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第二話

なんとか二日で書き終えました。

キーンコーンカーンコーン

授業終了の鐘が鳴ると同時に指導員の『藤岡堅地』(ふじおかけんじ)、が教室に来てチョークで撃ち抜かれた二人を掴んだ。


(おそらく指導室行きだろうなぁ)


そんな風に思いながら見ていると目が会った。


「相原、お前もついでに指導してやろうかぁ?」


筋肉ムキムキの身体で睨み付けながら問いかけられたので命の危険が有りそうだし、何もしてないので丁重にお断りしておいた。


「ふん、まぁいいか今はこの二人を指導するほうが先だからな!」


ドスドスと足音を発てながら二人を引きづって教室から出ていき、俺はこれから間違いなく二人に訪れるであろう悲劇に手を合わせて拝んでおいた。


「さてと、俺も家に帰るとするか」


俺は高校に入学すると同時に柴川家を出ていき、現在は一人暮らしをしているが、先に言っておこう一人暮らしに憧れている者よ、全然自由では無いぞ、毎月光熱費や水道代やアパート代を払わなきゃいけないし、飯の支度や洗濯等も自分でしなくちゃいけないんだ。

しかし、俺には最高のお手伝いさんが居る!


「・・・くーん」


おっ、近づいて来たぞ将来良い嫁に成る我が妹が。


「祐君」


トテトテと走りながらこちらに近づいてくるのは俺を救ってくれた人、歳は俺より一つ下なので一年生として今年の春に入学してきたばかりだ。


「良かった、祐君まだ居てくれたんだ」


「まぁ、こっちは今授業が終わったところだからな、彩はどうしたんだ? 今日は弓道部の練習じゃなかったのか?」


俺が皆に心を開いてからは彩はすっかり俺に甘えたりするようになった。

彩は俺と違って早くも部活に入部したからそんなに暇な日はない筈なのだが。


「うん、弓道部の練習はあるけど、今日は私の家で家族揃って懇親会があ―っむぐぅ!?」


「わっ、馬鹿!」


俺は即座に彩の口を塞いで黙らせる。

懇親会をする理由は一つ、俺が柴川家から別居してこの高校付近のアパートに部屋を借りたからだ、その時叔父さんから出された条件の中に二週間に一度柴川家に家族全員で集まり、その間に何があったかを報告する、それが幾つかある条件の一つだった。

俺は柴川家に引き取られはしたが、名前や名字を変えることはしなかった、理由は単純下手に同情されたりその時の事を掘り返したりしてほしくないからだ、友達には単身赴任で両親だけ海外に行っている事にしてある。

幼い頃は親との縁が本当に切れてしまいそうだから変えたくなかった、今はまだまだ多くの理由があるんだが、それは追々語っていきたいと思う。


「うー! むむー!?」


おっと、深く考え込んでいたようでいつの間にか彩は苦しそうにしていた。

俺は慌てて手を離して解放した、彩は解放されると同時に精一杯空気を吸って吐いてを繰り返していた。


「ぷはっ、酷いよ祐君!」



「何を言うか、今のは変なことを言おうとするお前が悪い」


ぷくっと頬を膨らませて、怒っていることをアピールするが、俺にはひまわりの種を口に入れているハムスターにしか見えそうにない、近くに居る別クラスの奴がそれを見て俺には首を斬って死ねと言うジェスチャーをして彩には天使を見るような目で見つめていた


(中々器用な奴だな)


そう思うがとりあえず柴川家に向かうためその場から立ち去ろうとしたとき、廊下の曲がり角から何かが聞こえた、いや聞こえてしまった。


「彩を苛める奴は誰だーー!!」


廊下を全力疾走しながら角を曲がり、彩とその近くに居る俺を見つけて俺のみに殺気をぶつけながら走ってくる。


(すげー、あのスピードで曲がりきれるのか)


スピードに感心していたのが悪かった、いつもなら簡単に回避出来るものを一瞬の油断で奴の射程範囲内に入ってしまった。


「またしても相原先輩か、今日こそは死っねぇぇぇぇぇーー!!」


「ぐはぁっ!?」


ロケットの様に直進しながら接近する奴の普段なら避けられる飛び蹴りを油断していたから鳩尾に入れられ、メキョッと嫌な音がし、その音と共に派手に廊下を転がり、壁にぶつかることで漸く止まれた。


「あ、あのー相原先輩生きてますかー?」


「祐君大丈夫!?」


「………………」


「返事がない、ただの屍のようだ」


こんなときにでも馬鹿をやれるあの馬鹿女が恨めしい、死んだら必ず呪ってくれようぞ、最初は心配してくれてんのかなぁ、とか思ったが、奴のニヤニヤ顔を見てそんな感情は消え去った

そんなことより身体が痛い、これ常人にやったら間違いなく後遺症が残るぞと思いながら、なんとか動く身体を根性で立ち上がらせ、力の限り睨み付けて見る。


「良かった、生きてたんですね先輩、では私はこの辺で失礼しますね(ちっ、死ねば良かったのに)」


「良かった死んじゃったかと思ったよ」


「おいこらちょっと待てそこのドS、聞こえてないと思ってるかも知れないが聞こえてるぞ」


「なんの事ですか?(わざと先輩にだけ聞こえる様に言ったんですから、そんなこともわからないんですか理解できないなら死ねば良いのに)」


(その無駄な能力はもっと別なことに使えば良いのに)


「無駄じゃないですよ、私は彩の為だけに使っていますからね(先輩のようなグズとは違うんですよ)」


「心読まれた!?」


「考えてることが単純ですから顔に書いてあるんですよ」


「へ?」


咄嗟に顔を触りそうになるが即座に罠と気づいたので、睨んでやることにした


「ちぇ、あと少しで先輩の馬鹿差がわかったのに、(馬鹿でもそこまで無能ではないと)」


「駄目だよ、亜紀ちゃん、祐君にいきなり馬鹿なんて言っちゃ」


「はっ、すまない彩、相原先輩の悪口を言っちゃって、もう言わないようにするからどうか慈悲を」


決して俺の方を向くことなく、彩だけを見て答えるのは『松本亜紀』(まつもとあき)、彼女は俺より一つ下で彩とは小学校からの仲だ、常に彩の事を考えていてよく柴川家にも遊びに来ていたから俺の過去についても多少知っている。

昔は俺にも普通に接してくれていたが、いつからか今みたいに人を馬鹿にするようになったが、俺以外には愛想が良く、俺以外からは可愛いとか性格が良いと言われてる、銀色一色の綺麗なショートヘアーで女性にしてはかなり高い身長で彩に勧められてバレーボール部に入部している、因みに俺は男だが女のこいつと殴り合ったとしても勝てる自信はない、彼女の実家は松本流という徒手空拳を主とする武術の名家だ、彼女は三人兄弟の次女で実力的には弟の義孝より亜紀が強くて亜紀より姉の雪先輩が強いらしい、雪先輩も亜紀も跡を継ぐつもりはないらしいので、弟の『義孝』が継ぐらしい、亜紀は確かに顔は可愛いと思うが、俺に対して理由はわからないがとても敵対視している。


「それより祐君、本当に大丈夫?」


彩が心配してきいてくれるが、さっきのやり取りのおかげか、だいぶ痛みが引いてきたので平気だろう


「ああ、俺は平気だよ伊達に食っちゃ寝を繰り返していたわけじゃねえし」


「成る程、まだ殺れると(折角止めは勘弁してあげようと思ったのに、そんなに死に急ぎますか?)」


「いや、やっぱ保健室行ってくるよ」


やっぱり俺はこいつが苦手だ、確実に隙あれば俺を抹殺しようとしてるんだもん、因みに急に意見を変えたのはあいつが恐い訳ではなく、本当に痛くなっただけだよ、ホントウダヨ。


「さて、相原先輩は保健室に行くそうだから彩、一緒に帰ろう」


俺には絶対見せない笑顔で彩に言うが、彩はこれから部活の筈だ、もしかしてあいつ知らなかったのか?


「えっと、ごめんね亜紀ちゃん私部活が有るんだ、だから祐君と一緒に帰っててくれる?」


(彩、それは俺に死ねと言っているのか?)


「あ、ああ」


亜紀はかなりのショックを受けているようで嫌っている俺と帰ってくれという頼みをよく聞くことなく頷いていた。


「じゃあ祐君のことよろしくね、祐君に寄り道させちゃ駄目だよ」


俺に寄り道をさせるなと頼んでから小走りに武道場に走っていった。

流石に寄り道をしたくても出来ない、いやしたくないこいつと寄り道をするとろくな事にならない。


「……………」


亜紀は未だに茫然としているので、確実にチャンスだ、今なら口煩い彩も居ないし、天敵の亜紀は茫然としている、彩の部活終了まで暇なのでとりあえず保健室に行くという名目で指導室にいる大輔を誘って遊びに行こう。

そう思い亜紀の横をゆっくりとばっちりを喰らわないように通り抜け、去り際に『保健室に行くから先に帰ってろよ』と言い残し、ほんの少し足元に細工してあとはひたすら校内をダッシュ、なんで見た目が可愛い亜紀と一緒に帰らないかって? 俺の精神と肉体が持たないし、嫉妬で闇討ちされたくない。


二年生のクラスは三階にあるので、目的の指導室は一階の保健室前、仮に捕まっても保健室に行こうとしたといえば平気だろう、三階の階段の手すりに手を掛けた瞬間声が響く。


「アハハハハ、相原先輩? 今なら許してあげますから早めに戻ってきてくださいね?」


(まずい、あれは亜紀が本気で怒っている声だ、いつものからかう様な声ではなく、冷たく見下すと言うか、その筋の人には大人気な状態だ)


当然ながら俺にそんな変態チックな性癖はあるはずもなく、かといって戻っても確実に一発は殴られる、だとすれば俺の取れる道はただ一つだ。


「よし、亜紀から意地とか根性とかフル活用して逃げよう、生きる為には仕方がないことだ」


決意新たにその一歩を踏み出そうとした時、何かに腕を捕まれた気がした


「いや、これは気のせいだろう、いくらなんでもこんなに早くにたどり着ける訳がない気のせいだ」


振り向きたくない、振り替えったら死ぬ気がする、それでも俺は振り替えった、少しでも早く謝る為に。


「ごめんなさい!!」


「キャッ!」


(あれ? おかしい俺の予感ではパンチで気絶させられるか、蹴り上げで顎を撃ち抜かれるかの二択だと思っていたんだが)


状況把握の為に恐る恐る瞑っていた目を開けると全然違う人が立っていた。


「なんだ新井か、びっくりさせるなよ」


「なんだとは何よなんだとは、だいたいアンタが勝手にびっくりしたんでしょうが?」


俺の目の前に現れたのは我らがツンデレ代表、『新井涼子』(あらいりょうこ)さん、俺とは同じクラスで、金髪ツインテール、身長は平均的だが、胸はおそらく無いに等しい、彼女とは高校二年同じクラスという付き合いだが、俺と話すとボケとツッコミの漫才コンビが出来てしまうことで有名だ、漫才は疲れるからあまり話したことは無かった筈だが、告白? そんなフラグを立てた覚えは無い、ならば正式に漫才コンビのお誘い? 美人だが、それによって発生する二次災害がとんでもないことになる。


「悪いが、断らせてもらう、他を当たってくれ」


「まだ何も言ってないわよ! それに、こういうことを頼めるのアンタぐらいしか居ないし…」



(ヤバい、めちゃくちゃ可愛い、金髪ツンデレ最高、ヤッホー!)


顔を赤らめながら、下を向いて恥ずかしそうに呟く姿はいつも以上に可愛いと本気で思えた。


「俺に任せとけ!」


「本当?」


とても嬉しそうな顔をしたので、それだけで俺の荒んだ心が癒されていく、この笑顔を見せられればたとえどれほど面倒なことでも充分わりに合うだろう。



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