第十話
遅れてすみませんでした、言い訳は後書きに
オタクとくだらない話をしながら教室に戻ったら、鬼のような顔をしていた佐上と風紀委員達が待っていた。
すかさず気絶してる大輔を投げ渡し、俺に足払いを掛けようとしたオタクを踏みつけ教室を飛び出した。
「「待てこの野郎!!」」
何故か教室に置いていった二人には佐上しか残らず、ほとんど全員が追いかけてきた。
「待て待て、風紀委員が廊下を走るなどとルール違反をしていいと思ってるのか?」
そういう俺は特に縛られるものはないので、廊下を走っているが、風紀委員という役職を持つ者は模範的な態度を示さなければならないのでこの行為はマイナスのイメージが強くなる。
「ふふふ、お前らバカルテットでさえ、我々風紀委員に対して対策を練っているのに、いつまでもこの安藤正が黙っているとでも?」
この安藤正という男を一言で言うのであれば石頭の眼鏡だろう、風紀委員長が温和な性格で優しいと言うのであれば、この風紀副委員長はまるで逆、常に冷酷で誰に対しても厳しい、そんな男だ。
「おいおい、小学校からのよしみだろ? ちょっとのおいたぐらい見逃してくれよ」
こいつは一応小学校からの同期で昔は仲がここまで悪く無かったんだが、柴川家、つまり彩と一時期でも一緒に暮らしていたことが気にくわなかったらしいので、中学時代は喧嘩ばかりだったが、高校生になってようやく何に怒っていたのかを理解した俺はとりあえず謝罪だけはして態度はある程度まで軟化した。
(まさかこいつも彩の事が好きだったなんてな)
「う、うるさいお前と一時期でも友人だった時代があったなんて情けなくなってくる」
「まぁまぁ、そんな怒んなってところでどんな対策をしてきたって?」
いい加減走り疲れて来たのでチャイムまでの時間稼ぎの為に立ち止まると、向こうは逃げる気がないと判断したのか止まった。
「ふん、これを見ろ!」
正の手には一枚の紙が握られていて紙には『バカルテットを捕まる為に廊下を走ることを許可します』とわざわざハートマークを着けた生徒会長のサインがあった。
「なぁ、お前こんなことにわざわざ対策とか大きく出たのか?」
「何を言っている、当たり前だろうこの紙が有る限り我々は全力で貴様等を追えるのだからな」
どうやらこいつは完璧にマヌケらしい、そんな大切な物をわざわざ俺に見せて良いと思っているのだろうか、しかも俺のほうが足が速いと言うのに。
「なんでもいいんだが、彩が呆れて見てるぞ」
「なにい!?」
正の後ろを指して振り向いた瞬間に風紀委員から紙をぶんどった。
「し、しまったぁ!」
「これで形勢逆転だな、さーて破るか」
「よ、止せ我々の苦労の結晶をあっさり破り捨てるというのか?」
(この期に及んで往生際が悪いが、諦めない事に免じて少し遊んでやるか)
さて、どうしてくれようか
1紙を燃やす
2条件付きで返す
3ヤギに食わせる
4このまま逃亡
(まずは1の案だが、焼くのも面白いが肝心な火がない、2の条件付きで返すは中々使える案だな、そして4のこのまま逃げるは疲れたから却下、酷いのは3のヤギに食わせるだな、学校にヤギが居るわけ……なんだと!?)
一瞬我が目を疑った、何故なら冗談抜きで俗称バカルテッドの最後の一人、先週修行に行くと言って行方不明になった女、如月杏子がヤギを引き連れて帰ってきていたからだ。
「ククク、久しぶりに学校に来てみれば随分楽しそうだな?」
この如月杏子という女、面と向かっては言わないが、かなりの厨二病患者だ。
そしてそれを体現するかのように怪我をしている訳でもないのに右目に黒い眼帯、自分には別の人格が有るとかいう始末だ。
「一週間姿を眩ましたと思ったらヤギ引き連れてなにしてんだアンタは」
「見れば分かるだろう? 神であるシュブ=ニグラスを引き連れて君を助けに来たのだよ」
「そのシュブなんとかは貴様のペットか? そもそも動物を神聖なる学舎に入れるとは許さんぞ!」
「ふん、石頭のメガネが神の力を借りた私に勝てると思っているのか?」
「「うおぉぉー、一週間ぶりにまた杏子様の勇姿を見れるぞ!!」」
「「正副委員長頑張ってー!!」」
いつの間にか付近にギャラリーが集まっていて当事者の俺は眼中になく、如月と安藤の応援が始まっていた。
実はこのようなバトル的な展開は始めてでは無く、むしろ生徒会長の『面白いから良し』の一言で回数が増え、今では一種の名物と化している。
しかもあの二人はかなりの人気があり、非公式ながら応援団があるぐらいだ。
如月はあのミステリアスな雰囲気と厨二病具合、そして何より強い。
それに対して正は身体能力が高い訳でも無いが、人一倍強い信念と執念が人気を呼んでいるらしい、ちなみにどちらも異性のファンが多いらしい。
………爆発しやがれ! はいはいどうせ俺は戦い方がせこかったり逃げてばっかりでファンなんて居ませんよ、畜生がぁ!
「あれ? 終わってる」
二人を妬んでいる間に如月が安藤に大量の紙を投げつけヤギに襲わせるという作戦で一方的だった。
「たとえ正義だろうが悪だろうが勝った者が真の正義なのだよ」
「「うおぉぉー、杏子様ーっ!!」」
ギャラリーからは歓声が沸き上がり、負けた正は部下の風紀委員に連れられ撤退していくのを見送り、昼休み終了のチャイムが鳴るのと同時に教室に戻り事なきを得た。
………あ、ちなみに許可証はヤギに食わせたら腹が一杯になったのか知らないがヤギとは思えない速度で走り去りました。
始めに遅れてすみませんでした、原因はと言うと仕事が始まり時間が取れなかったということと、フォークリフトの免許を取るのに忙しかったからです、暫くは今回のように不定期投稿になりそうです。