決めなきゃならないこと・story7
中絶手術のために産婦人科へ行き、前診断を受けました。手術は来週の金曜日に決定。
今日は同意書をもらい、帰ってきました。
中絶に対する父親の同意書。
父親は行方知れずですから正式なサインはもらえません。誰かちがう人に書いてもらうか。自分でちがう筆跡を描くか。
そもそも本当の名前を知らないので、どんな名前にするかから考えなきゃなりません。産科の帰りに氏名画数の本を買ってきたので、これからいい名前を見つけます。
一緒に赤ちゃんの名前も考えます。
来週死んでしまう赤ちゃんですが、ほんの数週間でも生きていたのですから、名前くらいはあって当然だと思います。
そもそも性別を知らないので、どちらか決めなきゃなりません。
同意書をくしゃくしゃに丸めて、居間の角へ放り投げました。金魚か熱帯魚、どちらかの水槽へ当たったら男。当たらなかったら女。
慎重に狙ったつもりでしたが、わたしを飛び立った同意書はなんのコントロールもなく、水槽から2メートルも離れたキッチンの入口へ見えなくなりました。
「女の子か」
わたしは本を開き、男の子のページを探しました。
「やっぱり男の子が欲しい」