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最終日 使徒の役目
列の動きは、極めて緩慢なもので、それは先導役の警備兵が速度を抑えているからだが、興奮まで抑えられるものでは無い。先頭が進む様子は、当然ながら後方から観察されており
「さっさとしろ」「もっと速く」「いつまで待たせるのか」「なんでこんなに遅いの」
と言う苛立ちが膨らんでゆく…相手より一歩でも前へ…それは後方になる程、増幅される。他人が前進する様子を眺める時間が長い程、自分が取り残されている状態を自覚させられる為、一旦、列が崩れ出すと、そこで溜まっていた焦りが溢れ出し、暴走する事になる…或いは、始めから暴走するのが目的の者も…
「やっぱり同じ、か…最後だからって、みんなルールを守って整列!って訳には行かないもんね…はぁ…仕方無いなぁ…」
徐々に速度が上がってゆく先の列を、後方の列の中から眺める女の口元は、憂う様な声色とは裏腹に、弧を描いて吊り上がってゆく…




