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最終日 招魂
その白い鳥の骸を覆う黒く蠢くさざめき…腐肉を漁る虫達の行列は惜しみなく奪う…羽根を、目玉を、肉を、血を、臓物を、全てを………………貪り喰らう細やかな足音の群れが去った後、遺されるのは剥ぎ取られた時間に拠って刻み込まれる化石…枯草に包まれた白骨の標本…その骨の下に隠れている小さく、か弱い、鮮やかな緑…枯草色の中に混じり、今にも芽吹こうとする若草色…一つだけだった蕾が彼方此方から顔をだし、天を目指して真っ直ぐに伸びてゆく…眼窩から…嘴から…肋から…飛び出してゆく蔓たち…溢れ出る蔓のなかの一つ…太太しい1本が逞しさを増してゆき化石を背負ったまま空へと伸びてゆく…それは幹であり若木…1羽の海猫が大地へと還った場所に生まれる新たな生命の樹…そこへ一陣の風が吹く…葉に、枝に、幹に、下草に当たって砕けて細かい風の残骸となり、その残骸がひとひらの光の欠片を空へと吹き上げる…鳥が残した、たった一枚の羽根を、大空へ還す為に…




