フィルド・ノーズ市役所③
あまり調子は良くない。
死神と違い、僕はただの人間だ、さっき打ち付けられた痛みが残っていた。
だが、相対しなければならない。
翼の生えた男に、追いつかれてしまった。
「正直、ここまで時間を食ったのはお前が初めてだ。」
空中で、互いが見つめあう。
一人は、相手の能力を警戒し、動けない。
一人は、ダメージで、意識が飛びそうだった。
先手は翼が生えた男からだった。
急接近し、持っていたナイフを振りかざす。
不意打ちだ、確実に腹に刺さるはずだった。
「カァン!!」
何かにぶつかり、ナイフが弾かれた。
確かに刺さったはずだ、ナイフと体の間には何もないはずだった。
ナイフは地面に落ち、攻撃手段を失った。
「うわああああああぁぁぁ」
殴られた、痛みで飛んでいるバランスの意識が消えてしまう。
コントロールを失った直後、丸いものを投げつけられた。
それは炸裂し、あたりを煙で覆った。わからない。
上も下も右も左も、どこに奴がいるかも、飛べているのかも。
パニックになった体は、自由落下を受けいれた。
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助かった。
煙幕と、相手が飛んでいるのが功を奏した。
ヤマカンだったが、ガードもできたらしい。
さて、ここから降りなきゃいけない。
さっきの男が昇ってくる前に、いろいろ確認をしていた。
その結果、編み出した方法がある。
僕は上着を脱ぎ、手をたたいた。
やはり、力がみなぎるような感覚がする。
「手をたたく」 これが発動条件なのだろう。
その状態で上着に触れる、そしてイメージした。
(ゆっくり、ゆっくり降りれますように)
さっき「宙に浮かんでいる」とイメージしたから僕は浮かんだのだ。
上着に触れ続け、僕の体はゆっくり下降し始めた。
大成功。
その後、何もなく地面について安堵した、待ち伏せをされていなかった。
すぐ近くで轟音が聞こえてきた。
そこには、さっきの男と警備の人の姿があった。
…このタイミングで逃げようかとも思ったが、どうやら僕は優しいらしい。
様子を見ようとした瞬間、こちらに走り出してきたので隠れた。
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奴は強いが、近づかなければいい。
私なら、それができる。
再び相対した。
一人は、不可避の質量で潰す者。
一人は、手負いの警備だった。
私の能力は、「斬撃を飛ばす」だけだ、しかしさっき、奴のが分かった。
おそらく、一つの物しか足止め ーー つまり動きを止めることができないのだろう。
私は能力を発動した。
斬撃が飛んできた。すぐに能力を発動し、躱す。
さらに斬撃が飛んできた、少しかすった。
斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃、斬撃
,,,,無理だ、本体を叩くしかない。
斬撃の波状に隠れ、隙を伺う。
見える、斬撃は一定だ。躱してあいつを殺す。
ルートが見える、斬撃の位置には間隔がある、行ける。
急速に接近、斬りかかった瞬間だった。
「来たああぁぁぁ!」
体中をもう一人の警備に裂かれた。
わざとだ、わざと通れるような攻撃をしたのだ。待ち伏せを食らってしまった。
体をわざと飛ばし、少し距離をとる。
警備の頭上にケルベロスが飛びついた。
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やばいやばい!
あいつら後ろのやつに気づいてない!
手を叩く、力がたまる。
「何とかなれぇぇー!」
ケルベロスに手を伸ばした。
風を切った音とともに、僕の何かが炸裂し、ケルベロスに風穴が空いた。
,,,,,,ケルベロスに風穴があいた?
は? いやいや、そこまで行く?
なにこれ、何この能力、こわ。
「は?」
目の前でケルベロスが貫かれた、すでに絶命している。
大事なのは、何がケルベロスに当たったのかだ。
俺には、何もぶつかっていないように見えた、見えない何かにぶつかったのか?
思えば、さっきの男は、見えない何かに乗っているように見えた。
こんな事ができるのは、奴しかいないだろう。
俺は、近くの女を人質にした。
「それ以上近づくな!」
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奴は人質を取った。
正直、ここまで街を破壊しておいて最後にこれか。
「それ以上近づくと、こいつを殺す」
「無駄だ、抵抗はよせ」
「黙れ、言うことを聞け!!」
私は斬撃を出した、奴は人質を盾に使った。
斬撃は曲がり、奴に命中、意識を奪った。
「こちら市役所前、不審者を確保。」
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目を覚ますと、私は外にいた。
起き上がり、市役所前だと気付く。
急いで辺りを見渡す、彼を探す。
ーーーフィルド・ノーズ市役所は、全壊していた。
「いたーーー!」
声のするほうを見る、傷だらけの彼がそこにいた。
守れなかったのか、私は。
「良かった~~~
どっか行っちゃったかと思った~~」
「あ、ああ、すいません!あなたを守れなかった」
「いや、大丈夫だよ」
なんとか彼女を宥め、やっと笑ってくれた。
「さて、戸籍の書類もあるし、帰ろう」
「そうですね」
「いや、帰さんけど。」
僕は意識を失った。
最後に見たのは、警備の人の顔だった。




