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大切なものを失った伯爵が奴隷のダークエルフ少女を買ったら、いつの間にか最強の領地になっていた……  作者: 積と和〝
第1章 出会い

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奴隷市場で出会った少女

初めて投稿します。積と和〝(セキトヴァ)と申します。

ちょっとシリアスとプチラブコメ要素も織り交ぜていけたらと思っています。

まだまだ拙い部分もあると思いますが、楽しんでいただけたら幸せです。

ブックマークや評価、感想などいただけるととても励みになります。どうぞよろしくお願いします!

当面は毎日更新予定です。

「よし、この娘を買おう」


私の言葉に、隣に立つ執事セバスが小さく息を呑んだ。

「旦那様、本気でございますか」


奴隷市場の檻の前。

鉄格子の向こうに座り込んでいるのは、ひどく痩せた少女だった。


浅黒い肌。

尖った耳。


――ダークエルフだ。


年の頃は十歳ほどに見える。

だが奴隷商人は言った。

「十四歳ですよ。少々痩せておりますが、健康には問題ありません。ほら、立て」


乱暴に腕を引かれ、少女がよろめきながら立ち上がる。

その瞳は、怯えきっていた。


知らない人間。

知らない場所。


そしてこれから自分がどうなるのかも分からない。

そんな恐怖が、ありありと浮かんでいる。


私はその目を、しばらく見つめた。


……似ている。

半年前に失った、娘に。


「……旦那様」

セバスが控えめに声をかけてくる。

「ダークエルフです。しかも幼い。扱いも難しく、余計な噂も立つでしょう」


「分かっている」

私は短く答えた。


ワイネル王国で代々伯爵家を賜っているノード家、その11代当主の私、アルフレッド・ノードは初めて訪れた奴隷市場でいわゆる奴隷というものを買い求めている。


ここは王都の外れにある奴隷市場。

城壁の外側に追いやられるようにして作られた場所だ。


この国では奴隷の所有自体は違法ではない。

だが、ここで売られている者たちの多くが、まともな経緯で奴隷になったわけではないことも知っている。


誘拐。

略奪。

戦争。


特にダークエルフは、人族の国では差別される種族だ。

まともな扱いなど期待できない。


私は少女の隣を見た。

そこには、さらに小さな少年がいた。

少女の服の裾を掴み、必死に隠れようとしている。


「兄弟か?」


奴隷商人がにやりと笑った。

「ええ、2人は姉弟です。まとめて売れればありがたいんですがね。弟の方はオマケみたいなもんです」


その瞬間。


少女が、かすかに顔を上げた。


震える声で言う。

「……お願い、です」


言葉はワイネル語だった。

だが、少し訛りがある。


「弟も……一緒に、連れて行ってくれますか」


その言葉を聞いて、胸の奥がわずかに痛んだ。


私は、半年前に妻と娘を失った。


妻フィーネとの関係はすごぶる順調だった。政略結婚とはいえお互い好きあって結婚した。娘のクリスティーナ、それこそ目に入れても痛くないほど可愛がっている我が家の一人娘だった。


アンネス山の峠。

馬車事故。


深い谷底に落ち、魔物に食われたのか遺体すら見つからなかった。


それ以来、私は決めていた。

もう二度と、大切なものは作らないと。

人と深く関わらなければ、失うこともない。


だから――奴隷を買うことにした。


奴隷ならば、情が移っても手放せる。

もし何かあっても、屋敷の者ほど心を痛めることはない。

そう思っていたのだが。


私は小さく息を吐いた。


「二人とも買おう」


奴隷商人の顔がぱっと明るくなる。

「ありがとうございます! さすが旦那様、見る目がある!」


隣でセバスが、わずかに肩を落とした。

「……旦那様は本当に、お優しい」


「違う」

私は首を振る。


優しいわけではない。


ただ――


この姉弟を、ここに残す気になれなかっただけだ。


「では手続きと支払いを済ませてまいります。」

神妙な顔のセバスは少しにやけた表情の商人と一旦部屋を出て行った。


ーーー


商人が鎖を外す。


自由になったはずの少女は、それでもすぐには動かなかった。


恐る恐るこちらを見る。

まるで、信じていいのか迷っているように。


私はしゃがみ込み、少女と目線を合わせた。

「名前は?」


少女は小さく答えた。

「……サラ」


そして隣の少年の肩を抱く。

「弟は……サンです」


私は頷いた。

「サラ、サン」

「これからは私の屋敷で働いてもらう」


二人の表情が、わずかに強張る。


当然だろう。

奴隷の未来など、ろくなものではない。


だが私は続けた。

「安心しろ、悪いようにはしない」


サラはしばらく私を見つめていた。


そして――


ほんの少しだけ、頷いた。


それが、私とダークエルフの姉弟との最初の出会いだった。

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