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最強魔王、引退したい。でも勇者がだめすぎるので、育成はじめました。  作者: 冬木ゆあ


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第31話 魔王、呪いを解きたい

「わぁ! お祭りやっているよ」


 アランが村を指差して言った。

 通り過ぎる予定だった村では祭りの最中のようで、屋台や音楽に合わせて踊っている人もいる。

 楽しそうな雰囲気にアランとニコルはそわそわとしていた。それを見て、リリトヴェールは言った。


「せっかくだし、少し寄って行こうか」


 アランとニコルはそれを聞いて、村に駆けて行った。アランがリリトヴェールを振り返り、手招きした。


「リリーも早く!」

「はい、はい」


 リリトヴェールは苦笑気味に二人の後を追った。

 村に入り、アランがひとりの女性に声をかけた。


「何のお祭り?」

「雪まつりだよ。奥の広場に行ってごらん。雪像があるよ」


 三人は屋台を見て回りながら進んで行く。

 気がつけばニコルは片手に焼き鳥、もう片手にりんご飴を持ち、リリトヴェールとアランは焼きそばとお好み焼きを分け合って食べている。

 広場には囲うように雪像が並んでいて、アランはおじさんの顔が刻まれた像を見上げていた。


「誰だろう……?」


 すると、近くにいた村人が教えてくれた。


「この村の村長だよ。毎年造らないと怒られるんだ」

「へぇ。雪で作っているんでしょう? すごいね」

「そうだろう。ゆっくりしていってくれよな」


 村人はそう言って去って行こうとした時だった。

 村の入り口の方から人の叫び声が聞こえ、人々がこちらに向かって走ってきた。


「魔王軍が攻めてきたぞ!」

「逃げろ!」


 その声を聞いた人たちも慌てて逃げ出し、辺りは一気に騒然とした。

 リリトヴェールはそんな中でも冷静に気配を探る。


 ――この気配、嫉妬のエレリーシャか。まずいな。あいつは呪いを使う。


「アラン、ニコル、村の入り口に向かうよ!」


 アランとニコルは頷き、三人は人の波に逆らい、駆け出した。しかし、アランは人にぶつかり思うように進めず、困惑したように言った。


「リリー、これじゃ、戦えないよ」


 リリトヴェールはアランを振り返った。


「避難が終わるまでの辛抱だ。入口の方まで行けば人も少なくなる」


 ――それまでエレリーシャが呪いを発動しなきゃいいけど……。この大人数が呪いにかかったら大変なことになる。


 三人が村の入り口に着くと、少女が一人立っていた。緑の髪で、背丈はニコルと同じくらいだろうか。黒いワンピース姿で、顔は黒いベールに覆われており、クマのぬいぐるみを抱いていた。


「ずるい。楽しそうでずるい」


 そう呟いていた。

 エレリーシャとリリトヴェールたちのちょうど間に小さな女の子が一人倒れて泣いていた。アランが放っておけずにその子に駆け寄った。


「大丈夫?」


 そう声をかけて起こしてあげた時だった。リリトヴェールが叫んだ。


「アラン、危ない!」


 アランがはっとエレリーシャに視線を向けると、アランに手を向けていた。


「ランダムスペル」


 その呪文と共に黒い霧がアランを包んだ。

 エレリーシャはぽつりと言った。


「お前、勇者だろう。勇者は嫌いだ」


 リリトヴェールはアランに駆け寄り、横に膝をついて様子を伺う。


「アラン、大丈夫か?」

「この子を……」


 リリトヴェールはアランから女の子を預けられ、女の子の無事を確認する。転んだのか、足に怪我をしていたが、エレリーシャの呪いがかかった様子はなく、リリトヴェールはほっと息をついた。

 エレリーシャは突然興奮したように捲し立てはじめた。


「リリトヴェール様のお手を煩わせずとも、ぼくが倒したいのに! でも、リリトヴェール様は勇者を殺すなと言っている。リリトヴェール様のお言葉は絶対だ。だから、その代わりに、お前に呪いをかけてやったよ! せいぜい苦しむといいよ!」


 そう言い残し、高笑いしながら黒い靄の中に消えて行った。

 エレリーシャがいなくなったことにリリトヴェールが安堵していると、背後から女性の声がした。


「マーガレット!」


 女性がこちらに駆け寄ってきて、リリトヴェールの腕の中にいた女の子もその女性に駆け寄った。


「お母さん!」


 女の子は母親の胸に飛び込み、泣き出した。

 女性は女の子を抱え上げ、リリトヴェールたちに頭を下げた。


「娘を助けていただき、ありがとうございました」


 そう言って、マーガレットと共に去って行った。

 気がつけばアランの周りを覆っていた黒い霧は消えていて、アランはぱちくりとしながら手を見つめていた。リリトヴェールは心配そうに声をかける。


「どこかおかしいところはない?」

「大丈夫だよ、あはは」


 アランは首を傾げ、リリトヴェールとニコルは顔を見合わせた。

 ニコルがアランに尋ねた。


「今の笑うところ?」

「おかしいな。笑うつもりはなかったんだけど。あはは」


 察したリリトヴェールが額に手を当てた。


「地味につらい呪いをかけられたね、アラン。喋ると笑っちゃう呪いだよ、それ」

「何それ、怖い! あはは」


 ニコルもつられて笑った。


「あはは。変なのかけられたね、アラン」


 笑っている二人にリリトヴェールは溜息を吐いた。


「笑っていられるのも今の内だよ。教会に行って解呪してもらおう」


 リリトヴェールとアランは立ち上がり、三人は村にある教会に入った。

 そこにはエレリーシャから逃げてきた人たちも多く避難していて、その合間を縫って司祭がリリトヴェールたちに近寄ってきた。


「外の様子はどうですか?」


 それにリリトヴェールが答える。


「村に攻めてきた奴はもういないから大丈夫だよ。だけど、アランが呪いを受けたんだ。治せる?」


 司祭はアランの額に手を置いた。


「……これは、わたしの手には負えません。呪いが強すぎる」


 アランは困ったように眉間に皺を寄せた。


「え~! 治らないの? あはは」

「アニェス聖国の大聖堂にお行きなさい。そこには、わたしよりも高位の司祭がいます。彼らならもしくは……」


 リリトヴェールは司祭に尋ねた。


「アニェス聖国の大聖堂ってここからどのくらいかかる?」

「五日くらいでしょうか」


 それを聞いたリリトヴェールは僅かに天を仰ぎ見た。


「アランの精神が持つかどうか、ギリギリかな……」

「俺は話すと笑っちゃうくらいで問題ないよ。あはは」


 楽観的なアランにリリトヴェールは呆れた顔をした。


「あのね、笑いたくもないのに笑っちゃうっていうのは心に反することだから、その内辛くなってくるよ。それに、私やニコルも精神的に参ってくるんだよ」


 ニコルが少し考えてから頷いた。


「たしかに。常に笑われるのは嫌かも。アラン、喋らなきゃ笑わないんでしょ? 黙ってなよ」

「酷いよ、ニコル。あはは」


 リリトヴェールとニコルは顔を見合わせて、溜息を吐いた。

 一行はすぐに村を出て、アニェス聖国の大聖堂へと向かった。

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