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最強魔王、引退したい。でも勇者がだめすぎるので、育成はじめました。  作者: 冬木ゆあ


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第16話 魔王、誘拐事件に挑む②

 明るい光が止んで、リリトヴェールの視野が戻った。

 そこは広間のようで、目の前には紳士然とした顔の片方を仮面で隠した男性が立っていた。

 男性は恭しくリリトヴェールにお辞儀をする。


「ようこそ、我が屋敷へ。お嬢さん。我は、強欲のオリロ=ロリオと申します」


 ――やっぱり屋敷の前で感じた気配は、魔王軍幹部のひとりオリロ=ロリオだったか。


 床に座った状態だったリリトヴェールは立ち上がった。


「お前が子供たちをさらった犯人だな」


 仮面の男は口角を上げた。


「いかにも」


 リリトヴェールは杖をオリロ=ロリオに向けた。


「なぜ子供をさらう? 何が目的だ」


 オリロ=ロリオは大げさに両手を広げ言った。


「なぜ? それは、我が可愛いものが大好きだからだ! だから、君がこの森に入ったことを知り、この屋敷まで案内したのだ。特に君は素晴らしい! 我のコレクションに相応しい!」


 リリトヴェールの背中にぞっとしたものが走った。


「お前、変態だったのか! 見損なったぞ!」


 オリロ=ロリオは首を傾げた。


「まるで知り合いのような言い草だな。我に君のような可愛らしい知人はいたかな?」

「お前、私の気配で分からないのか……?」


 リリーの姿がゆらりと揺れると、そこには魔王の姿をしたリリトヴェールが立っていた。

 それを見たオリロ=ロリオはぎょっとした顔をした。


「リリトヴェール様……!」


 リリトヴェールはすっと手を上げた。


「お前は今日でクビだ。――ダークネスライトニング」


 黒い稲妻が直撃し、オリロ=ロリオはその場に突っ伏した。

 衝撃波でリリトヴェールの黒い髪とドレスが靡いた。


「一撃じゃ死なぬか……」


 オリロ=ロリオの体から白い煙が出ていて、顔だけ上げた。仮面にひびが入っている。


「なぜリリトヴェール様がこんなところに?」


 リリトヴェールは踵を返すとリリーの姿に戻った。


「もはや魔王軍幹部でもないお前が知る理由などない。さっさと去れ。そして、二度と私の前にその面を見せるな。お前は追放だ」


 しかし、オリロ=ロリオはその場に座り直し、リリトヴェールの背中をじっと見つめている。

 リリトヴェールは機嫌が悪そうに振り返った。


「何をしている。聞こえなかったのか?」

「そのお姿を目に焼き付けてからでもよろしいですか?」

「……消し炭にされたいのか、この変態」



 一方アランはと言うと、情けない声を上げながら地下の真っ暗な通路をひとり歩いていた。


「暗いよう。怖いよう。リリー……」


 しばらく歩いていると、扉から光が漏れている部屋を見つけた。

 アランは両開きの扉を開けようとしたが、開かなかった。鍵がかかっているようだ。

 扉の隙間に勇者の剣を差し入れ、少し力を籠めると鍵は簡単に壊れた。

 扉を開けると、女の子の声が聞こえた。


「どなたですか?」


 アランは声がした方を向くと、水色の髪でドレスを着た女の子が、うしろに数人の子供を庇うようにして両手を広げていた。その瞳も水色で怯えの色を含んでいたが、アランをしっかりと見据えていた。

 さらわれた子供たちは全員で八人のようだ。


「さらわれた子供たちだね! 俺は味方だよ。君たちを助けに来たんだ」


 アランの言葉を聞いて、少女はほっとしたように両手を下ろした。

 アランは少女たちに駆け寄り、膝をついた。


「大丈夫? 怪我とかしてない?」


 水色の髪の少女は長時間の監禁から解放され、どっと疲れが出たのか、先ほどの毅然な態度から打って変わって弱々しく頷いた。

 子供たちを連れて部屋を出たアランは、リリトヴェールが心配でしょうがなかった。


 ――どうしよう。とりあえず屋敷の外まで連れて行って、リリーを助けに戻る? でも、その間、この子たちだけにできないし……。


 そんなことをアランが考えながら暗い通路を歩いていると、正面から足音が聞こえてきた。

 アランは警戒し、勇者の剣を抜いて構えた。


「アラン!」


 暗闇から現れたのはリリトヴェールだった。

 アランは勇者の剣を鞘に戻し、リリトヴェールに抱きついた。


「よかった! リリー、無事だったんだね!」


 リリトヴェールはアランの背中を優しく撫でる。


「アランも。子供たちをちゃんと助け出したんだね。えらいよ」


 それから、アランの後ろにいる子供たちにも声をかける。


「誘拐犯のオリロ=ロリオは退治した。もう安心だよ。さぁ、家に帰ろう」


 すると、水色の髪の少女が瞳を輝かせ、両手を前で組んで言った。


「まぁ! あなたがあの変態を倒してくださったんですね! お名前をお伺いしても?」


 リリトヴェールはにっこりと笑って答えた。


「リリーだよ。君は?」


 水色の髪の少女は丁寧なお辞儀をして見せた。


「わたくしはデランジェール王国第一王女、フローラと申します。リリー様、助けていただき、感謝いたします」


 アランは少し面白くなさそうな顔で呟いた。


「助けたのは俺なのに、いいところをリリーに持って行かれた……」


 リリトヴェールは膨れているアランの肩をぽんぽんと叩いた。


「アランはひとりでよくやったよ」


 アランはリリトヴェールに褒められて少し機嫌が直ったようで、笑みを浮かべて頷いた。


 誘拐された子供たちを連れて、リリトヴェールとアランはデランジェール王国王都に帰還した。

 王都の住人たちはそれを歓声で迎えた。

 王城の門兵がリリトヴェールたちを出迎え、謁見の間へと誘導する。

 謁見の間が開くと、そこにはデランジェ―ル王と王妃がすでに待ち構えていた。


「フローラ、無事だったか!」


 フローラはデランジェ―ル王に駆け寄り、抱き着いた。


「お父様! あのお二人が私と子供たちを助けてくださいました。リリー様と、勇者アラン様です」


 フローラは扉の前に立っているリリトヴェールとアランを振り返った。

 デランジェ―ル王はフローラの肩を抱き、二人に視線を向けた。


「ありがとう。他の子供たちもわしが責任を持って親元へ帰そう。フローラの無事を祝って明日はパーティを開こうと思う。勇者アラン殿、リリー嬢、ぜひお二人にも参加していただきたい。皆に英雄を紹介させて欲しい」


 そうして、リリトヴェールとアランは明日のパーティに参加するため、今晩は王城に泊めてもらうことになった。

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