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最終日 宿から

早朝の冷気に包まれた、三階建ての簡素な、四角い煉瓦造りの宿。屋根瓦の薄い青色と、煉瓦の赤土色以外に目立つ所は無い。入り口の上に掛けられた木彫りの看板には、大地の鈴亭、と書かれている。石畳で舗装された広い通りに面しているが、この時間に行き交う人は少ない。朝靄で烟る通りの角を曲がって、馬車がやって来る。舟を漕ぎながら手綱握る馭者を乗せ、宿の前を通り過ぎるその時、宿の扉が開き、金髪翠眼で、ワイシャツに黒いベストとスラックスの、白肌の若い男と、先程の女が一緒に出て来た。                 「チェックアウト、OK。ワスレモノ、ナイデスカ」

「はい、大丈夫です」   

男は笑みを浮かべ、女は遠くを見ている。            

「マツリ、オワリデスネ。キョウ、イキマスカ?」

「ええ、もちろん」

「エンジョイユアトリップ、グッドラック!」

「どうもありがとう」   

笑顔で手を振る男に背を向けて、歩き出す女。男が宿へ戻り、扉がゆっくり閉じられた……その瞬間、女の姿が掻き消えた。狐模様の円盤が石畳の上に落ち、乾いた音が響いた。






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