? たまたまベッドの下を覗いてみたら見つけただけですよ」


ニコニコ笑顔を絶やさずに新たに二冊ベッドから取り出し見せつける。


「これは彩に報告しても良いですか?」


「わかった、そちらの要求を全面的に承諾しよう、いやさせていただきますので彩に報告だけはお許しください、亜紀様ぁ!!」


体勢を立て直し、もう一度土下座で頼む。


(彩にバレるのだけはまずい、以前バレた時の事を思い出しただけでも……ヒィィィィ!ふ、震えが止まらない)


その時の彩の怒りを表現するなら、亜紀が本気で震えるぐらいだった。

もし、よくわからないならあれだよ、言うことを聞かない部下に収束砲を撃って撃墜する人、あんな感じの怒りと思ってもらって構わない、つまりそれほど彩の怒りは恐ろしいなと言うことだよ。


「まったく、そんなに義孝が嫌いなんですか?」


「いや、そういう訳じゃないんだがなぁ(本当は義孝とお前が苦手なんだよ)」


「なるほど、どっちが一番苦手なんですか?」


「それは勿論おま―、…じゃなくて苦手な人なんて誰一人いません」


「よろしい」


汚え、アイツ絶対汚えよ、本音を言いそうになったら携帯を見せてきたんだもん、あれは変なことを言えば彩にチクるっていう意味での脅しなんだもん。


「そんなことより、そろそろ帰れよ、尚子さん心配するぞ」


尚子さんとは亜紀の母親で俺が亜紀の家に行くといつも赤飯を炊こうとする困り者だ。


「まだ平気ですよ、それより暇なんでゲームしましょうよ」


「ちゃんと連絡しとけよ健太さんには俺が怒られるんだから」


健太さんは亜紀の義理の父親だが、家族全員仲良く、そして明るくをモットーにしているため再婚に関して妙ないざござは起こらなかったらしいが、家族を大切にしすぎるので、子離れ出来ない親代表に選ばれるだろう。


「はいはい、ちゃんと連絡しますよ」


本当にわかったかは知らないが、とりあえずちゃんと返事をしたから、ゲームを取りに隣の部屋まで行き、P○2を持ってコンセントの配置をする。


「何のゲームがやりたい?」


招かれざる客とはいえ、一応は客なのでリクエストを聞いてみる。


「そうですね、先輩が持ってるエロゲやギャルゲーがやりたいです」


「わかっ…ここにはそんなものないぞ」


危なくある場所を教えそうになったが、なんとか免れた、俺は隠してある場所とはあえて正反対の冷蔵庫に視線を移す。


「へぇ、そこが隠し場所ですか」


近寄って確認しに行こうとする亜紀を止めて、別の話しに移行させようとする


「ぐっ、それよりその他に何がやりたい?」


「ふっ、先輩の趣味を確認するよりしたいことは無いですね!」


押し合いになり、俺は本気のフリだが、亜紀は若干本気で押してくる、全力を出しても勝てない相手が若干とはいえど本気を出しているのだから勝敗は呆気なくついた、俺が弾き飛ばされるという形で。


「くそっ、やめろー! 荒らすなー!」


「ふっふっふ、これが先輩の趣味かぁー!」


叫びと共に、冷蔵庫の下に有る何かを引き出した。


「う、」


「う?」


「うわぁぁぁぁー!」


いきなり叫び、俺から全力で距離をとる。


「い、いったいなんて本を読んでるんですか!?」


「ちょっと待て、そこに有るのは料理本のは…ず…、なん……だと?」


何故、何故だ、何故アレがここに有るんだ、アレは俺の所有物ではないし、俺の好みとは正反対の書物だった、名を『世界の幼女大図鑑〜これで今夜は寂しくない!〜』


「亜紀、ちょっと待ってくれ」


「近寄らないでください、穢れが感染します」


ゆっくり近寄ろうとする俺に本気で殺気を込めて睨み付ける亜紀にどうするかを考えなければならない

1、正直に話す

2、そうだよ、僕は亜紀みたいに貧乳とか、小さな子が好きなんだと存在しない性癖を告白

3土下座して話しを聞いてもらう

4彩に説得してもらう

5襲う


(さて、どれにしたものかひとまず二番と五番は論外だな、話しにならんし、四番も勘弁してほしいな、更なる厄介事に巻き込まれ兼ねない、となるとあとは一番か三番か、でも土下座はさっき使ったしなぁ、かと言ってまともに話を聞いてくれるとは思えないしなぁ、ホントどうしよう)




side亜紀


信じられない、確かに先輩は多少変態な部分もあった人だけど、まさかロリコンだったなんて。


(しかも、この表紙の子顔だけは凄く私に似てるし、もしかしてずっと私を狙っていた? もしそうなら先輩は危険だ、最悪彩にも被害が及ぶかもしれないから早急に始末しなきゃ)


「先輩、いえ変態ロリコン野郎、今すぐ貴方を殲滅する事にしたんで、懺悔を済ますまもなく無惨に死ねぇぇ!」


言葉と共に今出せるスピードと威力を最大限に引き上げ回し蹴りを放つ。


「うぉぉぉー!! 死んでたまるかぁぁー!!」


私の蹴りを精一杯身体を捻ることで回避したが体制を崩してしまったので私に向かって倒れ込んで来るのでボディーブローを叩き込む用意をする。


「ちょっ、待った」


「問答無用です」



にこりと今見せられる最大限の笑顔とパンチをレバーに叩き込んだ。


「ぐぼぁっ!?」


酷い悲鳴と共に床に倒れ込んだのでその上をわざと踏むようにしてゾンビのような呻き声をあげている先輩(へんたい)を無視し帰宅した。


(まったく、いったい先輩は何を考えているんだ、ただのエロゲやHな本ならまだしも、あんな小さな子や私に似た…)


そこまで考えて自分の顔が真っ赤に染まっているのを自覚する。


(私は何を考えているんだ!? 相手はあのど変態の先輩だぞ、確かにちょっとエロいところはあるけど、そのぶん誰にでも優しくて私を理解してくれてる―って違う違う、私は別に先輩の事が好きなわけじゃない!)


結局私はもやもやした気持ちを抱えたまま帰宅した。





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