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第九話 Bルート

どうしてこうなった

(それより飯だどこかに行こう)


このまま美少女達と会話したり出来れば食事をしたいが、実際問題このままでは食事もまともに出来そうにないので早々に立ち去る用意をした。


「じゃあオタク、大輔は任せた」


ふと見れば青髪のお嬢さんに熱心な目線を向けてる大輔と行動の遅れたオタクを無視し、屋上を後にした。

お嬢さんは少し残念そうに、メイドは驚きの目を向けて来たが空腹には勝てず、気にしなかった。


(さてと、どこで飯をくうか)


出来るならば人が少ない場所で落ち着いて食べたい、さっきまでは購買戦争や見知らぬ二人組と変わった出来事が二つもあって少々疲れてしまった。


「たまにはあそこに行ってみるか」


先日授業をサボって寝る場所を探していたらたまたま着いたのだが、ほとんど人が来ないし、回りは木々に囲まれていてリラックス出来ると人混みで疲れた今の俺にはうってつけの場所だ。




学校のはじっこ、誰も好んで来ないような自然に囲まれた絶好のポイント。

予想通り誰も居なく、ゆっくりとベンチに腰をかける。


「よっこらせっと」


そのまま持ってきていたDXサンドと自販機で買ったコーラを開ける


「なるほどな、みんなが買いたがって居たのも理解出来るな」


DXサンドの凄いところは大きさに反する値段だけではなく、マスタードや肉が雑な味になっていないことだ。


「これから購買の時にはお世話になりそうだな」


暖まっていないのが多少残念ながらも美味しく頂く。

普段ならば弁当の俺だが、今日はオタクの情報で購買に新作が出るのを知っていたから作らなかったが、たまには良いだろうと思えた。




食事も終わって数分、暖かさと居心地の良さが原因でうとうとして来た。


「ふぁぁぁ、寝みぃ」


ぐーと身体を伸ばしベンチに寝っ転がりながら次の授業をサボるか考える。


(今から教室に向かえば余裕で間に合うけどなぁ)


考える事は購買戦争の時に出し抜いた佐上のことだ。


「あいつ結構根に持つタイプだからな」


以前オタク達と放送室を占拠して昼休みに電波ソングを流す行為をしたところ、オタクと他数人はその場で御用となったが、俺と大輔だけは即座に撤退し事なきを得たと思ったのだが、昼休みが終わり教室に戻ったら大輔共々捕獲され、フルボッコされたあと放課後説教コンボをされた。


(戻らない方が良いんだろうな)


悪い事をした自覚は有るが怒られたくはない、ならばほとぼりが覚めるまでこの静かな場所で時間を潰そう。

ベンチに仰向けなり目を瞑り暫しの休息を取った。




―――どこにも居ない。

校内全てを探し終え、屋上で転校生に粗相を働いていたアイツの友人を叩きのめして確保したが、元凶である相原祐介だけが見つからない。


(……校内探した、後は外か…)


自分達は現在風紀委員長から昼食の為全員休憩を命じられて、各自食事を楽しんでいるだろうが、自分は人が多い場所が苦手故にいつも外で食べている。


「…………」


考えてみれば入学してからほとんど相原達に振り回されている。

入学式の件は相原がナンパをしていたと勘違いをしてクロジアで斬りかかる等をして非があると反省しているが、その後の行動は目に余る状態だった。

例えば入学して一ヶ月後にあった春の遠足、あれが悪夢の始まりだった。

教師含め私とバカルテット(相原、多田、篠家、如月の4人のこと)以外全員が酒に酔った状態で終了するという最悪な事件だった、風紀委員の中では『春の悪夢』と呼ばれている。


その後も奴らとの戦いは終わらず、今も戦い続けているが最近風紀委員と奴らの騒動を楽しむ馬鹿共が現れたりするなど、自分等にとって困ることばかり起こっている。


「……打つ手は無しか……」


結局一つでも多く奴等の目録を潰すしか、他はないだろう。





「………何故……?」


ふと漏れた自分の呟きに答える者など居るわけもなく、自分にとってお気に入りの場所に先程まで捜していた男が気持ち良さそうにベンチで寝ているのだ、驚かない訳がない。


(………起こすか)


幸せそうに寝ている者を起こすのは良心が痛むが仕方ない、確保出来るときに確保して事情聴取をしておきたい。


「……っ!?……しまった……!」


簡易式の手錠は必要ないと思い風紀室に置いてきてしまった、これでは確実な確保は出来ない、どうしたものだろうか。





嫌な予感がする。

さっきまで寝ていたが近くに誰か来たのだと思い、目を開けずに集中して周囲を窺うと直ぐ目の前に佐上がいた。


(マズイマズイマズイ、これでは捕まる)


周囲に逃げ場が無い以上下手に逃げても捕まるだけだ、ならば話術で逃げるしかない、どうする俺!?


1おとなしく捕まる

2勝負だ佐上!

3寝てたら平気じゃね?

4秘密道具を使うしか

5犯す


(待てよ、今回浮かんだ選択肢アホだろ、どうやって逃げるのかを考えてるのに一番の捕まるとか、寝てたらマズイから考えてるのに寝るとか、五番に至っては論外だな。)


考えてる内に佐上がクロジアを取り出したのでひとまず起きることにした。


「ふわぁぁぁ、よく寝たって、なんで佐上が?」


白々しいのはわかっているが、仕方ないので演技を続ける事にする。


「…………昼食………」

普段より返すのが遅いのはタイミングよく起きた俺を警戒しているのだろう、一瞬でクロジアをポケットに入れてやり過ごすつもりだろう。


「なるほどな、良かったら一緒に食わないか?」


主食のDXサンドは食べてしまったが、授業中や帰りに食べる為に作ってきたお菓子がある、これで誤魔化せなければ仁義なき鬼ごっこが始まるだろう。


「……良いだろう」


なんとか了承してくれたので俺もポケットに入れていた饅頭を一つ取りだし、佐上に投げ渡す。


「………これは?」


「俺が気まぐれに作った饅頭だよ、市販のより味は劣るかもしれんが良かったら食って感想くれ」


突然渡されたことに驚きながらもうなずいてそのまま食べてくれた。


「………市販よりはマシ、甘さ足りない」


「やっぱりそうか、甘さは俺基準とはいえ市販のよりマシって言われるとは思わなかったな、サンキュー」


もちろんお世辞なのだろうが、ちゃんと評価してくれてましては改善点も教えてくれた佐上に感謝しつつ俺も一つも口に入れる。


「…………」


なぜか佐上は女の子らしい弁当箱を開け、卵焼きを箸でつかみこちらに向けた


「えーと、これは?」


「………お礼」


本人も恥ずかしいのだろう見れば佐上の顔は赤く染まり顔を背けている、正直に言おう可愛い。


「あ、ありがとうでも恥ずかしいな―いってえ!」


「………食え」


恥ずかしいと言った瞬間に殴られ、頭を抑えたが普段のキレと威力は発揮することは無かった。

佐上は箸で掴んだ卵焼きを向け続けて待っている、おそらく俺が食べるまでやり続けるだろう。


「じゃ、遠慮なく頂きます」


向けられた卵焼きを食べる時に佐上の顔を見たら真っ赤になっていた、そう言う俺も確実に真っ赤だろうなにせ年齢=彼女居ない歴だからこんなシチュエーションに出会えるわけがない


パクっ、モグモグゴクン


「………どうだ?」


心配そうにこちらを覗き込む佐上の表情とは裏腹に俺は舞い上がっていた。


「うまい、うまいぞこんなうまい卵焼きを食うのは初めてだよ」


甘さは控えめ、しっかりと火は通りふっくらとした生地、全てが俺の好みだった。


「………っ!?」


「なぁ、こんなにうまい卵焼きどうやって作るんだ? 自分で作ったりするんだけど中々上手に出来ないんだよ」


自分で作れるようになれば弁当に入れるレパートリーが増えるし、出来るのであれば作ってみたい。


「…いつか教える」


「そっか、じゃあまた今度教えてくれよ、そろそろ昼休みも終わりだし戻るか」


そう言って座りっぱなしだったベンチから腰を上げ、荷物を纏めようとした時に佐上がポツリと呟いた。


「…また」


「どうした?」


「……また、明日ここで」


その時佐上が言いたい事をようやく理解した、明日もまた一緒に食べたい、俺の思い込みならそれで仕方ないが、佐上は俺との食事に何かしらの楽しみを持ってくれたのかもしれない。


「ああ、また明日ここでな」


「………じゃあ」


お互い到着地点は同じだが、別の方向に向かう。


(俺は佐上のこと、いや遊のことが好きなんだな)


考えて見れば単純な事だった、今まで俺が彼女にしていたのは全て興味をしめして欲しかったからだ、もしかしたら初めて会った時から好きだったのかもしれない、だから今日偶然食事をしたこと、明日も誘ってくれた事が嬉しかった、二年になってようやく自分の気持ちに気づけたのはなんとも情けないことだろう、だからもう止まらない、その結果酷いフラれ方をしても構わない、自分の心に嘘はつかないとあの日決めたから。


(今はまだヘタレで勇気はないけど、必ず告白してみせる!)








―――あれ?

どうして俺はこんなことになっているんだろう?

目の前には倒れた俺を見下ろす少女、手には血濡れたナイフと狂気に染まった顔。

―――そうだ、俺はあの少女に刺されたんだった。

理由なんてわからない、遊と明日の昼食の約束をして、別の方向から教室に向かった筈なのにたどり着けなくて、学校の中にも入ることすらできなくて理解出来ない何かに吹き飛ばされ、気がついたらこうなっていた。

かなり深く刺されていたのだろう、地面に流れた血はまるで水溜まりのように広がっている。


「君は…誰なんだ? どうして俺を」


助からないのは理解した、だけど何故俺がこんな目にあったのだけは知りたかった。


「アハハ、なんで? 簡単だよ君が産まれてきてはいけなかったから、昔言われたでしょ? 今は亡き母親からね?」


「な、に?」


わけがわからなかった、何故見たこともない少女が俺の過去を知っていたか、しかもかなり詳しく、あの言葉は狂った母の妄言では無かったのか。


「じゃあ、そろそろ死のっか?」


狂気に満ちた笑顔を浮かべ手に持ったナイフで串刺しにしようとする。

そんな絶望の中、最後に浮かんだ景色は遊と一緒に昼御飯を食べたあの場所だった。




―――願わくは、俺と同じ境遇に誰も会いませんように。

ひとまず、投稿がかなり遅れてすみませんでした、体調を崩したり、花粉症が酷くなったりと大変な事が続いて投稿出来る状態ではありませんでした、次話は二週間後ぐらいを目処に頑張ります。

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