18/66
最終日 午前6時36分
改札を抜け、ホームへ駆け寄ると同時に、列車が到着し、それと共に隧道から押し出されて来た腐臭混じりの空気がさらに濃くなる。並んでいる人々は誰も気にする様子は無いが、女だけが手で口を押さえている。
(これが一番不思議…何で気にならないんだろ?異世界人だから?私がおかしいの?あんたらの鼻はどうなってんの?それに、これが〚どうやって〛動いているのか知ってる筈…だったらどうして何も言わないの?)
列に並ぶ人は疎らで、皆、特段の感情が顔に浮かぶ様子は無い。静かに、扉が開くのを待っている。女は首を左右に振り、天井を仰ぐ。
(…止めた!やーめた!最後だからって今まで分からなかった事が急に分かる訳ないし、今日を乗り切って帰る!それだけに集中すべし!)
真っ黒な、材質の分からない、列車の扉が音も無く開く。他の乗客と共に、中へ…列車とホームの間…その隙間に蠢く闇色のなにかは決して見ないようにして。




