表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

第三話

今回一部あるゲームをやっていないとわからない表現があります。

新井に頼まれた事は、とても簡単だった。

内容は『指導室に居る大輔の様子を見てきてくれ』と、簡単な仕事だったが、気分は晴れなかった。


「確かにあの可愛い笑顔を見れただけでも俺はラッキーだったと言えるけど、しかし大輔が相手だとはなぁ」


落ち込みながら廊下を歩き、目的の指導室で必死に反省文を書いてる大輔と遊を腹いせにこっちを見ているのを確認した後にシャゲダンしてやった。


(大輔が殺気を込めて睨んできたが大したことではないだろう)


多少スッキリしたので新井に報告しに2-5の教室に向かっている最中に切りっぱなしだった携帯の電源を点けて、携帯に来ていた亜紀からのメールを見て更なる不幸を確認してしまった。


「なんじゃこりゃー!!」


昔やっていたドラマ、太陽に○えろを若干意識しながら叫び、もう一度メールの内容を見てみる。


『件名、先輩へ

今すぐ2-3の教室前に来なければ、次回会った時が先輩の命日になる可能性がとても高くなります。

psもし、このメールを彩に見せたら骨はおろか塵の一つも残らないと思ってください』


(怖っ! 次会ったらあの子間違いなく俺を殺すよな、こんなことなら新井の頼み事を断ればよかったな、俺にとって+にならないことだったし)


これは俺にとって大きな選択肢だった、先に亜紀の場所へ行って殺されるか、新井の所に言って精神的なダメージを負うか、どうしたものかと悩んでいると俺の中で天使と悪魔が戦いを始めた。


『先に亜紀の所に行って亜紀をどうにかして抹殺するのよ』


(お前、本当に天使か!? 白い羽は生えてるけど中々エグいこと言うな、次は悪魔の言い分を聞こうじゃないか)


『先に新井の所に行って精神的ダメージを負う前に抹殺する、その後亜紀を抹殺して学校から逃亡する、これが最良だ』


(いやいや、お前らどちらも言ってることは犯罪だから、捕まるわボケ、それ以前に亜紀を抹殺する難易度は半端じゃないし、というか一方的に俺が殺られて終わりじゃね?)


全然気が乗らないが、とりあえず2-3に行く前に2-5に向かわなければ、無事に2-3から生きて出られるかわからないからひとまず亜紀ではなく、新井が待っている2-5に先に向かうことにした。


「よう、戻った…ぞ?」


「ひゃう!?」


2-5に着いたとたん驚くべき物を見てしまった。

なぜなら、新井が大輔の野球で使うバットに一心不乱にすりすりと頬擦りをしていたからだ。


「………」


「えっと、これには深い訳が有って」


「じゃ、俺は帰るから、アバヨ!」


「ま、待ったー!!」


ぐえっ、あの野郎俺が後ろを向くと同時に距離を詰めて首根っこ引っ張りやがった、それもかなり手慣れた動作で。


「ゴホゴホ、お前、俺を殺す気か?」


「そうね、この秘密を知られた以上死んでもらうのも良いかしら?」


(あれ? なんかキャラ変わってね?)


一目見たときから誰かに似てると思ったら漸く誰か分かった、こいつは亜紀に似てるんだ、だからあの殺人的な動きが出来たんだ。


「落ち着け、話せば分かる、落ち着いて話合おうじゃないか、きっと、いや必ず分かり合えるからその手に持った大輔の金属バットを持って近寄るな!」


「平気よ、一瞬だから」


ゆらり、ゆらりと動きながら近づいてくる新井、このまま大声を出せば助かるかもしれないが、近くの教室には亜紀が居る、これを見たら間違いなく俺を助ける側ではなく、殺す側に回るに決まってる、それだけはなんとしても避けなくてはならない。


(ならば俺が使える作戦は一つしか無いじゃないか、昔の人は良いことを言ったよな、三十六計逃げるにしかず、逃げるが勝ち、となぁ!!)


逃げ込む場所は幾つかに絞られる、一つは彩の居る、競技館、二つ目は自宅、三つ目は生徒指導室の三択に絞られた。


(どうする? 彩の居る競技館に逃げるか? いや、不可能だな、彩が盾になってくれるのは亜紀の場合だけだ、新井が相手なら大輔の所に逃げるか? いやいや、さっき散々煽ったばっかだからなぁ、新たな敵を産みかねない、となると残った場所に逃げるしかないか、全力で)


逃亡ルートを決めた俺は周囲を見渡し、ジリジリと距離を詰めてくる新井から離れながら、状況を改めて整理し直す。


(よし、落ち着けよ、まずここは萩野高校(通称萩校)の二階、靴は持っていなくて、2-5に居る、敵は目の前に居る新井に、二つ隣の2-3に居る亜紀、今俺に殺意を抱いているのはこの二人で、その二人から俺は死ぬ気で家に帰るつもりだ、ここから家まで走って10分、この下は直で玄関に繋がってる、すなわちこの階から飛び降りれば勝ちだ、よし勝てる!)


作戦を組み立てた俺は即座に行動に入る準備をする、まずは一瞬で良いから新井の目を眩ませる為に黒板に向かって走る。


「逃がすかぁぁぁ!」


背後からブンブンと手に持った金属バットを振り回し、追いかけてくる。


「おいおい、こんなの当たったら間違いなく脳挫傷かなんかは起こるな」


必死に逃げたり、向き合って金属バットを避けたりしながら少しずつ近寄り、黒板消しをとり、おもいっきり叩いた。


「くっ、げほげほ」


予想通り、隙が発生して、新井の脇からを通り抜け、助走がついたまま跳躍し、下へと落ちる。


「うおぁぁぁ、思ってたより高けぇ! よっと」


自分でも予想外な高さだったので少し取り乱したが、なんとか着地に成功した、周囲には人がいなくて助かったが、2-3の教室をふと見てみたら、般若の如く怒り狂っていた亜紀が俺を見てニヤリとするのが見えた。


(まずい、ここにいては絶対に駄目だ、亜紀の身体能力は新井を軽く凌駕し、俺より少し高いレベルだ、男の中でも身体能力が高いほうだと思う俺だが、逃げ足以外では奴にほとんど負けている、(逃げ足でもたまに追い付かれる)俺が出来たことを奴が出来ない訳がない)


校舎の下駄箱から靴を持っていき、全力疾走を始めると同時に亜紀も二階から飛び降りて来た。


(ええぃ、萩野の女性は化け物か)


「俺が言う台詞じゃないが、危ないから止めとけってそういうの!」


「ははは、先輩貴方を殺るためならば大体のことはやってやるさ」


いつの間に靴を履き替えたのか、亜紀はものすごい速さで追いかけてきた、きっとアレは何かイカサマがあると信じたいものだ。

校門を抜け、商店街に出た俺は人がよく通る場所だけを走り、人の合間を駆け抜ける。



しばらく走り続けると、商店街を抜けることが出来た、後ろを見ても亜紀が追いかけてくることはなかった、おそらく振りきれたのだろう。


「ふぅ、急死に一生を得たって感じか」


生き延びた事を感謝し、ゆっくりと帰り道を歩いて行く。


(ここまでくれば、あと少しだな)


目と鼻の先には目的地の団地『風花』(かざはな)が見えている、この団地の二階、205号室に着けば逃亡完了となる。


(しかぁーし! まだまだ油断は出来ないな、亜紀は目的地を知ってるだろうし、諦めの悪さは筋金入りだから待ち伏せでもしてるかも知れないな)


周辺に人影や嫌な予感は無し、安全を確認しながら入っていく。


(亜紀の姿は無し……か、俺の勝ちだ!)


205号室の前まで来た俺はすぐに制服のポケットから鍵を挿し込み、ドアノブを握り勢いよく回すが、何故か開かなかった。


(あれ? まさか開いてたか、いや鍵はちゃんと閉めたし、誰か来てるのか?)


俺は友達と遊ぶ時や彩達が来て俺が居なくても入れるようにドアの付近にプランターを置いて、土の中に合鍵を入れて置いてあるから誰かが来たのかもしれないが、今日は誰かと遊ぶ約束をした覚えは無いし、その類いのメールも来ていない、気になるが入れば誰が来たのかわかるので、深く追求せずに、もう一度鍵を差し込み、今度こそドアを勢いよく開けた。


「ただいま! 誰か居るのか?」


玄関で声をあげるが、シーンと静まり返っていて返事も返ってこない。


(もしかして本当に鍵を掛け忘れたのか?)

ゆっくりと足音を発てないように歩きながら自分の部屋のドアを開けた。


「………」


「………」


思わず沈黙してしまう、全身からは危険信号が鳴り響いている、部屋を開けるとさっきまで命懸けの鬼ごっこ(俺にとって)の相手が怖いほど素敵な笑顔を向けてこちらを見ていたのだから。

シャゲダン駄目、絶対に

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ