第6話 魔王、資金不足に泣く
リリトヴェールとアランはさっそく森に向かい、探索をはじめた。
リリトヴェールは杖を両手で掴み、隣を歩くアランに言った。
「レベル上げのために魔獣討伐を中心にやるよ。その合間に薬草を取ろう」
それにアランは困った顔をした。
「俺、薬草の見分け方は分からないよ」
「私が教えるから大丈夫」
二人はさっそくビッグウルフの姿を見つけたが、ビッグウルフは二人に気がつくとすぐに逃げてしまった。
そんなことが何度か続き、リリトヴェールは、はたと気がつく。
――はじまりの村からここまでくる間も魔物の襲撃があまりないと思ったら、私の強さを気取られているのか? アランのレベル上げのためにもレベルを下げておかないと……。この辺りならレベルを下げたままでも大丈夫だろう。
リリトヴェールは目を瞑って、再びレベルをアランに合わせた。
すると、次に行き会ったビッグウルフは逃げずに襲ってきた。
アランは勇者の剣を抜き、リリトヴェールは杖を構えた。
――アランの実力が知りたいから、今回は後ろで控えておこう。
アランが駆けだしてビッグウルフに切りかかったが避けられてしまった。
ビッグウルフはアランに攻撃を仕掛け、アランはそれを剣で防御した。
アランはすぐさま態勢を立て直し、またビックウルフに切りつけた。
今度は当たり、ビッグウルフは魔石に変わった。
アランはそれを拾う。
アランの戦いを見ていたリリトヴェールは明るい表情で頷いた。
「アラン、なかなかやるじゃん」
アランは鼻高々に言った。
「まぁね。子供の頃から親父に習っていたから」
――けっこういい動きをしていた。これも勇者の素質というやつなのかもしれない。
リリトヴェールはそう考えながら、森の探索を進めていると、木の根元に薬草を見つけた。
「アラン、見てごらん。これは解毒草。葉っぱの周りがギザギザしているのが特徴。匂いを嗅ぐと、ちょっとツンとした香りがするんだよ」
リリトヴェールが隣に座るアランの鼻に解毒草を近づけると、アランは顔を顰めた。
「ほんとだ。鼻の奥がツンとする」
そして、アランはくしゃみをした。
リリトヴェールは笑った。
「これで解毒草は覚えたでしょ?」
アランは鼻を擦りながら頷いた。
魔獣討伐の合間に薬草を集め、気がつけば夕暮れが近づいていた。
リリトヴェールは赤く染まりはじめた空を眺めて言った。
「そろそろ帰ろうか。冒険者ギルドに寄って、換金してもらわないと」
二人は冒険者ギルドの受付で今日の成果を見せた。
受付の女性は魔石や薬草の鑑定をはじめた。
「今日の報酬は小銅貨三十枚ですね。お疲れさまでした」
受付の女性はそう言ってカウンターに支払金を置いた。
それを見てリリトヴェールは目を丸くした。
「え? これだけ?」
受付の女性は困ったような笑みを浮かべた。
「申し訳ないのですが……」
リリトヴェールはショックのあまり口元を手で押さえた。
「これでは宿代にもならないじゃないか……! お姉さん、他に報酬のいい仕事ない?」
「Cランクになればもう少しいい仕事がありますよ。頑張ってレベル上げしてくださいね!」
それを聞いたリリトヴェールは項垂れた。
「しかたがない。次の街に行きながらレベル上げをした方がいいのかな? ここの他にも冒険者ギルドはあるの?」
受付の女性は一枚の地図を取り出した。
「はい。大きな街にはだいたいありますよ。どちらに向かう予定ですか?」
「デランジェール王国に向かおうと思っているんだけど……」
女性は地図を指差した。
「そうすると、少し道は外れますが、ラングザンの街にあります」
リリトヴェールは悩んだ。
――このままここでCランクになるまで滞在するか、遠回りになるがラングザンの街まで行きながらレベルを上げるか。後者の場合、旅費が持つか心配だ。真冬の今、野宿は避けたいし……。
すると、ひとりの男性冒険者が声を掛けてきた。
「どうかしたのか? 新米冒険者」
リリトヴェールは顔を上げて、その冒険者を見た。
髭面で、がたいのいい冒険者だった。
女性がその男性冒険者に笑顔を向けた。
「ジャンさん。アランさんとリリーさんが困っているみたいで……。ジャンさんはこの辺りで長く冒険者をされている方で、Bランクの凄腕冒険者なんですよ」
ジャンは困ったような顔をした。
「アンヌ、その紹介はやめてくれ。恥ずかしい」
受付の女性はアンヌというらしい。
リリトヴェールはジャンに事情を説明した。
ジャンは少し考えてから答えた。
「俺だったら、ここでCランクまで上げるな。それでダンジョンに潜って、ある程度資金を貯めてからデランジェール王国に向かう」
ジャンはカウンターに置かれた地図を指差した。
「ラングザンにはダンジョンがない。ここよりも稼ぎが悪いのは確かだな。Dランクの依頼は魔獣討伐などもあるが、そんなに稼げるものではない。護衛とかの方が割はいいが、その分時間がかかる」
リリトヴェールはジャンの話を聞いて頷いた。
「ジャン、ありがとう。しばらくは王都に滞在して、Cランクを目指すよ」
ジャンは腕を組んで頷いた。
「おう。俺はだいたいここの酒場か、ダンジョンにいる。困った事があったらいいな」
リリトヴェールとアランは頷いて、お礼を言った。
「おう。アンヌ、これ今日の分」
ジャンはそう言って、カウンターに魔石を置いた。
魔石はリリトヴェールとアランが集めてくるものよりも大きくて、量が多かった。
リリトヴェールとアランがびっくりして見ているのに気がついて、ジャンは笑った。
「ダンジョンに潜ってきたんだ。地下四階までな」
リリトヴェールはアランに言った。
「アラン、頑張ってレベル上げして、ダンジョンに行くよ!」
「うん、そうだね! リリー」
二人は決意を新たにした。




