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最終日 準備完了

「おはよう……もう遅いんだけどね」          女は、ベッド脇に置かれた椅子に視線を落とし、丸鏡を耳に当て通話している。椅子は狐が横たわる形をした一人掛けの物で、柔らかな稲穂色で塗られている。         「もちろん、行きます。規定は超えている筈だけど、何か見落としが有ったら帰れなくなるかも知れないし。最後の最後に遅刻なんて馬鹿みたいだけど、仕方ないしね」                    ため息ひとつ、通話を切り、支度が始まる。窓際の化粧台の鏡が開かれる。黒目黒髪、特に際立ったところの無い顔立ちの、疲れは見えるが、若さが何とか残っている年頃の、中肉中背の女性が映し出される。肩までの髪を、黄色い紐で括り付け、まとまったのを確認すると直ぐに鏡が閉じられる。色褪せた赤い服と青いズボンを着替える事も無く、狐椅子の上に置かれていた黒いリュックサックを背負う。           「さてと、これで」 右膝が引き上げられ、そのままの勢いで白い靴が狐椅子の頭を踏みつけ、潰れるように折り畳まれた、平たい狐が出来上がる。                 「良し、と」



  

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