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最強魔王、引退したい。でも勇者がだめすぎるので、育成はじめました。  作者: 冬木ゆあ


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第34話 魔王、シャルルに手を焼く②

 その日の夜。

 リリトヴェール、アラン、ニコルがいつものようにベッドに座り、おしゃべりしていると、シャルルが遠慮がちに声をかけてきた。


「僕も、混ざっていいですか?」


 三人は少し驚いた顔をしたが、アランはすぐに嬉しそうな顔をした。


「もちろんだよ! 一緒に話そう、シャルル」


 シャルルは自分のベッドに座り、三人と向かい合った。


「アランさんは、どうして勇者になったんですか?」


 アランは自分を指差した。


「俺? 家族と旅行で勇者の剣がある村に行ったんだ。そこで、その剣を抜けるかチャレンジできるイベントをやっていて、挑戦したら抜けちゃった。本当は俺の親父が勇者になりたかったんだよ」


 それを聞いたニコルが笑い転げた。


「なにそのアランらしい勇者誕生秘話! それでやる気のない勇者が誕生するって、女神様はサイコロでも振ってアランを勇者にしたんじゃないでしょうね」


 アランは小さなため息をついて言った。


「そんな選ばれ方は嫌だな。でも、女神様に会った時に、いずれ魔王城に辿り着いた時に俺が勇者になった理由を知るって言っていた。俺の目で世界を見て、感じて、正しいと思う道を選べって」


 それを聞いたリリトヴェールとシャルルは前のめりになった。リリトヴェールはアランに詰め寄った。


「女神に会っただって? どこで? 聞いてないよ!」


 アランはリリトヴェールの勢いに少したじたじになった。


「ええ……? 言わなかったっけ? 火のオーブと水のオーブを手に入れた時だよ」


 リリトヴェールはそれを聞いて納得した。


 ――ちょうど私と離れていたときか。女神は『魔王を倒せ』ではなく、アランが正しいと思う道を選べと言っていた……。どういう意味だろう。


 打って変わってシャルルは涙を流している。


「女神様は実在されたんですね。二度もお会いできたなんて、アランさんが羨ましい……。――それで、ニコルさんは、どうして仲間に加わったんですか?」

「今度はあたいのこと? あたいは、ルグラン王国の闘技場で二人に出会って、リリーにスカウトされたんだ。最初は断ったんだけど、この二人、ドワーフの里までついて来てさ」


 ニコルがリリトヴェールを指差し、笑いながらそう言うと、リリトヴェールはニコルの言葉に反論した。


「なんかストーカーみたいな言い方だけど、強い戦士を紹介してくれるって言うから、ついて行ったんだからね!」


 ニコルはケラケラと笑った。


「それで、病気だった母さんをリリーが治してくれて、恩返しに同行することになったってわけ」


 シャルルは何度か頷いた。


「リリーさんは? どうしてアランさんと旅に出ることにしたんですか?」


 リリトヴェールは答えに詰まった。


 ――魔王である私を倒してもらうため……とは言えない。どう答えようか……。


「えーっとね、アランの村の近くの森に森の魔女としてきたのがきっかけかな。アランと話すようになったら、うちに転がり込んできちゃって。勇者として魔王討伐に行けといったら、私が一緒ならいいよって言うから……」


 シャルルは三人の顔をまじまじと見た。


「誰一人として、魔王討伐がしたいからという理由の人はいないんですね」


 三人はお互いの顔を見合わせた。


「「「確かに……」」」


 アランはシャルルに尋ねた。


「シャルルは魔王討伐のために加わってくれたんだよね。どうして魔王を倒したいの?」


 シャルルは至極同然と言った様子で答えた。


「魔王は危険分子だからですよ。文献によるとこの二百年は人類と魔族の戦いは起きていませんが、先代の魔王の時代は戦乱の世だったと記録に残っています。いつまたそうなってもおかしくない。そうなる前に倒すべきです」

「でも、また新しい魔王が誕生するんでしょう? 次の魔王が戦争大好きだったらどうするの? だったら、今の大人しい魔王のままがよくない?」


 シャルルはアランの言葉を聞いて、はっとしたような顔をした。それから顎に手をやり、考えるようにしながら答えた。


「確かにアランさんの言葉にも一理ありますね。考えたことはなかったです」

「前に魔王に会ったけど……」


 シャルルとニコルが今度は前のめりになった。ニコルが目を丸くして尋ねた。


「魔王に会ったの? よく生きていたね……」

「うん。土のオーブを手に入れる時に、オークに襲われた村で、魔王に会ったんだ。けど、魔王はオークを撤退させて、村を救ってくれた。そんなに悪そうな人には見えなかったよ。だから、俺はもう一度魔王に会って、ちゃんと魔王を知りたいんだ」


 リリトヴェールはアランを見つめた。


 ――今少しだけ女神が言っていたことが分かった気がする。アランは偏見を持たないんだ。自分で見たものを自分なりに解釈していく……。その力がアランにはある。


 ニコルは天井を仰ぎ見た。


「魔王を倒す意味ね……。でも、そうしたら今の時代に勇者が誕生した意味も謎じゃない? もしかしたら、これから魔王が人類に対して想像を絶するようなことをしでかすのかも。女神様はそれを止めてほしいとか?」


 アランは体をびくりと震わせた。


「なにそれ、怖い!」


 ニコルはビビるアランを見て笑った。


「まぁ、女神様が言うには魔王城に行けば、アランが勇者になった理由も分かるらしいから、目的地は変わらないよね」


 アランは頷いた。



 それからというもの、シャルルは積極的に話しかけてくるようになり、ぎすぎすとした雰囲気はなくなった。

 アランとニコルとシャルルが話しながら歩いているのをリリトヴェールは後ろから眺めていた。

 

 ――シャルルも無事に馴染めたようでよかった。


 ほっと胸を撫でおろしていたリリトヴェールをアランが振り返った。


「リリー、どうしたの?」

「いや、何でもないよ」


 リリトヴェールは少し足を速めて三人に合流した。

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